第556話 骨折

 この場にいるロドス騎士団は全て肉塊に吸収されてしまっていた。

 触手の動きも止まり肉塊は沈黙している。


「この場を離れよう。」


 肉塊が味方とは思えなかったので、沈黙している今が離れるチャンスだ。

 自ら身体を起こそうとするがパトラの兄からの攻撃が激しかったせいで、思うように動けない。

 誰かに肩を借りようとした瞬間、兜から警告音が鳴り響いた。


 経験上、この手の音は良くない事が起こる前兆だ。


「オフラインモード起動!」


 機会的な声が聞こえてくると、それは起こった。


 いきなり身体が動きだす。

 倒れている状態から無理やり立ち上がる。


ボキッ


 手も使わず、膝も曲げずに立ち上がったせいで足首から骨が折れる音が響く。


 あまりの痛みに悲鳴すらあげられない。


 さらに落ちている女神の剣を拾うと肉塊に歩きだす。


 一歩進むごとに脚には激痛が走る。


 俺が肉塊に近づいたせいで動きを止めていた触手が動きだす。


 四方八方から襲ってくる触手を女神の剣が叩き斬る。


 ロドス騎士団との戦いの時、自分の動きではないと感じる事が何度もあったが、今の動きはそのレベルではない。

 背後からの攻撃も全て迎撃する。

 ただ、普通の動きではないので腕がありえない曲がり方をする。


ボキッ

ボキボキッ


 腕や手首の骨が折れる音が響き渡る。


 その後も骨を折りながら肉塊に近づいて行き、全ての触手を斬り終えたころに肉塊に到着する。


ガシッ

ビシッ


 女神の剣が肉塊を斬っていく。


 肉塊が大きい為、斬っても斬ってもあまり大きさは変わらない。


 50回以上斬りつけると、動きが止まる。


 終わったのか?

 骨が折れ過ぎて身体の感覚がなく、意識が朦朧としていた。


ガチャ


 身体が女神の剣を上段に構える。


 さらに何かの力が女神の剣に集まっていく。


 眩い光が吸収され、女神の剣がキラキラと輝き始めるのであった。

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