第5話 状況確認
おばさんに別れを告げ、緑の線を辿って行くと扉が見えてくる。多分、この先には異世界が待っている。
そう言えば、おばさんが寂しそうな顔をしてたなぁ。名前ぐらい教えてくれれば良かったのに‥。あっ、また逢いましょうって言ってたけど、俺が死んだら天国でってことかな?
女神の想いは斗馬には届いていなかったのである。
斗馬が緊張気味に扉を開き、中に入ると暗闇が続いている。受付の人からは立ち止まらずに光の方へ歩けと言われていたので、光の差す方を目指す。
5分ぐらい歩いただろうか、光の元にたどり着いたので中に入ると、眩しかったので一瞬目を閉じてしまう。
斗馬が目を開らくと、そこには草原が広がっていた。
草原を抜ける風が心地良い。
はい!現実逃避はここまで!
「やべぇ、何もない!」
見える範囲に街はおろか、道も見えない。
戦闘系のスキルないのに、こんな辺鄙なことろに転移させるなんて…。
とにかく生き残る為に、装備を確認しよう。
斗馬は自分の装備を確認する。
革靴、Yシャツ、ジャケット、パンツ、ネクタイ、下着、帽子、ハンカチ、腕時計。
どうしよう、詰んだかも。
きっとモンスターとかいるだろうから、こんな装備で太刀打ちできるわけがない。
「誰か助けて下さい!」
斗馬はダメ元で叫んでみる。
すると突然声が聞こえてくる。
「何かお困りですか?」
突然のことで一瞬固まったが、確かに声は聞こえた。女性の声がしたので期待して辺りを見廻したが誰もいなかった。
「幻聴か?」
「幻聴?失礼な!私はここにいますよ。」
声の主が抗議の声をあげる。
「何処にも見当たりませんが?」
「あっ、大変申し訳ございません。私は斗馬様をサポートする為に腕時計に組み込まれたアドバイザー的な者です。特に名前はございませんが、良ければ斗馬様に考えて頂ければと思います。」
助かったー。異世界でいきなり1人でこんな場所に飛ばされたから、このまま野垂れ死ぬとこだったよ。
とりあえず、この出会いを大切にしたいから良い名前をつけてあげなきゃ。
「シリ」
「却下!」
「どうして?」
「駄目です。カタカナ表記だけど下手したら怒られますよ。」
「AI」
「却下!」
「何故?」
「安直すぎます!あっ、アイもダメですからね。」
名前つけるの意外に面倒だなぁ。そういえば昔みたアメリカのドラマで腕時計と会話してたなぁ…。
「キット」
「却下!!」
「どうして?」
「私、女性ですよ!!」
「えっ?コンピュータとかじゃないんですか?もしかしてオペレーターとかで本当は誰かそこにいらっしゃるとかですか?」
「まぁ、女性型AIと思って頂ければいいかと。」
だったらアイでいいじゃん。
さて本当にどうしようかな。
携帯ゲームからなら、スペ、テイオー、ゴル、ライス、ターボとかは…女性的じゃないよね。
アニメからなら、レイ、アスカ、レム、ラム、ベア子…。
「エキドナはどうかな?」
「強欲?それともギリシア神話の怪物ですか?よく考えて出直して下さい。」
「イロハかコマチはどうかな?」
「水ですか?米ですか?もうちょっと頑張って下さい。」
「じゃー、今いる草原をイメージして爽やかな感じで、葵(あおい)はどうかな?」
「………良いです!葵、気に入りました!私は今から葵です。斗馬様、今後とも宜しくお願いします。」
ふうー、やっと決まった。それにしても名前付けで苦戦するとか今後が先行き不安だなぁ。
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