第4話 後ろの足音
「ハア、ハア、ハア、……」
コツ、コツ、コツ、……
夏美は暗い夜道を後ろを振り返りながら走っている。後ろから誰かの足音がさっきから聞こえてきているが不思議なことに足音の主の姿が見えない。夏美は脇の下に嫌な汗をかいている。
夏美が走っている道は、遊歩道になっている小道で両脇には季節の草花が植えられ、ツツジやアジサイなどの背の低い木も植えられており昼間であれば、道行く人の目を楽しませてくれる。
今は真夜中で、夜道を照らす数少ない街灯の弱々しい光だけが道を照らし、両脇の低木の葉や花も灰色にしか見えない。少し先の街灯の蛍光灯が暗くなってはまたジジジと音を立てて点灯するのを繰り返している。
遊歩道の両側には民家が建っているんだが、これも不思議なことにどこの民家からも明かりは漏れていない。
夏美は何度も振り返って後ろを見るのだが誰もいない。前を向いて進もうとすると後ろから足音が聞こえる。
コツ、コツ、コツ、……
50メートル先には人通りも多い大きな自動車道がある。左の足のサンダルの
「ハア、ハア、ハア、……」
夏美はなんとか遊歩道から街灯が明るく照らす広い道に出られた。後ろを向くとやはり誰もいない。夏美は背筋に嫌な汗をかいている。
「フー」
――怖かったー。何だったの、あの足音。遠回りでもこっちの道を通ればよかった。
その広い道は、街灯も多く夜道でも明るかったのだが、今はなぜか誰も歩いていないし普段は行き交う車も今日は走っていない。なんだか薄気味悪くなった夏美は両足のサンダルを脱いで片手に持ち裸足で走り始めた。
「ハア、ハア、ハア……」
夏美は夢中でその道を走るのだがいくら走っても自宅にたどり着けない。それどころか、またあの足音が聞こえてきた。
コツ、コツ、コツ、……
「ハア、ハア、ハア、……」
夏美は後ろからの足音が聞こえなくなったと思い、下を向いて両手を膝に当てて苦しい息をしばらく整えた。
ようやく息も整い前を向くと夏美の立っているのはしばらく前に走り抜けたはずの遊歩道の上だった。
コツ、コツ、コツ、……
夏美のすぐ後ろからあの足音が聞こえてきた。
「……」
後ろを振り向くとそこに立っていたのは、……
翌朝、手提げ袋を手にした近所の老人が遊歩道を老犬を連れて散歩していると、普段吠えない老犬がやたらと吠える。
老人が老犬の吠える先を見てみると、赤い花の咲いたツツジの木の下に転がった1足の女物のサンダルを見つけた。片方のサンダルには
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