第16話 スマホ
「どんなスマホにするか決めてるのか?」
「どんなスマホ?」
「スマホにもたくさん種類があるじゃん」
スマホショップに向かう最中にそう聞いてみた。スマホにも扱う人によって様々な仕様がある。琴葉みたいに写真を手軽に撮ろうとする人は、カメラの性能が良いスマホを選んだり、スマホでゲームを楽しみたいという人は処理能力のスペックが高いスマホなど、使用する人に合った能力を持ったスマホ達がたくさんいる。
その中で何にするかというのは大切になってくる。特にスマホを使用する事の少ない俺は、何かに偏ったりしていない全体的に平均の、十分に事足りるスペックのスマホを使用している。
「私はjineとか電話が出来れば何でもいいです」
「だいたい俺と同じ考えか」
「ある程度カメラの画質が良ければ、とは思いますね」
最近の機種はそれなりに
「奏太くんと同じやつにしましょうかね」
「俺と?」
「私、機械には
「……分かる範囲なら教えられる」
スマホの知識自体よく知らないし、機械にも大して強い訳ではないが、自分の使っているスマホなら一通りは教えることは出来る。
「それにします」
「これ結構高いぞ」
「なんか人気らしいですよね」
一応調べてはいるみたいで、俺の使っているスマホの事も知っていた。奏太の使っているスマホはスペックに対してそれなりに値段がする。
海外に本社があるブランドで、中高生や若者に人気がある。デザインが良く、何をするにも十分に足りる性能から日本でも使用率は高く、スマホカバーなんかの種類も豊富だ。
その反面に価格が少し高いというのがデメリットでもある。
「……お金だけには困った事ないので」
「それはそうかもしれないが……」
両親どちらも社長並みの権力を持つからお金に困った事がないという。
「……すみません。そういう事を言いたいわけではなくてですね」
「要はお金は心配しなくても良いって事だろ?」
「……そうです」
言葉足らずというべきか、琴葉は何を話すにも一言足りないので、触れていい領域なのか分からない話をしてくる。
それをやめろと言う事は出来ないが、いつかは明るい言葉だけを発せれるようになって欲しい。
「同じスマホという事は………」
「何か考え事か?」
「考え事というか、なんというか……」
同じスマホという事に何か思う事があるらしく、一人でぶつぶつ言いながら考え事をしていた。
「解決しなかったら俺に聞いてもいいんだからな」
「これに関しては自分で解決しないといけないので!」
「お、おう………そうか」
強い意思を持っているので、俺が手伝う事はなさそうだった。
「そろそろ着くから、考え事も済ましておけよ」
「分かりました」
そこからしばらく歩いたところで、ようやく店に到着した。街の中にある人通りの多い場所。店の自動ドアの周辺は一面ガラス張りになっていて、外から様子が覗けた。
客は2、3名いるものの、土曜日とは思えない客数だった。店員も空いている人が数人いた。
「ここですか、」
「何だ?ここも初めてか?」
「そうですね。機種を変えるのは初めてですし、このスマホも両親が買ってきたので、私は店に行ってないですからね」
本当に初めての事が多いなと感じさせられる。そうは言ってもスマホショップなんて俺も数回しか行った事がないので、初めてとなんら変わりはない。
琴葉が一人で機種を変えに行くのに緊張していたのも理解できた。
「すぐに終わらせよう」
「そうですね」
そう二人で話しながら、店内へと入って行った。
「こうしてみるとたくさん種類ありますね」
「見てると、決めていたとしても迷うよな」
「これなんて見てくださいよ。カメラの数と大きさ凄いですよ」
目をキラキラさせながら、そのスマホを指さす。いつもよりも無邪気さがあり、幼稚園生のようにウキウキしていた。
「やっぱりこっちも良さそうですね……」
「何を考えてるかは分からんが、別に俺と一緒じゃなくてもいいんだぞ?」
「んー………」
それでも何か迷っていたが、結局俺と同じスマホにしていた。何故か俺を見上げて、心配そうな表情を浮かべていた。
「すみません。機種変をお願いしたいんですけど」
「お客様お二人ともの機種変でしょうか?」
「私だけです」
「かしこまりました。席まで案内します」
店員の後についていき、席に座った。そこから長々とした話が始まった。
「買えました」
店員の話が終わり、その他必要な手続き等を済ませた後、ようやく店から解放された。琴葉が買ったスマホの色はピンクと女子ならではの色を選択していた。データの引き継ぎも無事に出来ていたようだ。
「ブッブー」
ポケットに入れていたスマホがバイブ音が鳴る。
「写真ありがとうございます」
一通のjineが来ていた。送り主は琴葉で、奏太のスマホから自分で送った写真に返信してきていた。
「よろしくお願いします」
「よろしく」
「こうやって、思い出の写真を共有するお友達は、奏太くんが一人目ですね」
軽い挨拶をした後、そう送られてくる。今目の前にいるので口を開いて言えば良いのだが、画面上だからこその意味があるのかもしれない。
友達一人目……それは表面だけでなく、本当の意味での友達が一人目という意味だろう。
「琴葉が前言ってた返信って、今のを言いたかったのか?」
「男の人は自分が一番目と聞くと喜ぶと聞いた事があったので………」
「俺は結構、琴葉の一番目を貰ってるぞ」
送信を押したときに自分の送った内容のヤバさに気づいたが、既読はついていたのですでに手遅れだった。
「奏太くん、セクハラですよ?」
それだけを口に出して言われると、ダメージがずっと大きくなる。
「………ごめん」
「そういう意味じゃなくての、一番目ですよね?」
「……勿論そうだ」
口をニッコリとさせながら俺の方を向いていた。昨日俺が楽しんだ分、今は琴葉が楽しそうにしていた。
「あの、今から行きたい場所があります」
「まだ時間はあるから、行けると思うぞ」
スマホを眺めて何かを見ていた琴葉が、急にそう切り出してきた。時刻は2時過ぎだし明日は日曜日なので、県越えは無理だが、割とどこへでも行ける。
「どこに行きたいんだ?」
「スマホカバーとかフィルムとかを買いに行きたいです」
「買ったばかりだし必要だよな」
買ったばかりのスマホはピカピカで汚したくないし、またスマホを壊さないためにもカバー等は必要だ。
俺のスマホカバーは透明の100均に売ってそうなカバーなので、この機会に新しいカバーに変えるのも良いのかもしれない。
「この近くにスマホカバー売ってる店なんてどこにあるんだ?」
「ついてきてください」
流石は女子高生、その手の店には詳しかった。
「琴葉もそういうのには詳しいんだな」
「へっ?え、あぁそうですよ!」
「…………」
ジッと見つめる。美少女と何秒間も目を合わせるのは心臓にきつかったが、数秒後には琴葉が話し始めた。
「………ちょっと調べる機会があったんです」
「買った時のために事前に調べる的な?」
「そんな感じですね」
下を向きながらそう言うので表情が分からなかったが、道を知らない俺は大人しくついて行くしかなかった。
*昨日は恋愛ランキングの日間1位ありがとうございました!
ちなみに次回の鍵となってくるのはスマホカバーです。どのような展開になるかをご想像しながら次話をお待ちください。
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