第7話 スーパー
「どれだけ頭を整理しても分からないな」
結論としては、琴葉の悩みや考えは何一つ分からなかった。
「愛………か」
彼女が一人そう呟いていたのを思い出す。唯一鍵となってくるのはこの言葉なのだが、ここから先に進めない。
「愛を欲している、とか?」
もしそうだとしたら、クラスの男子との関わりを持たない理由が分からない。愛をもらうのに一番手っ取り早いのは、クラスの男子との恋愛のはずだ。なのにそれをせず、出会ったばかりの人には許可を出している。
「誘いに弱い……のか?」
自分は誘われた側なので、この考えはないだろうと却下する。結局何一つ、まとまらないまま家に帰り着く。
(俺は何でここまで彼女の事を気にかけているんだろうな)
彼女の事を考えていると、自分の行動の意味さえ分からなくなってくる。親切心、拓哉と話している時に口から出てきた言葉だが、俺が彼女に寄せている感情はそれだけじゃないような気がする。
「別にあんたの事なんて……」
突然、過去のトラウマがフラッシュバックする。
(あぁ、なるほどな)
俺が琴葉に抱いているもう一つの感情が分かった。それは同情だった。似ているのだ、過去のトラウマに悩まされていた自分に………。
(親切心と同情……。どちらも俺の自己満だな)
この二つは似ているようで違う。もう一度言うが、彼女に恋をしているとか、またヤリたいとかそういう感情ではない。ただ単に、過去の自分を今の琴葉に重ねているだけだ。
「どれだけ考えても今分かるのはこれくらいだし、夕ご飯の買い出しに行くか」
今の時刻は6時なので、気分転換がてら夕ご飯の買い出しに行くにはちょうど良かった。
一人暮らしを始めて一ヶ月以上が経った今では、見た目に拘らなければ、それなりに料理も出来るようになっていた。いつも使っているエコバックを手に持ち、財布とスマホをポケットに入れて、再度家から出た。
今日は料理をするのが面倒くさいので、適当に弁当を買うつもりだ。スーパーに着いたら、真っ先に弁当コーナーに向かった。今の時間はタイムセールとかで弁当が安くなったりしているので、料理をする手間がかからないし、楽で良い。
適当な弁当を取る。嫌いな食べ物もほとんどないので、どれを取っても食べられる。その他にお菓子やジュースを買う。春休みの自堕落な生活が未だに抜けていなかった。
「あっ、」
「あ」
そこで出会ったのは、今俺を悩ませている少女だった。家の近さ的にも、ここのスーパーで遭遇する可能性は非常に高いという事を感じさせられた。
「や、やっほー!」
「え?どうかされました?」
拓哉の言う通り、俺に明るいキャラは無理だった。俺なりの全力を出したのだが、逆に心配された。
「………どうもしてない。じゃあ、俺もう行くから」
「はい、さようなら」
出会って数秒で別れる。そんな彼女の買い物カゴには、野菜ジュースやゼリー飲料、その他も補助食品ばかりが入っていた。
まだどう接するべきか分からないので、すぐにその場から立ち去った。
レジに行き会計を済ませた後、さっさと店内から出る。雲行きが怪しかったので、駆け足で家まで帰った。
家の中に入った後、手を洗い、お腹が空いたので弁当を電子レンジの中に入れて、温めを開始した。その他に買ったものを整理していたら、チンッと温め終わった音がするので、電子レンジの中から弁当を取り出す。
その時に気がついたが、俺が買ったのはハンバーグ弁当だった。
「いただきます」
手作りなのか詰め合わせなのかよく分からない弁当に、感謝をしてから味わっていただく。
「普通にうまいし、コスパ最強だな」
毎日弁当というのも考えるくらいに楽だし美味しいが、弁当のゴミは後処理が面倒くさい。そんな事を言っていたら生きていけないので、一応ちゃんと自炊もする。
そのくらいはしないと、両親の金で一人暮らしを満喫するダメ人間になってしまう。
「ごちそうさま、うまかった」
一人でも最後まで食材に対しての感謝を忘れない。ご飯を食べ終わったら、テレビをつけてお菓子を食べる。
「新発売!チョコとイチゴが混ざったモンブラン!全国のコンビニで発売中!」
そんなCMが流れてくる。モンブラン好きの奏太にはたまらない商品だ。今お菓子を食べている最中だが、急いでコンビニへと向かった。
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