第5話 一ヶ月後
*4話の最後、変更しました。
入学式があってから、一ヶ月が経った。一ヶ月も経てばクラス内での立ち位置やグループなどは決まるもので、俺は二、三人の友人と過ごしていた。
間宮翔は、一ヶ月経った今でも、相変わらず中学生のような絡みをしてくる。そんな彼だが、クラス内ではいわゆる陽キャと呼ばれる存在で、いつも中心に立っていた。
「本当、あいつらもよくやるよな」
俺にそう話しかけてきたのは、
「俺にはあんなの一生出来ないわ」
「奏太は
「枯れてはない」
そう言い、チラッと琴葉の方を向く。初日こそクラス中の人を集めていた彼女だが、今では俺と同じくらいの数人と話していた。
その全ては女子で、男子とは一切話していない。あの日、彼女から誘ってきたのが嘘と思うくらいに、男子との関わりを持っていなかった。
「奏太、南沢さんの事が気にでもなってるの?」
「どうした急に」
「いや、ずっと見てるから」
拓哉にそう言われたので、視線を
「奏太にもそういう気持ちが残ってたんだな」
「ちげーよ。可愛いとは思うが、それだけだ」
「ま、分かる。なんか壁を作ってる感じするよな」
客観的にしか見ていない拓哉でもそう思うらしい。
「表面上では笑っていても、心は笑ってない気がする」
「その発言、ハズれてたら失礼すぎるからな」
「確かに」
笑いながら二人で話したが、彼女が壁を作ってるいるのはあながち間違いではない。彼女と
「これも憶測なんだけど、奏太と南沢さんって何か似てる所あると思うんだよね」
「俺が壁を作ってるとでも言いたいのか?」
さっきの流れから行くと、こう捉えてしまう。
「性格は似てないけど、性質は似てるっていうか、同じ価値観持ってそう」
「ないだろ…」
俺の頭には、大人になりたいから、セックスをするという思考回路は残念ながら生まれてこない。
「似てると思うけどな」
「似てないから、」
俺と彼女ではどこも似ている所がない。
「お前話した事ないだろ」
「そういえばそうだった」
その言葉で、彼は自分の推測を諦めてくれた。
(こいつは鋭いようで、鋭くないな)
そう思いながらも、雑談を続けた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その日の授業が全て終わり、放課後になった。今日は拓哉とゲーセンに行く事になっている。
「俺、取りたいフィギュアあんだよね」
「興味はないけど、取れればいいな」
「あはは、相変わらずの返答だな」
実の所、この拓哉も陽キャと呼ばれるに相応しい程に、明るい性格をしていた。けれど、俺の素っ気なさや雰囲気を気に入ったらしく、いつも話しかけてくれる。
学校から街へはすぐに着くので、歩いてゲーセンまで向かった。
「はいろーぜー」
俺が一度も来た事のない店舗に着いた。
「おい拓哉、あれって……」
見慣れない髪色の女子高生が暗い路地に男の人と入っていくのが見えた。
「先に入っとくぞ」
「待てって」
拓哉は、俺の呼びかけを無視して中に入って行った。俺も後について行こうとしたが、彼女の事が気になったので、路地の方へと走った。
「なぁ姉ちゃん、本当にいいんだな?」
「はい、かまいませんよ」
突き当たりの路地を覗くと、そんな声が聞こえてくる。見てみれば、男が彼女のスカートの中に手を入れていた。彼女は少しだけ震えていた。
(もうしないんじゃなかったのか?)
俺に、もうしないと言った彼女は、どこの誰だか知らない男の人と始めていた。
やっぱりヤリマンなのかと疑うが、だったらクラスの男を狙わない理由が分からない。単にバレたくないのか?色々考えるが、ピンとする考えは出てこない。
彼女が抵抗していれば俺も助けるようと思うのだが…………。
「おいお前、彼女から離れろ」
相手にナメられない為にも敬語は使わない。彼女に聞きたい事があったので、そう割り込んだ。
この二人がヤり終えるまで待っても良かったのだが、あまり時間をかけすぎると、拓哉が心配してここまで来るかもしれないので、それを避けるためにもなるべく早く聞いておきたかった。
「月城さん……?」
「あんた、この女の彼女が何かなの?」
「違うけど」
「じゃあ何、好きなの?ごめんね、君の好きな子を先に頂いちゃって」
「好きでもない」
その男性は明らかに
「何?何で邪魔するわけ?こっちは許可も取ってんの、お前の出る幕はないから」
「いいから離れろよ」
「ったく、うぜぇ。離れりゃいんだろ?」
乱暴な言葉遣いの割に、やけに素直に離れてくれた。
「南沢さん、聞きたい事が……」
「月城さん危ない!」
「え?」
危ないと言われて後ろを振り向くと、さっきの男が殴りかかってきた。
「おらぁ!」
「痛っ、」
いきなり頭を強打されて意識が飛びかけたが、小学生の頃に空手を習っていたので軽く受け身を取れた。
「ちっ、空手やってたのか……」
「離れないなら、この写真を警察に持っていく。許可があっても未成年相手では犯罪だ」
男の目の前にスマホの画面を向ける。
「くそっ!…お前覚えとけよ!」
自分が不利だと分かったからか、俺を凄く睨んで去っていった。
「月城さん、大丈夫ですか?」
「平気、それより聞きたい事があるんだけど、聞いてもいい?」
彼女はしばらく黙り込んだ後、静かに頷いた。
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