第4話 口止め
「月城さん、お話があります」
つい先程までクラスの人に囲まれていた彼女だったが、ひと段落した所で俺の所に来た。
「なんだ?」
「……ちょっとついてきてください」
あの時と同じ様に、彼女の背中についていく。
「あの、内緒にしてもらえますか?」
「何をだ?」
「私達が、その……
「最初からそのつもりだ」
誰がバラしたりするものか、そんな事をしても自分に得な点は何一つない。
「後、わたしが誘ったって事も……」
「言わないよ」
「ありがとうございます」
「こっちからもお願いがある」
彼女は、安心したような表情をしながらこちらを振り向いた。
「
「はい。分かりました」
俺の言葉が足りなかったからか、いくら初対面とはいえ、いきなりこんな事を言ったので誤解させてしまった。彼女は少し悲しそうな顔をした。誤解を解くためにももう一度口を開く。
「嫌いとかじゃないんだ。ただ……君を見てると思い出すからさ、気まずいんだよ」
彼女は顔を赤くする。これが俺が気まずいと感じてしまう理由だった。仕方ない、初めての相手が好きではないといえ美少女だ。思い出してしまうのも無理もない。
「そ、そういうものですよね。男の人は……」
「情けない話だけどな」
誤解が解けたのならそれで良い。この後は入学式があるので教室に戻った。
数名のクラスメイトと他愛のない会話をして、時間がきたので体育館に向かう。流石は高校というべきか、中学よりも遥かに人数が多い。
中学の時には両親に来るな来るなと言っていたが、実際に本当に来ないと寂しく感じる。
長々とした入学式が始まり、ボッーっと聞いていたらいつの間にか終わっていた。式中の記憶はほとんどない状態で教室に戻る。
初対面とは思えない程のスピードで仲良くなっている女子。モジモジしながらちょっとずつ距離を詰めている男子。どちらでもない俺。そんなクラスの中で、琴葉も同じ状況だった。
そう思ったのだが、また琴葉の周りに人だかりが出来る。
(顔か……………、)
チラチラと覗いている男子達に、俺は彼女とヤったんだと言いたくなるが、それは約束を破る行為なので辞めておく。
こんな始まりなので、俺のボッチはほぼ確定しそうだ。明るい性格でもないし、面白くもないので友達を作るというのは難しい。
「彼女、可愛いとは思わないか?」
「誰がだ?」
このクラスで最初に話した間宮が俺に話しかけてくれた。
「南沢琴葉さんだよ」
「可愛いとは思うな」
かなり可愛いと思うのだが、口に出すと恥ずかしい。
「何だ?それだけか?」
「それだけって何だよ」
「ヤりたいとか思わないわけ?」
「……思ってても言えるわけないだろ」
妙に核心をついてくるので、言葉に詰まる。この男は何を企んでいるのだろうか。そういう関連の事にばかり触れてくる。
「それもそうだな」
「そういう翔はどうなんだ?」
同じ話題を聞き返す。
「俺か?俺はめっちゃヤりたいよ」
「素直すぎんだろ」
俺は思わず吹き出した。ここまで素直だと逆に清々しく見える。声のボリュームが大きかったからか、周りの視線が俺たちの方を向いてる気がする。
「俺、そろそろ自分の席戻るな」
「おう」
彼のおかげで、ボッチを回避できたと思ったが、また元通りだ。
「は〜い、HR《ホームルーム》するよ」
担任が教室に入ってきた。今日はこのHRが終われば帰宅となっている。この空気から抜け出したいので早くHRが終わって欲しい。
「………以上でHRを終わるわ」
寝てしまったようで、目が覚めた時には終わっていた。これでようやく帰れる。そうして、俺が一番最初に教室から出た。
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