第2話 初情事

「ここが私の家ですので、どうぞお入りください」

「お、おう」



足早とエントランスを抜け、エレベーターに入り込み、上の階へ上がる。どうやらマンションで一人暮らしをしているらしい。


この辺は近くに駅やスーパーなどがあり、少し足を運ぶと街の中なので、一人暮らしをするには大き過ぎる、贅沢なマンションだった。


さっきの公園からは徒歩5分程度で、俺の家からも近い距離にあった。


エレベーターに乗ってからは、一言も話さないまま彼女の部屋の前に到着する。




「お邪魔します」

「礼儀正しいのですね。では、もう始めますか?」



家に入った瞬間言われる。まだ玄関なので、せめてリビングか彼女の自室に行ってからにして欲しい。



「俺はいつでもいいけど……」

「じゃあやりましょう」



顔色は一切変わっていないが、やる気満々の様子だった。彼女が前に進んでいくのでついて行く。




「これ、どうぞ」

「どうも」



彼女の自室に入り、ベットに座らされると、画像なんかでは見た事のあるパッケージが描かれた物を渡される。



「つけたら始めましょう」



今すぐつけろと言わんばかりの目線を送って来るが、初めてだから緊張もしているし、そんなすぐにはつけられない事情がある。



「流石に何もしてないのにつけられない」

「どういう事ですか?」

「あんまり言いたくはないが、なんだ、あれが上を向かないと言うか」



さっきまで余裕を見せていた彼女はポッと顔を赤くした。




「そうですよね。……男の人はそうですもんね」



その言葉を発した後、彼女は服を脱ぎ始めた。下着姿になり、俺のズボンを下ろした。


そこからの展開は早く、気がついたら全てし終えていた。初めて見る女の体もそういう声も、その全てが脳裏に焼き付いた。


初めてが可愛い女の子なのは嬉しいが、好きな人とした方が良かったのかもしれない。欲求に負けた自分が悔しい。



(こんなもんか……)



初めてを失った喪失感と疲れをどっと感じた。




「どうだった?」

「なんか、こんなもんかって感じです」

「同感だ」



お互いの相性とかもあるのだろうが、そんなものより何かが足りていない。そんな感じだった。




「……体は満たされても心は満たされないんですね」

「そりゃ、好きでもない人とやってもな」

「ですよね」



彼女は苦笑いを浮かべる。もう二度と会う事はない。それはお互い同じ考えだった。



「やっぱり愛ですか……」



1人呟く彼女のその発言は触れないでおく。



「男は獣だから、他の男とする時は気をつけろよ」

「もうしませんよ…」

「そうか」



脱いだ服を着る。俺がここに滞在する理由はもうない。彼女を今一人にしてはいけない気がしたが、赤の他人の俺がそんな事を気にする必要はない。


そういう行為をしたから全くの他人という訳ではないけれど…。


これからはまた他人だし、どうこうするつもりもない。




「じゃあな」

「ええ、さようなら」



服を全て着終えた後、来た道と同じ道を通って帰る。ヤリステ、とは違うが似たような気分だった。


来週は高校の入学式なのに、楽しみだという感情も湧いてこない。俺もどこか愛、というものを求めているのかもしれない。

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