出会いが最悪でも好きになれば問題ないですよね?

優斗

第1話 可憐な少女からの誘い

「私とセックスしてくれませんか?」



 月城奏太つきしろそうたがその言葉を言われたのは、高校に入学する前の春休みの事だった。



 俺は今年の春から一人暮らしをしている。理由は、同じ仕事をしている両親が共に仕事の関係で引っ越さないといけなくなったが、俺は地元に残りたかったからだ。その事を両親にお願いしたところ案外簡単に了承を得ることが出来た。



 幼い弟は両親について行ったので、俺はこっちに一人残ることになった。ここから両親達が引っ越したところまではかなりの距離があるので、帰って来ることもほとんどない。



なので今は、両親が建てた一軒家の家に一人で住んでいる。そんな事もあり、春休み期間はほとんど家に篭っていたため、この日は気分転換に久しぶりに外に出た。



中学時代は部活にも取り組んでいなかったため体力はなく、ここ最近ずっと動いてもおらず、家から少し出ただけですぐに疲れた。



肉体的な疲れというよりは精神的な疲れというべきか……。




「はぁ、」



そう小さくため息をこぼす。特に行く当てもなく家から出たので目的地はないが、喉が渇いてきたので近くのコンビニに立ち寄った。


そのコンビニは品揃えが悪く、大して良い飲み物もないのだが水分補給が目的なので麦茶を買った。その他にもお菓子やパンを買った。



コンビニから出た後、レジ袋の中からすぐに買った麦茶を取り出す。買った麦茶は乾いた喉を潤してくれた。



その麦茶はまた買いたくなってしまうくらいに、いつもより美味しく感じた。



今度は来た道とは違う道を通って家まで帰る。歩いて帰っていると、懐かしい公園が見えて来る。




「少し寄っていくか」



公園に立ち寄ったのはそんな小さな理由だった。小さい頃はよく来ていた公園も今では全く来なくなっている。



あの遊具この遊具を見るたびに自分の幼少期の事を思い出す。




(あの頃が懐かしいな)




小さい頃の記憶を思い出しながら色んな遊具を見ているうちに、一人の少女が目に映った。



薄い水色が入ったような銀髪に大きな瞳、まだ少し幼さの残ったようなとても整った顔立ちの美少女がそこにいた。俺が生きていた中で一番と言ってもいいほどに可愛いかった。



近くのベンチに腰を下ろす。俺はつい見つめてしまっていたのか、彼女もこっちに気が付いたようだった。俺は瞬時に目を逸らすが彼女はまだこちらを見ていた。




「スタッスタッ」




だんだんとそんな音が強くなって聞こえてくる。その足音は誰なのかすぐに分かった。俺がさっき見ていた女の人が俺に近寄ってきていた。



彼女はゆっくりと近づいてきて、俺の前にしゃがみ込んだ。何か罵倒されると思っていた奏太そうたからすると予想外の行動に驚いた。



彼女の顔を近くで見ると、真っ白で肌荒れの知らないような肌に、少し血色の悪い唇がついていた。




「貴方、私と出会った事あります?」

「いや、今会うのが初めてだけど」



顔だけでなく、声も可愛かった。学校にいたら性格が悪すぎない限り絶対にモテている。そう確信できるほどに完璧な外見の少女だった。




「この後ってお時間ありますか?」 

「時間しかないけど……」



これは逆ナンというやつなのか、その答えを知るために次の言葉を待つ。




「では、私とセックスしてくれませんか?」

「は?」



逆ナンといえば逆ナンに当たるのかもしれないが、俺の予想を遥かに上回るお誘いだった。




「何でいきなり、」

「早く大人というものを知ってみたいんです。それに……」

「それに?」



しばらくの間沈黙が続いたがその答えを彼女が話してくれる事はなかった。




「してくれないのなら大丈夫です。すみませんお時間取らせてしまって」



彼女は立ち上がった後にペコリっとお辞儀をして立ち去ろうとしていた。はっきり言ってこんな事は二度とないだろう。



正直俺は彼女の誘いを受けようとしている。奏太も色々と埋めたい気持ちがあるのだ。




「黙っててごめん。俺は君とするよ。けど一つだけ聞かせてくれ、何で俺を選んだんだ?」



初めて出会う相手にセックスの誘いは、いくら最近の女子でも流行ったりはしないだろう。そうなると理由があるはず、俺はそれが気になった。




「理由はないですよ。ただ貴方なら優しくしてくれそうだったから」

「もう一つ聞きたい、君はヤリマンなの?」

「失礼ですね。さっき言いましたけど、私は早く大人になりたいんです」



確かに単刀直入にそう聞くのは失礼だったが、今の答え方的に彼女は処女なのだろう。そして俺の事は単に利用道具としてしか見ていない。だったら誘いを断る理由はもう見つからなかった。




「俺は月城奏太つきしろそうた

「私は南沢琴葉みなさわことはです」



軽く自己紹介をして俺も立ち上がる。座っていたから分からなかったが、琴葉は小柄なようだった。俺自体が背が高いというのもあるが、彼女は俺の胸のあたりまでくらいしかなかった。




「貴方、結構背高いんですね」

「君も結構小さいんだね」



小さいと言われた事にムッとしていたが、すぐに口を開いた。




「じゃあ、するのは私の家でいいですか?」

「いいけど、両親は?」

「一人暮らし始めたので、いないですね」



彼女も俺と同じで一人暮らしをしているそうだ。彼女の方を見てみると、暗い表情になっていた。もしかすると大人になりたいっていうのは何か家族に対する反感や不満などから来た気持ちなのかもしれない。




「あ、道具とかは準備してあるので大丈夫ですよ」

「そうか、俺は持ち合わせがなかったから助かる」



さっきは暗い表情をしていたが、すぐに元の表情に戻った。ところで、俺に持ち合わせがないのは仕方がない事だとしても、彼女が言った"準備をしている"というのは気になる発言だった。



恐らく、自分としてくれる人を探していたというのが理由だろうけど。



また彼女の方を見る。小柄と言っても少し平均に足りていないくらいで背は低く、華奢なのに胸は随分と実っていた。



かといって大きすぎるわけでもなく、男子の理想というべきくらいの大きさだった。




「これから裸見るんですから、そんなにじっと見ないで下さい」



俺の視線に気づいたのか胸を手で覆い隠しながら俺にそう言う。裸を見る、その言葉が俺にこの後のリアルさを与えた。



同年代の女子の裸なんて初めて見るので、多少ドキドキもしている。それと同時に別の考えも思い浮かんだ。




(これから裸見るんだったら、今手で覆い隠しても意味ないのに)



流石に考えが変態すぎるので、一度冷静になる。




「ごめん、じゃあ案内頼む」

「ついて来て下さい」



彼女の後ろを歩く。ふわっと甘い匂いが奏太の鼻を掠めた。これから俺は漢になるが、その後にどうなってしまうのかが心配になる。



これが俺と彼女の最初の出会いだった。












-----あとがき-----


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