第3話●2021年7月11日 無観客オリンピックプロジェクトチーム
明日から7月25日まで「まん延防止等重点措置」が続くことになったので、店は休業することにした。
東京では8月22日まで引き続き「緊急事態宣言」が続くらしい……
2020年3月24日、東京オリンピック延期決定。
こちらの世界も、向こうの世界でも同じ日に延期が決定した。
その時総理はこちらは安倍総理、向こうはレンポウ総理だった。
そして記者会見の内容は全く違うモノだった。
「世界的に新型コロナが蔓延しつつある世界で東京オリンピックを予定通り開くのは無理と判断して1年間の延期を致します。それにあたり政府と東京は観客を入れての従来のプロジェクト進行の他に、無観客でやるオリンピックのプロジェクトチームを発足したいと思います。これは最悪の事態になっても国家の威信としてオリンピックは行うという考えです。観客を入れての試合と無観客試合との二正面作戦で延期したオリンピックに臨む所存です」
このオリンピック二正面作戦は全世界で日本を見守ることとなった。
この無観客オリンピックプロジェクトチームはこちら側の世界で言うと、前代未聞のチームとなった。
チームリーダーは「シン・ニホン」を書き上げた安宅和人、副リーダーは「ホリエモン」こと、事業家でもある堀江貴文という異例の抜擢となった。
5Gを使った新しいカメラ技術、スポーツ観戦というルールを越えた新しい鑑賞方法、AI技術フル稼働の無観客オリンピックになろうとこの時に想像出来た人は居るだろうか?
新型コロナのために営業活動が停止した5Gの普及を通信大手三社はオリンピックというピンポイントで新技術開発をさせられることになる。
2020年7月、最初のテストはできたばかりの「札幌文化芸術劇場 hitaru」で天井と客席に360度8Kカメラを複数台設置して無観客での公演を行った。
カメラのつなぎ目をAIが補正して好きな位置に座れて鑑賞でき、VR視聴のテストも行われた。
同じメンバーでしか行動しないグループに限り、「札幌文化芸術劇場 hitaru」はオンライン公演を開放した。
ただ、この実験で判ったことはAIの補正の度合いが甘く、カメラが撮していない部分のつなぎがきれいではなかった。
そのため、無観客オリンピックプロジェクトチームに民間からスポーツゲームを作っていた会社、3Dのゲームを作っていた会社などが集められ、コナミ、任天堂、カプコン、エニックス・スクェア、バンダイナムコ等がチームへと加わった。
オリンピックを見せる技術に昇華するためだ。
2021年1月7日、こちらの世界と同じく、向こうの世界でも「第2次緊急事態宣言」が行われた。
その時、レンポウ総理はこう演説している。
「先ほど新型コロナ対策本部を開き、緊急事態宣言を決定いたしました。中略。このような事態に至り、東京オリンピックは無観客開催といたします。ここまま、落日のオリンピックにしてはなりません。無観客といっても、もうすでに体験されている方もいらっしゃるとおり、日本のテクノロジーの推移を極めた開催にするつもりです。5Gの発展、オリンピックの発展、そのすべてが世界に見られています。変異ウィルスもあり、この先不透明感がありますが最高の祭典にします。オリンピックのために用意したパブリックビューイングですが開催しません。その代わり、その場所をワクチン接種会場へと変更して行きたいと思います」
向こうの世界では1月の時点で無観客試合を選択していた。
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この物語はフィクションです。実在する人物、団体、事件等とは一切関係がありません。
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