第161話 リハビリ

 今でも呑気に宴会が続き……



「――というわけで、僕も理論は分からないですけど、これが僕の使う異空間創造する魔法です」


「「「「おおお~~~~」」」」


「チューニ君スゲー!」


「うおおお、俺、マジでチューニくんの舎弟になって正解かも」


「さっいこー! もう、おねーさんがオッパイあげる!」


「あっ、ずるーい、私もー!」



 白姫派も黒姫派も交えてチューニの魔法を披露しては、様々な歓声が沸き起こったりと、盛り上がりが続いていた。

 既に夜も遅くなり、皆もいつもとは違う一日を目の当たりにして既に疲れているはずなのだが、宴会は未だに終わる気配を見せることなく、若者は皆が活発であった。

 だが、そんな中……


「ふぅ~……こんなに燃えたのは久しぶりだぜ……」


 透明化という魔法に身を包まれ、透明となって回りの者たちからは見えなくなった、三人のエルフとジオ。

 汗にまみれた半裸のジオがスッキリしたように落ち着いて体を起こして、近場に落ちていた酒を手に取って飲む。

 そしてその傍らではナトゥーラが……


「ぜー♡ はーぜー♡ じ、じお、どのぉ……ん……♡」


 ジオと同じように全身を汗にまみれ、あられもない姿で横たわり、紅潮した頬にトロンとした瞳。

 そして、全身を激しく痙攣させながら、煽情的な声を漏らす。

 両足をだらしなく開き、お手上げのように手を上げながら寝て、意識が半分飛び掛かっている。

 だが、そんな瀕死のような状態のナトゥーラに、一休みを終えたジオは……


「さて、続きだ」

「ふぇっ!? え、あ、じおどの?」


 もう一回……そんな様子でナトゥーラに伸し掛かろうとする。

 その状況を見て、その傍らにて待機していた二人の女……


「じ、ジオ様ぁァぁ! そ、の、そ、そろそろ、わ、私にもぉ……」


 両足を「えむじ開脚」の姿勢で座らせながら、これまで一切ジオに手を出されていないエイム。

 もはや我慢の限界だと、興奮で息を荒くし、顔を真っ赤にしながら涙を浮かべ、その口元からは涎まで出ている。

 それが、多くの者に敬愛と尊敬を抱かれるハイエルフの姫であるなどと誰も思えないほど、盛った雌豚のようにエイムはジオに懇願していた。


「つか、どんだけメチャクチャやるし!? この変態! ナッちんこのままじゃ死んじゃうっしょ!?」


 一方で、これまでは腰を抜かして震えているだけだったギヤルも、流石に限界だと顔を真っ赤にしてジオを非難する。

 だが、そんな二人に対してジオはナトゥーラに伸し掛かりながら……


「まだだ。こいつに『まいった』を言わせるまではな」


 ナトゥーラが降参するまではまだ終わらせない。

 それほどまでにジオはナトゥーラに強引に押し倒されたことを根に持っており、その仕返しをまだ続行する気であった。

 しかし、それを理由にお預けをさせられて、エイムはもう我慢の限界だと、「えむじ開脚」を解除して、四つん這いになって尻を振りながらジオに縋る。


「そ、それでしたら、昔のように二人まとめて召し上がって戴ければ……ジオ様なら、私たち二人がかりでも十分に……」

「いや、俺もなんだかんだでリハビリしねーと、いきなりあんたら二人同時は無理だ」

「そんなぁ~……で、では、せめてジオ様の体のどこかに触れたり、ご奉仕させていただくことは……」

「ダメだ。今はまだ……俺とナトゥーラの一対一の真剣勝負だからな♪」


 懇願するエイムに対し、ジオは少し意地の悪い笑みを浮かべて応えない。

 エイムは泣きながら横たわるナトゥーラに声を掛け、


「ナトゥーラ! もう、十分だと思いません? 早くジオ様に降伏するのです」

「ひ、ひめしゃ、姫様……?」

「さあ、早く『まいった』と言いなさい!」


 ジオが手を出さないのなら、ナトゥーラに降参をするように声を掛ける。

 だが、ナトゥーラも意識を朦朧とさせながらも、絞り出すような声と、いやらしい微笑みを浮かべて……


「ん~……まだ、ま……ま・い・り・ま・しぇ・ん♡」

「ッッ!??」

「しょ、うぶは……まらまら……これからです~♡」


 まだ自分はジオとの戦いをやめないと、ウインクしながらナトゥーラはジオに再び戦いを挑む。

 その瞬間、絶望に染まったようにショックを受けるエイム。

 そんなエイムを見て、ジオとナトゥーラは少し懐かしいものを見たかのような温かい眼差しになるが、すぐに視線を互いに戻して戦いの続きを……


「つか、女がこんなに恥かいてまでお願いしてんだから、叶えてやれっしょ! この人でなし!」

「ごほっ!?」

「ナッちんのおっぱいばかり夢中になって、エイむんイジメてんじゃないっしょ!」


 ナトゥーラともう一戦しようとしていたジオを横から蹴り入れる。それはギヤルだった。


「いや、別にイジメてるわけじゃ……ただ、まだ今の俺は2対1はキツくて……」

「じゃあ、ナッちんと交代で相手してやればいいっしょ!」

「……そ、そうなんだが……」


 ギヤルに怒られてチラリとエイムに視線を向ける。

 そこには……


「くぅ~ん♡ ふきゅ~ん♡」


 寂しくて泣いている小動物のようなエルフが居た。

 ただ、ジオとしては、ここで「よし」と言ってあげたい気持ちと、「待て」と言ってみたいという気持ちもあり、発情しているエイムに手を出すのを一瞬ためらった。

 だが、それでも……


「……エイム姫」

「ジオ様~……」


 もうこれ以上は精神崩壊するかもしれない……何をするか分からなくなる。そう察したジオは仕方なく両手をエイムに向かって広げて……


「よし」

「はっは♡」


 次の瞬間、四つん這いになっていた淫獣エイムはジオに飛び掛かり、ジオの顔に何度も頬ずりして、顔中にキスの雨を降らせ、何度も感触を確かめるように腕を背中に回して抱きついて、ジオを求めた。


「ッ、うう、ジオ様! ジオ様! ジオ様ッ!」

「あ、ああ、いるから……ちょいと落ち着いて……」

「ジオ様、ジオ様! ……ジオ様♡……私の、ジオ様ッ!」

「ああ……はい……はい」


 涙を流しながらジオを求めるエイム。

 完全に理性のタガが外れてしまい、そして同時にようやくジオとこうして一緒になれたことに感情の抑制が出来ない。

 そんなエイムに一瞬慄いてしまうジオだったが、すぐに溜息を吐きながら苦笑して、エイムの頭を優しく撫でた。


「す、すげー……あの、清楚なエイむんが……す、すげ……」


 その乱れぶりはギヤルの予想以上であった。


「つか、人って好きな人とこういうことすると、女ってこうなっちまうんだ……」


 そして、ジオはエイムの頭を撫でて落ち着かせ、エイムがようやく心地よさそうに笑みを浮かべて大人しくしだしたら、ジオはだんだん両手をエイムの体をまさぐるように色々な箇所に手を伸ばし、その全てにエイムは嬉しそうにジオに身を預ける。

 そんな光景にギヤルはゴクリと息を呑むと……


「うふふふ~、そうですよ~、好きな人と結ばれることほど女の幸福はありません~」

「ナッちん……」

「それに、ジオ様は~……と~っても素敵で凄いんです~……イロイロと~♡」


 息も絶え絶えになりながらもジオを称賛するナトゥーラ。

 正に身をもってそれを証明しているナトゥーラだからこそ言える、実感の籠った言葉だった。

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