第162話 幕間・目覚めた
自らのことを「四番目」と名乗ったオシリス。
その言葉の意味をオリィーシは深く理解することは出来なかった。
しかしそれでも、目の前の男が異形な存在であることは彼女も理解できた。
「何をされようとしているか分かりませんけど……一度手を止めてください。そして、先生や都市上層部の方と一緒にあなたのことを聞かせてもらいます」
まるで犯罪者に対する対応の仕方であるが、オリィーシは目の前の男に対してはその対応で間違っていないと判断。
そして、いつでも動けるように警戒心を最大にして身構えていると……
「……ふふふふ……つまらないですね~……オリィーシさん」
「……え?」
スイッチを押す手を止めて、オシリスが不敵な笑みを浮かべながら立ち上がる。
「魔法の才能に溢れ……頭も良く、成績優秀、容姿端麗の才色兼備……そして、ついにはこの研究所跡のコンピューターまである程度復旧させた……しかし……君のお尻は小ぶり過ぎて、僕の好みじゃない」
「えっ……え? お、おし……」
「だからこそ困ります」
その瞬間、オリィーシは異様な寒気を感じて顔を青ざめさせる。
明らかに部屋の空気も変わり、にこやかに笑う男からは冷たい空気が発せられる。
そして、オシリスはオリィーシに向かって立ち……
「好みのお尻でもない人に、えらそうに命令されるのはムカつきますので……少し……懲らしめてあげましょう♪」
「ッ!?」
「十賢者序列1位……お尻ぺんぺんしてあげましょう」
次の瞬間、オシリスの両目が眩く発光。
そしてオリィーシはその後、生れてから一度も見たことのない力を目の当たりにし……
だが、その状況を誰も知らない。
そして――――――――
「はあ、はあ、はあ……強い……」
両膝を付いて、制服を少し破り、その肉体にはいくつかの生傷を負い、疲弊したように肩で息をする少女。
十賢者1位にして、都市が誇る天才少女・オリィーシは驚愕していた。
「こんなに強いだなんて……」
室内に漂う爆炎の後。
広い部屋とはいえ、貴重な遺跡やアイテムのある部屋で一つの戦いが行われていた。
それは、十賢者1位であるオリィーシすらも戦慄させるほどの戦いだった。
だが……
「はあ、はあ……おかげで、手加減できませんでした……」
爆炎が晴れ、オリィーシの足元には一人の男が地面に突っ伏して転がっていた。
「……あ……れ? ぼ、僕様が……ま、負け?」
両手足を黒焦げにして欠損させている……オシリスだった。
「こ、これはビックリ……は、こっちの方。こ、これほど、あなたに攻撃力があったとは……」
地に平伏した状態で、オシリスは表情を引き攣らせながらオリィーシの力に驚いていた。
すると、その頭にオリィーシは手を添えた。
「もう動かないでください。あなたの体に魔法をセットしました」
「……なに?」
「これが私の開発した魔法……セットした魔法を私の任意でいつでも発動できる……時限式魔法」
「じ、時限式? まさか、魔法を時間差で……」
「動かないで下さいと言いました。あなたにセットした魔法は……爆発系」
「ッ!?」
「幸いあなたが一人でここに来ている以上、目撃者は居ません。……意味はお分かりですね?」
まさかの返り討ちを食らっただけでなく、自分の生殺与奪まで握られてしまった。
相手を見くびり過ぎていたことに、オシリスは苦笑するしかなかった。
そして、いつでもオシリスを手にかけられる状態にしたまま、オリィーシはデスクの「コンピューター」の元へ行き、状態を確認する。
戦闘の影響で壊れていないか心配だったが、今のところ問題ないようである。
そして……
「……にしても、あなたがログインしてくださったことにより、見れるデータが増えました……そして、見つけました。『生体兵器シリーズ』……」
「ッ!?」
横たわるオシリスの傍らで、涼しい顔をしてコンピューターを操作するオリィーシは、一つの情報に辿り着いた。
「これが、あなたですね? 四番目・クァルトゥム……研究データ……。なるほど……組み込まれた思考ルーチンが強く、戦闘能力が劣る失敗作……」
「…………」
「与えられた能力は……空気中のチリを結合させて物質を作り出す。その力は際限なく、研究員が遊びで四番目の思考をオフにした状態で、空気中のチリから幾重もの鋼鉄を作り出して身に纏わせる『巨大化』の実験。及び、遊びで『ドラゴン化』を行ったところ……成功」
オリィーシの読み上げられる自身のプロフィールや実験データに対して、オシリスは一言も発さず黙ったままだ。
そして、オリィーシは……
「しかし、状況によっては都市一つを軽く滅ぼせる破壊力を秘めるため……思考ルーチンは常にオンの状態にすることが決定。思考ルーチンを司る個所は……ここ? お尻の穴から入った奥深く……」
読み上げたデータに興味深そうにうなずくオリィーシ。そして、地に平伏しているオシリスをチラッと見て……
「この力を……もし、コントロール出来たなら?」
コンピューターより出された新たなる情報。しかしそれは、オリィーシにとってはまるで悪魔の囁きのようにも感じていた。
すると……
『チューニくん、経験はないみたいだけど~、キスとかしたことある~?』
『う、うう、は、はい、それは……その……少し前に……セクって女の子と……』
―――ッッ!!??
『じゃあ、初おっぱいは? 私たち~?』
『い、いえ、そ、それは……こ、コンさんっていう年上のお姉さんに……』
―――…………ッ
映し出される広場で女たちに囲まれているチューニの姿。そしてその言葉を聞いた瞬間、オリィーシの中で何かが切れた。
「そっか……もう……チューニ以外全部消しちゃえばいいのよ……」
もう、その瞳に光は無い。ただあるのは、狂気だけ。
その狂気を身に纏わせてオリィーシは立ち上がり、部屋の隅にあった長めの箒を手に持った。
そして……
「四番目さん……」
「?」
「お尻を出してください」
「ッ!?」
「これぐらいの長さなら……思考ルーチンをオフにできそうですから」
もう、その狂気は止まらなかった。
――あとがき――
お世話になっとります。
『第七回カクヨムWeb小説コンテスト』に下記作品で参加しようと思います。
『天敵無双の改造人間~俺のマスターは魔王の娘』
https://kakuyomu.jp/works/16816700429316347335
まだ始めたばかりですので、是非にこちらの作品も読んでいただけたら嬉しく、よろしくお願い申し上げます。
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