第160話 飲み会
「というわけで! 今夜の飲みはジオ兄貴とチューニくんの奢りだってよ! 今だけは教科書捨てて、全員騒げ! それでも白だの黒だの騒ぐ空気読めねえ馬鹿が居たら俺を呼べ! ぶん殴ってやるからよ!」
「「「「うおおおおおおおおおおおっっ!!」」」」
突然、世界樹の樹頭が消し飛んだが、すぐに再生して、更に巨大になった。
原因については数百人の目撃者が居るのだが、できるだけそのことを口止めし、「再生したんだから、あとはこれで勘弁してくれ」ということで……ボロボロになった広場を使っての大宴会。
「おっし、アゲアゲっしょー!」
「「「いええええええい!」」」
黒姫派。更にはギヤル自身の人脈や企画力で、立食形式で全員入り乱れてのバカ騒ぎが夜遅くまで続いていた。
「ふぅ……一時はどうなるかと思ったぜ」
「いや、ほんとそうなんで……」
盛り上がる宴会の光景を眺めながら、一応は主賓であるジオとチューニはドッと疲れた表情で地べたに腰を下ろしながら、ジオは酒を、チューニはジュースを飲んで一休みしていた。
「そういや……この広場も綺麗な噴水とかあったんだよな……いくらするんだろ……」
「さあ?」
「……この宴会でいくらぐらい使った?」
「数百万マドカ……でも……まだ三億以上残ってるんで……」
「ふ~ん……。となると、ゲームの方は……」
「でも、投票はここに居る人たちがしてくれる感じになるでしょ? なら、大丈夫じゃない?」
とりあえず、世界樹問題は乗り越えたとして、二人はゲームのことを思い出した。
それは現在、ジオパーク冒険団で行っている、金を使っての勝負のことである。
まだ、自分たちは金を全然使いきっていない。だが一方で、勝負の勝敗を決める投票はここに居る連中がすることになるだろうと思えば、自分たちの勝ちは濃厚ではないかというセコイ心理もあった。
「そういや、あいつらもそろそろこの街に来てもいいころだな」
「うん。マシンはともかくとして、あのガイゼンが何にお金を使ってるか、ほんと気になるんで……」
二人は今、どうしているだろうか? それが少し気になって、飲みながら二人は夜空を見上げてボケーっとしていた。
すると……
「いえーい、飲んでる~っしょ?」
そんなジオとチューニに、背後からギヤルが二人の肩に手を回して入ってきた。
「ジオチンも~、チューちゃんも何してるっしょ!」
「だから、ジオチンやめい!」
「ちゅ、チューちゃんって、ぼ、僕?」
いきなり呼ばれるあだ名に微妙な顔を浮かべる二人。だが、そんな二人の反応を気にせずに、ギヤルは機嫌よさそうにケラケラと笑った。
「まぁ、そう言うなっしょ。あたし、これでもマヂ感動したんだかんね? スゲーあちーし、二人とも。おまけに、ジオチンもただのジオチンチンじゃねーって分かったし、見直したっしょ!」
「何をエラそーに……経験なしのくせに」
「うぐっ!? け、けーけん豊富つったっしょ!」
そんなギヤルのからかいに、処女であることを言って反撃するジオ。
ギヤルはすぐに顔を赤くして否定するが、それを見ていたチューニも「えっ、この人……」と感づいたようだ。
とはいえ、話題の渦中の人物が一緒に集まっているとそれだけで話題になり、ギヤルがジオたちと話をしているのを見て、他の女たちもニヤニヤしながら駆け寄ってきた。
「うわっ、ギヤルちゃん、なになに? な~んか仲良くしてんじゃん!」
「チューニ君は、あたしらチューニ親衛隊のだから、ギヤルちゃん手ぇ出すのなしじゃん?」
「そういえば、ギヤルちゃんリーダーさんとさっき、ガチでエッチなことしてたん?」
「そうそう! 今日は白だの黒だのはタブーって話だけど、あのエイム姫と一緒にさ……」
女子たちが気になるのは、「チューニは自分たちの」、「実際、ジオとギヤルはどういう関係?」というものであった。
もちろん、チューニに関しては……
「い、いや、チューちゃんは流石に……あ、あたしがこんな、どど、ドーテー坊やに手ぇ出すわけないっしょ! まだまだ、おこちゃまには、あたしは刺激的すぎっしょ!」
こう言って誤魔化すことが出来る。だが、ジオに関しては……
「じゃあ、リーダーさんは?」
「そうそう、あんなところで~、脱いで~、リーダーさんのムキムキバナナさんを~」
「ねぇ~♡ ナ~ニしてたし~?」
もう、決定的瞬間まで見られていたために誤魔化しなんて出来るはずがない。
とはいえ、まだ「本当の決定的な領域」までは到達していなかったために、いかようにでも言い様はあった。
しかし、ギヤルは……
「お、お……おうよー! こいつ、エイむんやナッちんのお気に入りっぽいから、あ、あたしのテクで篭絡してやろーって思ったっしょ!」
「「「きゃーーー♡」」」
見栄と意地から、話を盛った。
「リーダーッ!?」
「あ~、もういいや、めんどくせ~」
そしてチューニも驚いてジオに問おうとするも、ジオも釈明がめんどくさくなったので、もうどうでもいいという様子で、ツッコミ入れなかった。
「で、でよ~、ま~、エイむんも、ナッちんも、ま、まだまだエッチッチのテクはあたしに及ばねえし~」
「そうなんだー! でも、あのエイム姫とナトゥーラさんの二人が、リーダーさんとってのが驚きだけど……」
「さ、さあ? あたしは知んねーけど、でもまあそういうことだから! あたし、ドスケヴェルフ最強だからどうでもいいし! な、なはははははは!」
だがしかし、そうやって調子に乗っていると……
「あらあら~、それは心外ですね~、姫様~」
「ええ。どうやら、改めて思い知らせる必要があるようですね」
「ギクッッ!?」
いつの間にか背後に、ニッコリと微笑むナトゥーラと、氷の威圧を飛ばすエイムが立って……
「さぁ~、ジオ殿~、迎えに来ました」
「今一度……透明化してこのままここで!」
「ちょ、ま、あ、あたしまで!?」
エイムが溜息を吐いているジオと、あえて見せつけるためにとギヤルに包み込むような白い靄の魔法を放って、自分たちと二人を透明化させ……
「さ、三人が消え……ギヤルちゃんも消えたーっ!?」
「ちょっ、また四人消えちゃった!?」
「このまま、透明になってここでヤルんじゃ!?」
「チューニくん、もう一度チューニ君の力で!」
「いや、僕はもう……巻き込まれるの勘弁なんで……」
周りの女たちが騒ぎ出し、今度は巻き込まれないようにとチューニもその場から慌てて離脱。
そんな状況の中、再び透明になった三人のエルフ、そして……
「は~……しゃーねえ、ナトゥーラ」
「はい? んっ!?」
「ん」
ジオが突如立ち上がって、自分に襲いかかろうとしていたナトゥーラにカウンター。
「ッ!?」
「なっ、じ、ジオ様!?」
「ちょっ、ジオチンッ!?」
まさかのジオからの先手に驚愕する三人。
すると、ジオはもう開き直ったかのように……
「さっきは、お前に好き放題されちまったからな……もう、トラウマや体の震えも収まった……リベンジマッチだ! 覚悟しろ? 倍返しだ!」
「えっ!? ジオ殿? あっ、そんな、いきなり、あ!? ―――――あ♡」
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