第26話 最強魔法使い爆誕

「いや……僕も自分でも思うようにできなくて……」

「言い訳なんて聞かない! どんな手品を使ったかは知らないが、もう僕には通用しないぞ! 所詮君がどんな外道な力を手にしようと、仲間たちとの絆で軽々とふきとばしてみせる!」


 自分たちは負けていない。いや、負けるはずないと未だに吼えるリアジュは、服を飛ばされて恥ずかしがっている生徒たちを再び鼓舞する。


「皆! あの力を、今こそ見せる時だ! 文化祭で発表して、優秀賞をみんなで取った、あの『協力魔法』だ!」


 協力魔法。そうリアジュが叫ぶと、恥ずかしがりながらも生徒たちが顔を上げていく。


「で、でも、リアジュ君、あの魔法は……先生に使うなって」

「そ、そうだよ、それに、あんなの使ったら……殺しちゃうんじゃ……」

「協力魔法!? だ、だめですよ、リアジュ君! いくらなんでもそれはダメです! チューニくんが死んじゃいます!」


 リアジュの考えに、生徒たちは顔を青ざめさせる。

 一方で、ジオたちは……


「……協力魔法? なんだそりゃ?」

「合成魔法のことではないのか?」

「ほう。異なる属性同士を組み合わせて、更に上級な属性を生み出すアレか?」


 少し興味深そうに生徒たちを見るも……


「こんな卑怯で下劣な奴にこんな目に合わされて、皆は悔しくないのかい! それに、相手は薄汚い魔族と手を組むような人類の裏切り者だ! これは、正義のためなんだ! さぁ、早く僕に魔力を! 早くしろ!」


 爽やかな表情が消え去り、イライラしたように乱暴な口調でまくし立てるリアジュに圧されて、生徒たちも戸惑いながらも慌てて掌に魔力を集中し、放出し、それをリアジュに送っていく。

 それは……


「「「なんだ。ただの魔力の受け渡しか」」」


 ジオたちにとっては、些かガッカリするような内容のものであり、そうとは知らずにクラスメートたちから魔力を受け渡されたリアジュは、増量した自身の魔力を感じながら笑みを浮かべる。



「これが皆で協力し合って開発した協力魔法だよ、チューニ君。文化祭のときに皆で協力し合って開発したこの魔法で、僕たちは賞だってもらったんだ! 君は退学したから知らなっただろうけどね!」


「は……はぁ……」


「皆から力を集めた今の僕が魔法を使えば……最強魔法・メガ級の力を使うことが出来るんだ!」



 誇らしげな表情でチューニを見下すリアジュ。そしてその発言にまたジオたちは……


「……最強魔法が……メガ級? ……あ~、そういや、魔法学校では『そういうこと』にしてたんだな。そこは、三年前と変わってねーんだな」

「魔法学校ではそうなのだな……確かに、魔法学校を卒業したからといって、全員が『そういう道』に進むわけではないからな……」

「おいおいおいおい、どーいうことじゃ? メガ級が最強とか、あの小僧は何を言っておるんじゃ?」

「ガイゼン、テメエの時代や魔界はどうだったか知らねーけど、今の地上世界じゃ、魔導士や騎士団、軍人とかそういう道に進まなければ『ソレ』に関しちゃ教えてもらえねーんだよ」

「普通に生きている分には必要のない知識だからな」

「なんと……そんなことになっておったとはの~。……そうとは知らずに、ますます道化じゃのう、あの学生たちは……」


 ジオたちは、どこか哀れんだ表情をして、リアジュを見ていた。


「め、めめめ、メガ級の魔法っ!?」

 

 とはいえ、ジオたちの反応など知らず、チューニだけはむしろリアジュの言葉に怯え切っていた。

 チューニ自身も、魔法をこれまで使えなかった身とはいえ、知識として、メガ級の魔法がどれほどの存在かは知っていたからだ。


「っ、だから……もうやめてください! みんなも、なんで止めないんですか! チューニくんが死んじゃいます!」


 そして、唯一クラスの中でリアジュに魔力を受け渡さなかったアザトーが、自分の今の格好を顧みず、チューニを助けようと割って入る。


「チューニくん、今すぐ謝ってください! 何があったか知らないですけど、もう土下座でもなんでもしましょうよ!」

「い、いや、……っていうか……あいつの方からやって来たんで……っ、ちょ、その前にあんたその恰好!」

「今はそんなことどうでもいいんです! 私、チューニくんには……チューニくんがこれ以上……だから、リアジュ君もやめてください!」


 シルクの白い下着一枚と黒の二―ソックスに黒い靴。それだけを着て、あとは裸という格好だが、今はそんな姿に恥ずかしがっている場合ではないとアザトーがチューニの腕に抱きつくような形で、必死に降伏を訴える。

 だが、そんなアザトーの姿に、リアジュは……


「あ、アザトー……何を……ぼ、僕以外の……男に……なんで、そんな落ちこぼれにいつまで抱きついてんだよ、このぉ!!」

「リアジュ君……で、でもぉ……」

「ッ、ふ、ふざけるなっ! そんな落ちこぼれのクズに何ですり寄っているんだ!」


 嫉妬。そして八つ当たりにも似たような感情が爆発したのか、リアジュはまだアザトーがチューニの傍に居るというのに、怒鳴り声を上げながら魔法を放つ。


「メガファイヤッ!!!!」

「ッ!? ちっ!」

「えっ、り、りあじゅ……く、ッいっ!?」


 その瞬間、チューニの体が勝手に動いた。

 眼前まで迫りくる、先ほどまでのバイト級を遥かに上回る、キロ級すらも飛ばすほどの力。

 横に逃げようにも、範囲が広すぎて、もう今から逃げても逃げきれない。


「お、おい、リアジュ君、なにやって!?」

「まだ、アザトーが傍に―――ッ!!??」


 人間大どころか、建物にまで匹敵するほどの大きさと、轟々と燃える炎の塊が、チューニとアザトーを包み込もうとし、チューニは咄嗟にアザトーを乱暴に自分の後ろに突き飛ばし、アザトーを守るかのように両手を大きく広げて、チューニはその魔法を受けようとした。


「ちゅ、チューニく……ン……だ、……だめえええ!」


 チューニに庇われ、思わず悲鳴を上げるアザトー。

 そしてチューニは、「これは死んだ」と、その瞬間に死を覚悟した。

 だが……



「……あれ?」


「……へっ?」



 メガファイヤは、チューニを包み込もうとした瞬間、まるで割られたガラスのように粉々に砕け散ったのだった。


「……え? な……なんで?」


 その状況は、誰もが目を疑い、そして何が起こったのかを理解できない光景だった。


「うわ~……ほんと、突っ立ってるだけで何もしなくていいなんて……便利だな、あの能力」

「完全オートか……」

「魔法使いにはたまらん能力じゃな」


 唯一その現象の意味を理解しているのは、ジオ、マシン、ガイゼンだけ。

 そしてチューニ自身、何が起こったのか一瞬分からず呆けたものの、ジオたちのノンキな会話を聞いて、ようやく理解した。






――あとがき――

いつもお世話になっております。チューニ爆誕からのチューニタイムの始まりです。引き続きよろしくお願いします。


また、フォローやご評価いただけましたら幸いです。近々本作でも発表する情報とかありますので、よろしくお願いします。



また、本日11時より拙作の別作品である「禁断師弟でブレイクスルー」のコミカライズ更新日です! みなさん、是非是非見に行ってくださいな。


https://seiga.nicovideo.jp/comic/47196

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