第17話 大掃除

 僕は毎年行われる家の大掃除が大嫌いだ。

 自分の部屋を掃除するのはまだいいけど、ある部屋を掃除するのはどうしても嫌なのだ。

 しかし、そこは家のどの場所よりも念入りに綺麗にしないといけない。その為、大掃除の一番最初に家族総出で掃除をする。

 両親と祖母、姉と僕の5人でその部屋の前に立つと、祖母が扉に付いている南京錠を解錠する。祖母の両手で南京錠を外し、鉄製の扉を父と僕の2人掛かりで押し開ける。

 ゆっくりと開いた部屋は窓が付いてなく、部屋の真ん中の梁に括られた輪が作られた縄と合わせて異様に見える。

 ここで何があったかは容易に想像出来るが、真相は祖母と父しか知らない。何でもこの家の跡取りがこの部屋の真実を語り継いでいるらしい。

 祖母は前当主の祖父が父が学生の頃に亡くなった為、遺書で真実を知り父が当主になった際に伝えたらしい。

 たった2畳しかないこの部屋は5人で手分けをすればあっという間に掃除が終わる。

 父と祖母が念入りに汚れが無いか確認して、静かに頷くのを合図に僕らは部屋を出て行った。

 同じように扉を閉めて施錠すると、父は大きく息を吐いた。


「これで来年も我が家は安泰だ」


 そう言って他の部屋の掃除をするべく足早に立ち去った。祖母と母は黙って父の後を着いて行く。

 僕も行こうとしたが、姉が部屋の前で立ち止まり鉄製の扉を見つめていた。


「姉さん?」

「ここの事、知るのはどっちになるのかな?」


 姉に声を掛けると独り言のように僕に問いかけた。


「えっと、僕は嫌だな」

「私も嫌だよ。でも、どちらかが知らなくちゃいけない。そして知ったら一生この部屋から逃げられない」


 姉が僕の方に顔を向ける。どこか諦めたような顔をしていたが、僕も同じ顔をしている。

 この部屋の真実を受け入れるか、姉になすりつけるか。

 最悪な選択を考えて胸に重いシコリを抱えたまま、僕は部屋を後にした。


終わり

 

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