第11話 気触れ

気触れ


 痒い、痒くてたまらない。

 俺は掌を掻きむしって痒みに耐える。

 斑らに発疹が出来た掌からは汗が止まらず、炎症を起こして痒みが更に広がっている。

 病院で炎症を抑える薬をいくつか貰ったが、全く効果がない。

 しかも痒みが治まってからが酷かった。ぶよぶよにふやけた皮膚は指先の感覚が鈍くなり、乾燥すれば皮膚が裂ける。

 感覚を戻す為に不要になった皮膚を取り除くが薄くなった皮膚は敏感になり、少しの刺激が痛みに変わる。

 皮膚を取り除く時も下手をすれば血が滲む。

 ボロボロになった皮膚が硬くなると、ささくれになって別の肌に触れるとザラザラして不快だ。

 それを何度も繰り返した俺の掌は、余分な皮膚がないほど薄くなっていた。

 熱い物は触れないし、小さな傷がいくつか出来ているのでしみる。

 こうなった原因は分かっている。こうなる前に酔った勢いで薄汚れた地蔵を叩いたからだ。

 あとで調べたら病を代わりに受ける身代わり地蔵だということを知った。

 すぐに謝罪をしてこの気触れを身代わりしてもらおうとしたが、効果はなかった。

 ボロボロになった掌にせめてもと軟膏を塗って治そうとした。

 むずり、とまた痒くなった。

 俺は癖のように掻いたが、その場所に絶望した。

 掻いた頬は緊張とは別の汗を浮かべていた。


終わり

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