第7話 想像
ハッと目を覚ました僕は辺りを見回した。
暗い自室が見えたのを確認すると、僕はホッと息を吐いてズレていた布団を首まで持っていき体を隠した。微かに震える体を守る為だ。
僕はさっきまで怖い夢を見ていた。
その内容は僕が友人宅へ遊びに行くと友人が人を殺していた。それは友人の両親らしく、友人は凶器の包丁を持って呆然としていた。
僕は凄惨な光景に吐き気を堪えながら、自首するように説得した。
すると今まで呆然としていた友人がギロリと僕を睨みつけると、持っていた包丁で僕の腕を切りつけたのだ。
僕はその場で尻餅をついて情けない声を上げながら後退りをする。腕はパックリと一筋の切り傷が出来ており、そこからだらだらと血が流れ続けている。
そんな僕を見下ろしてニヤニヤと卑しい笑みを浮かべながら、友人は包丁を僕の腹部に突き立てたところで目が覚めた。
あまりにもリアルな夢で、自分は殺されたんじゃないかと勘違いする程だった。
夢であることに安堵はしたものの、僕は怖くて仕方が無かった。
こんな怖い夢を見た後に再び寝るのが嫌なのだ。もしかしたら、さっきの夢の続きを見るかもしれないし、今度は別の怖い夢を見るかもしれない。
しかし、少しだけ開いたカーテンの隙間からは夜空に星が瞬き、月が高い場所で煌々と浮かんでいた。
明日も仕事だし、もう一眠りしないと体が持ちそうにない。
そう思ってギュッと目を瞑るが、今度はなかなか寝付けない。
しかも怖い夢に引きずられて、怖い想像が頭をよぎる。
例えば目を開ければ目の前に素足があり、恐る恐る視線を上げると小さい子供が僕を見下ろしているとか。
寝返りを打って部屋の扉の方へ視線を向ければその扉がゆっくりと開き、その隙間から誰かが覗く目が見えたりとか。
そんな想像が次から次へと溢れてくる。
もちろん、そんなはずはない。僕は恐る恐る目を開けて怖いことなんて何もないことを確認した。
子供の素足があることは無いし、首だけ後ろを振り向いても扉が急に開いて誰かが覗いていることも無い。
ホッと安心した僕は正面を向いて、もう一度カーテンに視線を移した。
しかしカーテンの隙間からは、先ほどまで見えていた星と月の輝きが見えない。
どうしてだ? と不思議に思っていた時だった。
バンッ‼︎
窓から強い音から聞こえて、僕は驚いて大きく目を見開いた。
慌てて体を起こして部屋の電気を点けると、カーテンの隙間から見える窓に誰かがいた。
それは髪の長い女で血走った目を向けて、拳で何度も叩いている。
窓にいる女は誰なのか? 何で僕の部屋の窓を叩いているんだ?
そんな答えの出ない事を考えるだけで、全く動くことが出来ない。
そして女は一度窓から離れると、どこから持ってきたのか両手で抱え上げる程の石を窓に向けて投げつけた。
これも夢であってくれと願いながら、僕は目をきつく瞑った。
終わり
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