お酒を飲み畳み掛けてくるお姉さんズ

「お土産本当にありがとう隆久君、それに真白さんも」

「いえいえ、是非召し上がって下さい」

「ふふ~ん……あぁたか君がいい匂いなのぉ」


 ……旅行から帰った次の日、その夜のことだ。

 林檎さんにお土産のお菓子を渡したのだが、せっかくだし一緒に夕飯を食べようということになった。献立はしゃぶしゃぶということで三人で鍋を囲み、会話を楽しみながら箸を進めていた。


 そんな中、俺はともかく大人組の二人はビールを飲むことに。お酒に強い林檎さんは一切変化がないが、逆にお酒に弱い真白さんはすぐに酔っぱらった。まるで母さんと飲んでいた時のように酔っぱらった理由の一つとしては、林檎さんに今回の旅行のことを楽しく話していたのが原因だろう。


『花火を見ながら二人で語らい……ふふ、本当に幸せな時間だったわ♪』


 俺との思い出を幸せに語ってくれたのは聞いている側としては恥ずかしさもありながらやっぱり嬉しかった。しかし、そんな話題だからこそ真白さんの飲む勢いは止まらなかった。


「たか君、ちょっと硬くしてる?」

「真白さん、その……えっと」

「うふふ~♪ 照れるたか君かあいいよぉ! もっとスリスリしちゃう」

「……良い光景だわこれ」


 お願いですからそんな真剣に見つめないでください林檎さん!

 お酒が入ると途端にボディタッチがいつも以上に増えるのは今まで何度も経験している。林檎さんが居るのにどうして、その理由は単純で真白さんが林檎さんに心を開いているからに他ならない。だからこそ、林檎さんが目の前に居るのに全く真白さんは自重してくれないのだ。


「恋人かぁ。良いわね本当に」

「林檎さん素敵な方ですからすぐに良い人が現れますって」

「あはは、ありがと隆久君」

「そうよそうよ~。林檎ちゃんには絶対にすぐ恋人が出来るってば。たか君は渡さないのけどねぇうっふっふ~♪ すぅ……うはぁん……この匂い、クセになりそう♪」


 まだ知り合って少しだけど林檎さんが良い人というのは良く分かる。真白さんの恋人というのもあるし、単に俺がまだ子供っていうのもあるんだろうけど凄く優しくしてくれるのだ。


「あ、ビールなくなっちゃった。もう一本開けちゃえっと」

「真白さん、あまり無理はしないでくださいね? 明日しんどいですよ」

「大丈夫よぉ。ほら林檎ちゃんももっと飲んで飲んで♪」

「はい、いただきま~す♪」


 この大人たちめ……。とはいえ、流石に真白さんのビールはこれを最後にしてもらうことにしよう。まあもう結構飲んでしまっているけれどね。ゴクゴクとビールを飲んだ真白さんはクスクスと妖しげな笑みを浮かべ、手を俺の服の中に入れてきた。


「私たち女と違って硬い胸板だけど、これがいいのよねぇ」


 へその辺りから脇腹、胸元から肩に掛けて優しく肌を触ってきて凄くくすぐったさを感じる。


「ほらたか君、まだお肉あるわよ。あ、お豆腐もいる?」

「あ、お願いします」


 林檎さんにお皿へよそってもらい口に運ぶ。三人ということでそこまでの量はないが、少しばかり俺が頑張らないとなくなりそうにない。無理をして食べるほどでもないので満足にお腹がいっぱいになる感じかな。


「少し上に行くと……あ♪」


 ……もう何も言うまい。

 ひとたびこうなってしまうと真白さんは基本的に俺への絡みをやめることはないのだから。背中から抱き着きながら腕を回して悪戯を繰り返している真白さん、見ようによってはエロオヤジにしか見えない。


「慣れてるのね隆久君は」

「慣れてるというよりは諦めてるみたいなものですけど」


 ちょっと悔しいのはこうやって真白さんに悪戯をされることがそこまで苦ではないと思っていることだ。何というか、こうやって体に触れられるのはやっぱり嫌いではない。むしろ、こうやって甘えてくる真白さんがとても可愛く思えてしまう。


「こっちはどうかなぁ……む」

「真白さん」

「むぅ! ……むぅむぅむぅ!!!」


 ズボンの中に手を入れようとしたのでそれだけはしっかり止めておいた。これでもかと不満そうな声を出した真白さんを見て林檎さんが心底面白そうに笑う。どうやら林檎さんの場合はお酒が入ると笑いが多くなるのかもしれない。


「そうやってお姉さんを拒むたか君にはお仕置きが必要ね」


 お仕置き? 首を傾げる俺の前に移動した真白さんは妖艶そうな雰囲気を醸し出しながら、俺の顔をその胸に抱くようにした。これだけならいつも通り、しかし今日はそれだけではなかった。


「林檎ちゃん、たか君の後ろに来てくれる?」

「? あぁそういうことですか」


 真白さんの声に頷いた林檎さんの声は何故か弾んでいた。視界を封じられている俺には見えないが、林檎さんが後ろに立った気配は感じることが出来た。そのまま少し間があったかと思ったら、後頭部にとてつもなく柔らかいモノが触れた。


「っ!?」


 思わずガタンと椅子を揺らしてしまったが俺は動くことが出来ない。


「林檎ちゃん~♪」

「真白さん~♪」


 たぶんだけど、二人は俺を挟むようにして抱きしめ合っているのだろうか。むぎゅむぎゅと前も後ろも柔らかいものに圧迫されているこの瞬間、とても悔しいことにその気持ちよさに身を委ねてしまっている俺が居た。


「どうかしらたか君。二人合わせて200センチオーバーのサンドイッチは」

「……………」

「真白さん流石にそれを聞くのは酷では? けれどなるほどですね。真白さんが隆久君をこうやって抱きしめたくなる気持ちが分かります」

「でしょう? 愛おしさが溢れてくるし何より安心出来るのよぉ♪」


 嬉しさを表すように体を揺らす真白さん、すると当然俺の体も揺れ動くわけだ。すると真白さんの大きくも柔らかい胸が形を変えることで、段々と更に奥へとハマるようにフィットしていく。真白さんでもそうなると言うことは当然、後ろに居る林檎さんにも同じことが言える。


「真白さんしゃぶしゃぶ……」


 俺としてはこう話したつもりだけど当然くぐもってしまった。


「ひゃん! もうたか君ったら熱い吐息を漏らしちゃってぇ」


 そして悩まし気な吐息を真白さんは零した。

 ぐぬぬ、完全に乗ってしまっているお姉さん二人に対して俺一人では流石に分が悪すぎる。だがどうこうする手立てもなく、俺はこの状況に甘んじるしかない。そんな時だった――林檎さんの一言が真白さんを正気に戻した。


「真白さん、エッチなゲームとかだとこのまま三人でみたいな空気ですが――」

「それはダメよ。いくら林檎ちゃんでもその先は許せないわね」

「あ、はい……ごめんなさい」


 林檎さんの言葉、絶対に本気ではないと分かるのだが真白さんを一瞬で正気に戻すくらいの力はあったようだ。それでようやく俺はおっぱい地獄から解放され、顔が熱さを誤魔化すように食事を再開した。


「あ~あ、本当に隆久君と真白さんが傍に居ると飽きないなぁ」

「そう言ってくれると嬉しいわね。ねえたか君」

「あい」

「あい?」


 おっと、つい照れた時に出てしまう返事を反射的にしてしまった。実はちょっと癖なんです、そう言おうとした俺だったが真白さんがコクコクと頭を揺らしていた。そのままテーブルの上に上半身を預けるようにして眠ってしまうのだった。


「すぅ……すぅ……」


 恐るべき速さで眠ってしまった真白さん、そんな彼女を見て俺と林檎さんは顔を見合わせてどちらからともなく苦笑した。


「寝顔、可愛いわね」

「はい。とっても」


 どんな眠り方でも真白さんは可愛い寝顔だ。ベッドで普通に隣で寝る時も、こうやって酒に負けて眠ってしまってもそれが変わることはない。


「結婚式は絶対に呼んでよ?」

「もちろんですよ」


 いつその時が来るか分からないけど、絶対に呼ぶことを約束します。

 それにしてもと、俺はチラッと林檎さんの胸元に目を向けてしまった。真白さんみたいに谷間が見える服装で目に毒なのだが、あれがさっき俺の後頭部に触れていたのかと思うと変な気分だ。


「……98だっけ」

「??」

「なんでもないです」


 98と107を足すとなるほど、確かに200は超えているな。

 不思議そうに首を傾げる林檎さんに見つめられながら、俺はずっとそんなしょうもないことを考えていた。

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