二人を見て幸せになるセリーナさん
「うんうんそうそう、でも私は――」
「え? それってでも……」
真白さんとたか君のお家にお邪魔をしてのオフコラボ、正直私としてはこの二人を眺めている方が楽しかったりする。セリーナとして話に参加するのもそれはそれで楽しくて幸せな時間なんだけれど……うん、やっぱり見ている方がいいなぁ。
「……ふふ」
高宮真白さん、この人は何というか……本当に美人だ。その上スタイルも良くて面倒見も良く、一途にたか君のことを想っているのもこう……凄く尊い。そりゃこの二人を推したくなる気持ちも分かるってモノだ。
そして工藤隆久君、彼に関しては声くらいしか知らなくて会うことも実を言えばかなり緊張していた。でも実際に話をしてみるとその緊張はすぐになくなり、どうして真白さんが彼を好きになったのかが分かった。素直に気持ちを伝えることもそうだし真白さんのことを大切にしているという気持ちがダイレクトに伝わってくるのだ。後はまあ単純に可愛いって感じかな。それは中性的とか童顔とかそういうものではなくて、たか君が持つ雰囲気が可愛がりたくなるような気にさせるのである。
:たか君はセリーナと会ってどうだったの?
「セリーナさんと会って……かぁ。可愛らしい人だなって」
「っ……」
「ふふ♪」
視聴者のコメントにたか君が私に視線を向けてそう答えた。可愛らしい、それはセリーナをではなく私個人に向けられた言葉なのは分かっていた。だから正直に照れてしまうのも仕方ないことで、それを真白さんに微笑ましく見つめられるのも……って何だよこれ恥ずかしすぎるんだけど!!
「悶えているセリーナちゃん可愛いわよねたか君」
「はい」
「やめてえええええええええ!!」
くぅ、本当なら二人のイチャイチャっぷりを揶揄うつもりだったのでどうして私が揶揄われているんだ! ……でも、この空間が凄く楽しくてもっと続いて欲しいって思ってしまう自分が悔しい!
「っと、すみませんちょっとトイレ行ってきます」
「いってらっしゃい」
椅子から腰を上げてたか君が部屋を出て行った。それから私は真白さんと二人でたか君が戻ってくるまでの間視聴者のみんなと雑談をするのだが、スパチャを送る形でこんな質問がされるのだった。
:300¥ 今日彼女が浮気して別れたんですが、この放送を見て元気が出ましたありがとうございます
:……お、おう
:元気出せよ
:せやせや、俺たちは味方やで
:浮気するような奴のことは忘れちまえ
:真白の特大おっぱいとセリーナのぺったんおっぱい見て元気出そうぜ
:草
おい、ぺったんおっぱいは言い過ぎだろうがお前! ま、まあセリーナはぺったんだけど私はそこまでぺったんじゃないし? ちゃんと柔らかいって感じられるくらいのボリュームはあるんだぞ! お前らが見ることは永遠にないだろうがな!!
「300円ありがとう。浮気かぁ……辛かったね。私たちとしては元気を出してとしか言えないけれど、あまり気に病まないように」
「そうだよ。私は浮気は……彼氏が居たことないから分からないけれど、もっといい人と出会えるよ絶対!」
こうは言ったけど、実際に自分の好きになった人が違う人と愛し合っているのを考えると……う~ん、私としては恋愛の経験がないから苦しいんだろうなってことしか分からない。愛ちゃんが浮気されていたけれど、あの子は全く気にしてない風だったもんなぁ。たぶんもう愛想が尽きてたんだと思う……でも、あの子を裏切ったあの男は絶対に許せないけどね!!
:マシロは浮気された時のこととか考えたことある?
「私が? たか君に?」
ふと投げかけられた質問、目を丸くして読み上げた真白さんはう~んと頭を捻るように考えた。正直何聞いてんだよって思ったものの、私としても真白さんがどんなことを答えるのか気になった。
「……考えたことないかな? 私はたか君を信じているから」
画面……この場合はカメラだがそれを真っ直ぐに見つめて真白さんはそう口にするのだった。信じている、その言葉はとても力強く、そしてたか君のことを心の底から信頼していることが窺えた。
「私もたか君が浮気するのは考えられないかなぁ」
そう思ったので私も口にした。
こんなにも素敵な人が傍に居るから、というのも理由の一つだ。今日初めてたか君に会ったわけだけど、彼がどれだけ真白さんのことを想っているのかを知った。真白さんもたか君も、お互いを想い合っている理想の姿……見ていてこっちまで幸せになるし、絶対に邪魔をしちゃいけないって思っちゃうもん。
:お互いに想い合ってるのね
:たか君は幸せ者やなぁ
:ホンマそれ
:俺もマシロみたいな人に出会いたい
「ちょっと違うかなぁ?」
「え?」
どのコメントに対する違うなんだろう、クスッと笑みを浮かべた真白さんはこう言葉を続けるのだった。
「私だって幸せ者だよ。たか君みたいな素敵な人に出会えたんだから」
「……………」
その笑顔はとても綺麗だった。同性なのに見惚れてしまいそうな……いや、完全に私は見惚れていた。どれだけ素敵な笑顔を浮かべるんだろう……どれだけたか君のことを愛しているんだろうって素直に私は思ったんだ。
:……あ~
:浄化されそう
:50000¥
:ずっと幸せで居てくれな
:せや。おじさんたちずっとそれを願ってる
:おじさんだけじゃねえぞ
:10000¥ 末永くお幸せに!
……ふふ、なるほど。こんなに温かい空気の中で真白さんとたか君は配信をしているんだね。
「セリーナちゃんが凄く優しい目で見つめてくるわ」
「仕方ないですよ」
こればかりは仕方ないってものだ。
セリーナとして色んな人とコラボは今までやってきた。けれどここまで心が穏やかになるコラボは初めてかもしれない。まあVtuberとしてやることってほぼゲーム配信だからってのもあるけれど……オフコラボ、これから積極的にやってもいいかもしれないなぁ。
「真白さん、これからもオフでコラボとかしてもいいですか?」
「あら、全然構わないわよ」
「ありがとうございます♪」
もちろんたか君もだぞ!
って、たか君帰ってくるの遅いなと思っていたらドアが少し開いていた。どうやらどんな話をしていたか聞こえていたようで戻りづらかったらしい。真白さんと笑い合い手を振ってたか君を呼んだ。
「凄く嬉しいんですけど、凄く恥ずかしかったもので」
「ふふ、そういうところが可愛いんだから♪」
真白さんはカメラから外れるようにたか君を抱きしめた。その魅惑の果実に頭を抱きしめるようにすると、たか君は少し暴れるのだがすぐに大人しくなった。一体何があったんだと騒がしくなるコメント欄、私は実況するように口を開いた。
「今たか君の頭が真白さんのおっぱいに挟まれていますね。たか君、感想は?」
「えぇ? あの……はい。とても幸せな気持ちです」
「むふふ~♪」
今の言葉が嬉しかったのか真白さんが物凄い笑みを浮かべていらっしゃる。耳まで赤くなっているたか君の様子にどんどん真白さんもスキンシップが激しくなっていくのだが……あぁいいなぁ。
「これ一生見てられるわ~」
:草
:俺たちにも見せろ!
:セリーナてめえ!
:某少年漫画のキャラみたいに目を潰して俺たちに見せろ
:これは共有財産だろ!
「無茶を言うんじゃないよ!!」
目を潰すだなんて無茶なことを言うんじゃない!
ふふんだ。この素晴らしい光景は私だけが見れる特権、二人とリアルで知り合いになれなかった己の不運を呪うんだな貴様らふはははははは!!
それから私は真白さんとたか君の三人で楽しい配信を続けたのだった。そして、終わり際にこんなやり取りが。
「そう言えばたか君、たか君は私以外の女の人とそういう関係になるのって考えたことある?」
「ないですけど。え? むしろ考えられます?」
「あり得ないでしょ!」
真白さんもそうだけど、たか君もたか君だなぁ。
今日は本当に二人に会えて良かった。Vtuberとして、今日みたいな偶然がなければ決してリアルで会うこともなかっただろうし、オフコラボもそうそう出来るものではないはずだ。
神様、感謝しています。
真白さんに、たか君に会わせてくれたことを……本当にありがとうございます。
「時に真白さん! 私も抱きしめてもらいたいんですけど――」
「? いいわよ?」
たか君と同じように私も真白さんに抱きしめられた。むにむにと心地の良い柔らかさと温かさ……はぁ、これはたまらんですわぁ。
「たか君、これはヤバいね!」
「あはは、ですよね」
「……なんか二人が息合ってるの嫌だわ」
あ、ちょっと拗ねる真白さんが最高に可愛い。
こうして私たちのオフコラボは大成功で終わるのだった。
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