メイドさんになるもエッチすぎるお姉さん

「おう隆久、これから秋月君と三好君で遊びに行くんだがお前はどうする?」

「俺はパスで。悪いな」


 そう言うと宗二はまるで裏切り者を見るような顔になった。だが、すぐに表情を変えて俺の肩に手を置く。


「まあなんだ。朝は有耶無耶になったけどおめでとだ隆久」

「お、おう……」


 予想した言葉とは違ったので少し驚いた。リア充滅ぶべしと言い続けているからてっきり仲間外れくらいされるとは思ったんだが……まあでも友人としては有難い限りだった。

 宗二の後ろに居る秋月君ともう一人、初めての紹介になるが三好君も頷いていた。


「ま、予定が合えば遊ぼうぜ? メイド喫茶とか一緒に行こうや」

「なんだよそれ……はは、分かった」


 っと、いつになるか分からないがみんなでメイド喫茶に行くことが決まった。

 校門までは一緒に向かい、そこからは別れて俺は帰路についた。昨日に比べて時間はいつも通りだったのでゆっくり……いや、気持ち早めに歩く。

 そうしてマンションに着き、荷物を置いて着替えてから隣へと向かった。


「ピンポンと」


 インターホンを鳴らすと、いつもはすぐに開く扉が今日は開かなかった。代わりにスマホに真白さんからのメッセージが届く。


『鍵は開けているからそのまま入ってちょうだい』

「……?」


 何だろう、とにもかくにも中に入らないと始まらないので俺は扉を開けた。すると俺を出迎えてくれたのはもちろん真白さんなのだが、彼女は俺を見てゆっくりと綺麗な動作で頭を下げた。


「おかえりなさいませ――ご主人様」


 ……メイドさんだ。

 って、あまりの光景に言葉を失ってしまった。確かに真白さんは俺を出迎えてくれたが、その服装はいつか見せてくれた胸元がガバっと開いたメイド服である。腰の高さで手を置き、アニメや漫画で見るようなメイドの礼を再現していた。


「……そういうことですか?」

「そういうことでございますご主人様」


 顔を上げた真白さんはニコッと笑い、俺を部屋へと招き入れる。なるほど、いつまで続くかは分からないが今真白さんは俺のメイドさんになってくれているというわけか……何だろう、エッチなメイドさんにしか見えないのは俺の心が汚れているからなのだろうか。


「ご主人様、何か欲しい物はございますか?」

「真白さんが欲しいです」


 取り合えず、今日は俺が攻めてみようと思う。真白さんが欲しいです、そう告げると真白さんは一瞬ビックリしたのだが、すぐにクスッと笑みを浮かべて服の紐に手を掛けた。


「そういうことでしたらお任せください。この体で最大限のおもてなしをさせていただきましょう」


 なんて魅力的なことを色っぽい表情と声で言ってくれたが俺はやっぱり無しでと日和ってしまった。真白さんは俺がこう言うことも分かっていた様子だけど、ちょっとだけ不満そうに唇を尖らせた。


「ご主人様、次は問答無用で襲い掛かりますのでそのつもりで」

「……あい」


 その言葉に込められた圧力に屈し、俺は頷くことしか出来なかった。

 それから真白さんは予め用意してくれていたのか、お菓子と紅茶を運んできてくれた。机に置いてそのまま真白さんは俺の背後に立つのだけど……一緒に食べてはくれないのだろうか。


「真白さんも食べませんか?」

「たか……こほん、今の私はメイドですからそれは聞けません」


 いや、流石にこの状況に慣れていないので隣に座って下さい。なので、俺は無理矢理にでも真白さんの手を引いた。可愛らしく悲鳴を上げながら俺の隣に座った真白さんだがすぐに立ち上がろうとした。


「ダメですよ」

「っ!?」


 立ち上がらないように、ガシっと体に腕を回して抱きしめた。これで逃げられないだろう……そう思った俺だったが、頬を赤くして俺を見つめる真白さんがボソッと呟く。


「……その強引さ、キュンとしてしまいますご主人様」


 そう言って顔を近づけ唇に軽くキスを落とした。ただ、真白さんはそのまま俺に体重を掛けるように身を寄せてきたので当然俺は倒れてしまう。ソファなので背中は柔らかい素材だが……うん、前も後ろも柔らかいモノに俺は包まれるのだった。


「ご主人様……ご主人様ぁ」


 止めどなくキスを降らしてくる真白さんだが、その様子からはどことなく俺が学校に行っている間に会えなかった寂しさを埋めているようにも感じた。

 真白さんにキスをされる中、俺は真白さんの頭を優しく撫でてみる。相変わらず手触りのいいサラサラとした金髪に夢中になってしまいそうだ。目を細めて気持ちよさそうにする真白さんだったが、こんなことを口にするのだった。


「ご主人様、私寂しかったです。なので何かください」

「ストレートですね」

「何かください」

「……………」


 何かください、とのことなので今度は俺から真白さんにキスをした。というか満足に動けないし、目の前に真白さんの顔があったからだ。一度俺からキスをすると真白さんが我慢できなくなったのか、そのまま舌を使って強引に唇を開かされる。

 ぴちゃぴちゃと唾液が絡まる音が部屋に響き、ある程度して満足したのか真白さんはようやく体を起こした。


「ご褒美、ありがとうございますご主人様」


 まあ……ご褒美は俺の方だと思うんですけどね。

 取り合えず、色々と元気になりかけたが俺も起き上がった。いい加減に元の真白さんに戻ってほしいと言うと、思いの外あっさりと頷いてくれた。


「ふふ、こういう趣向はどうだった?」

「……真白さん、一言良いですか?」

「なあに?」

「真白さんのメイドはとてもエッチだと思います」

「でも、嫌いじゃないでしょう?」

「……はい」


 あれを嫌いな男が果たして居るんだろうか……いや居ないだろう。

 メイドさんロールを解いた真白さんと並んで、用意されたお菓子を食べながらゆっくりとした時間を過ごす。


「こんな風に色んなキャラに成りきってイチャイチャするのもありよね」

「まだあるんですか?」

「当然じゃない! どれだけ衣装があると思ってるの? 配信用なのはもちろんだけどたか君とのコスプレプレイを夢見て買ったのが大半なんだから!」


 確かに大量の衣装があるのは知っているけどそんな隠された理由が……って、真白さんのことだからある意味あり得ると受け入れてしまうあたり、俺も真白さんのことを良く分かっている証だよなぁ。


「次はナースさんかしら……それとも制服を着て同級生なんてのも……ううん、私が後輩になるのもありね!」


 これからのことを想像して色んなシチュエーションを口にする真白さん、その度に俺も少し想像してしまい変にドキドキしてしまう。このメイドの衣装だけでも凶悪なのに、あんな風に迫られるともう我慢……出来ないよな絶対に。

 でも、恋人になったから何度も言うがそういうことをするのは変ではない。今度薬局に行ってゴムを少し買っておかないとかな。


「あぁそうだわたか君」

「何ですか?」

「我慢できなくなったらいつでもいってね? お姉さんが楽にしてあげるし、なんならこれも準備してるから♪」


 そう言って谷間に指を入れて取り出したのはゴムだった。それを見て俺が顔を真っ赤にするのは当然だし、そんな俺を見て真白さんが抱き着いてくるのも当然の流れだった。


「本当にたか君は可愛いんだから! もう好き、たか君は一生のお姉さんの傍に居ないといけないんだからね!」


 それは……まあ真白さんがそう言わずとも俺はそのつもりだ。明らかに年上で常に余裕を持ってエッチで……色んな部分で魅力が溢れる真白さんだけど、こんな風に少し子供っぽい姿もまた魅力の一つ……やれやれ、本当にどこまでこの人は俺を夢中にさせてしまうんだろう。

 真白さんに抱きしめられる中、俺はふと口を開く。


「真白さん、今日の夜にお互いの家族に付き合うことを報告するんですけど」

「そうね。それが?」

「その時に、こっちに住むことも伝えようと思います。荷物とか運ぶのも早い方がいいですよね?」

「そうね。今週にでも済ませてしまいましょう」


 そうそう、こうして一緒に住む……とはいっても、今まで一緒に居たからそこまで変化はないかもしれない。でも真白さんは最初から俺がこっちに住むと言ってくるのを想定しており、ずっと部屋を一つ空けておいたらしい。俺としても一度も入ったことがない部屋があったけど、そんな理由があったのかと驚いた。


「今日にでも配信で付き合うことを言っちゃおうかしら」

「真白さん!?」

「ふふ、冗談よ。でもお姉さん、たか君と一緒にゲームでもなんでもいい。一緒に動画を撮ることが夢なの」

「それは……少し足踏みしますけど、確かに素敵ですね」

「でしょう? だからいつか……それこそ近い内に実現しましょう♪」


 その真白さんの言葉を冗談とは思えず、本当にそのうち真白さんと一緒に動画を撮ることになるんだろうなと、怖さと共に期待を抱くのも確かだった。

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