早速仕掛けてきたお姉さん
「……あむ」
「美味しい?」
「はい」
「そう、良かったわ♪」
夕飯の時間、真白さんは自分のご飯に手を付けることはなくジッと俺を見つめてきていた。片時も目を離すことなく、ずっと俺を見ては笑顔を浮かべている。前もこういうことは少なくなかったけど、今日に関してはそれが顕著だった。
「……いいわね。恋人が自分の作ってくれた料理を美味しそうに食べてくれるのは」
真白さんの言葉を聞いて俺は頬が熱くなるのを感じた。同時に、確かに今こうして食べている美味しい料理、それを作ってくれたのが真白さんだと思うと本当に心から嬉しくなる。
「俺も同じです。この美味しい料理を作ってくれたのが……その、俺の恋人である真白さんだと思うと凄く嬉しいです」
「っ……たか君!」
実を言うと、いつもは真白さんと向かい合う形でご飯を食べるのだけど、今日だけは隣に真白さんは座っていた。だから少しでも真白さんが手を伸ばすとすぐに俺の体に触れることになる。つまり、ご飯の途中なのに真白さんに抱き着かれてしまうことになるのだ。
「食べにくいだろうけどごめんなさい。でもお姉さん我慢出来なくて」
「あはは、全然いいですよ。俺だって嫌じゃないし……むしろ嬉しいですから」
ギュッと、もっと強く抱きしめられた。
指に持っていた箸を落とさないように机に置き、俺は抱き着いてくる真白さんの相手をすることに。
「はぁ……お姉さん、割と本気でたか君が居ないと生きていけないかも」
「それは大げさでは」
「そんなことないわ! あぁこうして触れているだけでお姉さん幸せよ本当に。今までもそうだったんだけど……やっぱりいいわねこういうの」
そんな真白さんが可愛いと思うのも俺にとっては今まで通りだ。
それから満足するまで真白さんに好きにさせていた。流石に料理が冷えるからとちゃんと食べることに。
そして、予定していた配信の時間がやってきた。
「今日はパジャマなんですね」
「えぇ……でも」
いつも来ているパジャマでの配信かと思ったのだが、どこか真白さんは乗り気ではなさそうだった。
「どうしたんですか?」
気になったのでそう聞いてみると、真白さんは教えてくれた。
「……配信するよりたか君とイチャイチャしたい」
……なんだ、そんな可愛い理由だったのか。
あまりに深刻そうな顔をした割りには可愛い理由だったので俺は思わず笑ってしまったけど、真白さんからすれば笑い事ではないらしい。ただ、今までやっていた配信よりも俺を優先してくれたことは嬉しいけれど、そんな彼女を待っているファンが居るのも確かなのだ。だから俺はこう言ってしまった。
「配信が終わった後たくさんイチャイチャしましょう。ですから頑張ってください」
「……本当?」
「はい」
「分かったわ! お姉さん頑張る!!」
早まったかなと思ったけど真白さんのやる気が出たのなら良しとしよう。
胸の前で握り拳を作った真白さんは配信部屋へと入った。今日も俺に傍に居てほしいらしく、俺はそれに頷いて付いていった。
いつものようにカメラやパソコンなどの機器を確認し、声出しも行って胸の部分のボタンを二つほど外した。ああやってボタンを外すと弾むように揺れるのはここまで一種の芸術のように思えてならない。
「ふふ、たか君はおっぱいが大好きなんだから♪」
どうやらずっと見ていたことに気づかれていたらしい。相変わらず照れてしまう俺と違い、見られたことが嬉しそうな様子の真白さんはその勢いのまま配信を開始するのだった。
「みなさんこんばんは~! 今日はいい夜ですねぇ!!」
:こんばんは!
:テンション高い!
:何か良い事でもあった?
:おっぱい
:初見です。凄いおっぱいですね
:これは……まさか彼氏か!?
:マジで? 俺死ぬわ
:俺も死ぬわ
「ふふふ♪ 誰でも嬉しいことがあればテンション高くなるものです。何かあったとだけ思っていただければ幸いです」
リスナーのみんながすぐに気付いたように、本当に今日の真白さんのテンションは高かった。声の上擦り具合からもそれは良く分かるくらいだし。果たして真白さんに何があったのか、それを聞く声は多かったけど真白さんは核心的なことは口にしなかった。
「……ふふ♪」
配信の合間合間にチラチラと俺を見ては微笑んでいるのだが、それも時にリスナーの人にどうしたのかと聞かれたりしている。真白さんがヘマをしない限りはバレることはない。けれどこれはこれで何というかヒヤヒヤする。
とはいえ、真白さんが楽しそうに配信をしているのと同時に俺も同じように真白さんの配信を楽しんでいるのだ。
:2000¥ まだ小さい甥っ子がマシロさんにハマりそうで困っています
「2000円ありがとう♪ そうねぇ、もっともっと私の動画を見せてあげて? それでその子もファンになってくれると嬉しいわ♪」
:小さい子を引き込むなww
:将来歪むぞ
:こうして小さい頃からマシロのおっぱいに夢中になるのか……
:今からでも遅くないから絶対に見せるなww
「ダメよ、たっくさん私の動画を見せなさい。そうして沼に……こほん、尊い一人のファンが増えるのいいことじゃない」
:沼って言ったやん
:沼にハマるのは俺らだけでいいんや
:10000¥ 犠牲者は俺たちだけでいい
:50000¥ マシロおおおおおおおおおおおおおおお
:将来こうなってもいいのか!?
:親のクレカ使いだすぞやめさせておけ!!!
……色々カオスだな。
でも、確かに幼い子に真白さんの配信は少し刺激が強くないか? ワイプに映る大きな胸もそうだけど、ASMRの生配信とか本当にヤバいからな。それは俺を含めリスナーのみんなが分かっていることだ。
「それは確かにダメね……じゃあそんなことにならないように親御さんと一緒に見たらどう? そうすればそんな心配もないわよ」
:色んな意味でダメだろww
:父親なら喜んで見るかも?
:母親は?
:キレるのでは?
:それは……面白いですねぇ
:おっぱいには逆らえないし見ちゃうんだ。父親は悪くない
:せやせや
分かる。特に興味はなくてもサムネに大きな胸が映っていたら見てしまうのは仕方ない。SNSとかでもそう言った投稿を見つけたら宗二は見てしまうって言ってたしまあそんなものなんだろう。
「ふふ、取り合えずこの話はこの辺で。ちょっと話は変わるけど次の配信くらいで運動したいのよねぇ。ほら、テレビゲームで運動出来るやつあるじゃない? あれをやろうと思っています……ちょっとお腹周りが気になって」
あ、だからあのゲーム真白さんは買ったのか。でも……っと、俺は真白さんの体に目を向けた。胸が大きいのはもちろんなんだけど、別にお腹とか気にするほど出ているとは思わない。むしろ健康的な肉付きに見えるんだけど……どうも真白さんからしたら気になるらしい。
「ほら、こんなに指で摘まめるんですよ?」
:それくらい普通じゃない?
:むしろいい
:抱き心地良さそう
:胸も痩せたらどうするんだ!?
:草
:運動するところ見てみたいね
:揺れるとこ見てみたいね
どうやら明日の生配信はこれで決定したみたいだ。
それからもリスナーとしばらく雑談をして真白さんは配信を終えた。パソコンを電源を切ってすぐに、ソファに寝そべっていた俺の元に駆けてくる。
「終わったわぁ!」
「おっと……」
胸元に飛び込んできた真白さんの様子から、ずっとこうしたかったのかなと思えてしまう。
「よしよし、頑張りましたね」
なんて言ってみると、真白さんは幼い子供のように力強く頷いた。
「うん!!」
その破壊力抜群の笑顔に心臓を撃ち抜かれそうになりつつも、俺は真白さんの頭を撫で続けた。
そして、夜の配信が終わったということは就寝の時間が近いことを意味する。
もう寝ましょうと、手を引かれて寝室に向かった。そのまま二人でベッドに入り今日が終わる……そう思ったが甘かったみたいだ。
「たか君、忘れてないわよね? イチャイチャするって」
「……あ」
すみません、しっかり忘れてました。
真白さんは少し頬を膨らませたものの、すぐに笑みを浮かべて顔を近づけてきた。
「……ちゅ」
触れるだけのキス、だが……そんなキスに気を抜いた俺の隙を突くように唇を割って舌が入ってきた。
「っ!?」
たった数秒の出来事だが、とても長い時間を過ごしたようにも感じた。
顔を離した真白さん、そんな俺たちの間に銀の糸が出来たがすぐに落ちてなくなってしまった。真白さんはペロリと舌を見せ、今までに見せてくれた以上のエッチな表情で呟くのだった。
「さあたか君、思いっきりイチャイチャしましょうか?」
……どうしよう。
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