ようやく、気持ちが通じ合ったお姉さん
「たか君」
「はい」
「私、彼女、あなた、彼氏」
しっかりと確認するように指を向けながら確認する真白さん。とはいえ、ムードも何もない唐突な告白だったけど真白さんの反応を見るに……その、これは良いってことなのだろうか。
「真白さん……その、いいんですか? あんな流れでしたけど」
これで嫌だと言われたら泣くかもしれない。けれど、そんな俺の不安をこれでもかと吹き飛ばすようにブンブンと凄い勢いで真白さんは頷いた。
「もちろんよ! ……あぁでも、これって本当に現実なのかしら。実は夢で、目が覚めたら何もないなんてことに――」
あくまでこれを夢と口にする真白さんの体を思いっきり抱きしめた。いつもは絶対に聞くことがないような可愛らしい悲鳴が上げた真白さんだが、俺の体から感じる温もりでようやくこれが現実だと実感してくれたみたいだ。
「真白さん……好きです」
もう一度、腕の中に居る彼女にそう伝えた。
一瞬体を震わせ、ゆっくりと顔を上に上げてくれた。頬を真っ赤に染めながらもしっかりと俺を見つめ返すその綺麗な瞳に見惚れそうになる。
「傍で笑ってくれるあなたが好きです。いつも俺を幸せな気持ちにさせてくれるあなたが好きです。あなたの笑顔に、温もりに、優しさに俺は何度も助けられたし力をもらいました」
もちろん、たくさん恥ずかしい目に遭ったようなのだけど……そのスキンシップも含めて真白さんの魅力なのだ。既成事実を作ろうとしたり、これでもかと挑発してくることはあっても……その全てに俺は魅了され、そして彼女に夢中になっていたのも確かなんだ。
そして何より、真白さんの傍に居れることが何よりも幸せなんだ。
「……これから先、あなたを支えさせてくれませんか? もちろんまだ俺は学生で頼りない部分は多くあります。でも、俺頑張ります。真白さんを支えられるように、あなたに傍に居て嬉しいと思われるような男に――」
そこまで言って俺は真白さんに押し倒された。
押し倒されたとはいっても、真白さんも俺の胸元に顔を埋めたままで動かない。しばらくそんな状態が続き、ようやく真白さんは顔を上げた。少しだけ涙目になっていたけど、真白さんは決して泣きはしなかった。
「好き……好きよたか君。本当なら、この感動をもっと時間を掛けて味わうべきなんでしょうけど……確認よたか君!」
「は、はい!」
サッと起き上がった真白さんに腕を引っ張られ俺も起き上がった。
「今日から恋人……ということでいいのよね?」
「はい。お願いします!」
「この先結婚する……ってことでいいのよね?」
「それは……その、そうなれると嬉しいです」
「思う存分エッチとかしてもいいってことよね?」
「……それは……答えにくいですね……」
「ふふ……あははははっ!」
お腹を抱えて笑いだした真白さん、彼女はひとしきり笑った後に両手で俺の手を握り、真っ直ぐに見つめてこう言葉を続けるのだった。
「私も好きよ。愛しているわ――これからよろしくね!」
「あ……はい! よろしくお願いします!」
こうして、俺たちはついに恋人同士になった。
さて、そんな風に新しい一歩を踏み出すことになった俺たちだが……ふと真白さんがこんなことを言った。
「でも私たち特に変わりはなさそうよね。だってこうして正式に付き合う前から色々とイチャイチャしてたわけだし♪」
「確かにそうですね……気持ちの持ちようはかなり変わりましたが」
恋人かそうでないか、その心の持ちようはかなり変わった気がする。別に明確な変化を感じたわけではないけど……何だろう、凄く目の前に居る真白さんが大切な存在に思えてならない。
「真白さん、もう一度抱きしめてもいいですか?」
「……はい。是非お願いします」
「?」
何故かいきなりしおらしくなった真白さんに首を傾げつつ、俺はさっきと同じように真白さんを抱きしめた。相変わらず柔らかさは健在で、抱き心地は正に至高と言ってもいい。それに、やっぱりこうして抱きしめていると温かい気持ちが溢れてくる。
「さっきのたか君……声もそうだけど凄くかっこよかったわ。思わずお姉さんの方が敬語になっちゃうくらいだもの」
「あ、それで……」
「ふふ……あ~幸せだわ。たか君、お姉さん本当にあなたのことが好きなのよ。色んな誘惑をしたし攻め方をしたけど、本当にあなたが欲しかった。あなたが恋人になってくれることを望んでいたの」
「……随分待たせましたよね」
「本当よ!」
でも、そう続けて真白さんは俺にキスをした。
「こうしてたか君と恋人になれた。それだけで満足だわ……あぁいえ、こんなことで満足は出来ないわね! たか君、早速寝室に行きましょう!」
「何をするつもりですか!?」
「何ってナニ以外に何があるのよ!」
どうにか耐えました。
それから少しだけ落ち着いた俺たちはそのままリビングで時間を潰していた。特に何をするでもなく、お互いに抱きしめ合ってずっと……ずっとそのままが続いた。
「でもたか君、お姉さんもう遠慮しないからね?」
「それは……そういうことですよね」
「えぇ、だって恋人だもの。何もおかしなことではないわ」
真白さんの言葉に俺は苦笑する。確かに付き合うことになった以上そういうことをするのは変ではない、けれどやっぱり俺はまだ何かあった時の責任が取れる年齢ではないため足踏みしてしまう。それを伝えると、真白さんは納得してくれた上でこんなことを言った。
「そうよね。別に気にしないでって私はそう言えるけど、それがたか君の考えだものね。私が大丈夫だから気にするな、そう言ってたか君の気持ちを無視することは違うものね」
「……すみません」
そう頭を下げると、真白さんは俺の頭を胸に抱くようにした。いつもいつもこれはされていたことだが、やっぱりこの柔らかさと温もりはクセになりそうな癒しの力がある。
「たか君がお姉さんのことを考えてくれている証だもの、謝る必要なんてなにもないわ。もう焦る必要もないし、たか君はもうお姉さんから逃げられないんだから♪」
確かに逃げられそうにはないな。この人のことを知ってしまっては、どんなことがあっても逃げ出そうとは思えないかもしれない。無限の包容力とも言うべき愛、正直言って真白さんの傍は麻薬のような何かがある。
「でもねたか君、お姉さんのことも考えてくれると嬉しいわ。いつだって私はたか君と愛し合いたいと思っている。もっと深い繋がりが欲しいって思ってるから」
「……はい、分かりました」
「まあ、たか君が我慢できなくなったらそれはそれで仕方ないわよね?」
何だろう、その言葉にはまるで絶対に襲わせてみせるっていう意思を感じさせた。
取り合えずこうしてイチャイチャ……いやもう言葉を濁す必要はないか。真白さんとイチャイチャしていると時間が流れるのは早かった。風呂は済ませたので夕飯の準備に入る。
「一応お母さんたちにも伝えないといけないけど……まあ明日でいいでしょう」
「そうですね……俺も明日でいいかな。今日は色々疲れました」
どんな反応をくれるのか、父さんはともかく母さんは泣いて喜びそうな気がする。それこそ近所迷惑なくらい大声出すんじゃないかな。そんな馬鹿な、そう思われるかもしれないけどうちの母さんはそういう人だから。
「さてと、それじゃあ愛情を込めて美味しい料理を作るとしましょうか」
意気揚々と料理を始めた真白さんを見て俺は本当に嬉しい気持ちになった。いつかこんな日が来てくれればいいと思っていたけど、こんなにも早く訪れるとは思わなかったからだ。
明日から……いや今日からか。きっと色々と変わって行くんだと思う。そんな中でもずっと真白さんに傍に居れるならそれだけで幸せだ。
しかし、色んな意味で俺が真白さんに困らせられるのは必然だったのだろう。早くもそれを俺は寝る前に味わうことになるのだった。
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