色々と暗躍……もとい計画するお姉さん
『今日はちょっとほろ酔い配信ですよ~』
:声がトロンとしてる
:可愛い
:可愛い
:おっぱい見せて
:草
:ワンチャン酔った勢いで見れるのでは
『見せません~! 私のおっぱいを見れるのは将来私と結婚する人だけだから!』
:それは俺だあああああああ
:いいや俺だ!
:俺だよカス共!!
:10000¥俺だからごめんな
:50000¥結婚しよう
:やべえ額来たあああああああ
真白さん大分酔ってるなぁ……まあそれでもやらかしたりするレベルではなく、ちゃんと自制が効くレベルみたいだけど。
『うふふ~、今日はお酒も入ってるけど良い事があったんだよね。そのおかげで私のテンションはヤバいくらい高いんだから~♪』
……本当に大丈夫だよね。
さて、どうしてこんなに真白さんがお酒を飲んだかだけど、どうも今日俺からご飯を一緒にどうですかと誘ったことが嬉しかったらしい。いつもは酒は飲んでも全然なのだが、今日はビールを結構飲んでしまったためこんな風になってしまった。
『大丈夫だよ。私は大丈夫だから安心して』
……そうだよな。真白さんは大丈夫だきっと。
:今の優しい声いいな
:お母さんみたいだった
:お姉さんだろうが
:どっちもありだな
:……甘えたい
:甘やかされたい
『私が甘やかしたいのは……うふふ♪ そう言えばみんな、今日の夕方に投稿した動画はどうだった?』
投稿した動画というと耳かき&耳舐め動画のことだろう。動画の評価は圧倒的に高評価が大半を占め、SNSでの投稿を知らせる呟きにもものすごい数のハートが付いていた。それだけ色んな人が見たってことだろうけど……コメント欄の流れを見る限りかなり好評だったみたいだ。
『今まで結構ASMR動画出したけど、あれはかなり渾身の出来だと思うんだよ。凄く心を込めて、本当にその場に相手が居るような感じだったでしょ?』
:確かにやばかった
:物音とか凄いリアルだったし
:10000¥本当に耳が幸せだったありがとう
:脳みそがおかしくなりました責任取って
それからもあの動画が良かったと伝えてくるコメントが多かった。真白さんもいつもより機嫌が良いということもあって、積極的にコメントを拾って視聴者の人たちと交流をしていた。
真白さんのコメント欄はあまり荒らしが現れることもなく平和なのも見ている側としては有難いことだ。まあ現れたとしても真白さんは黙ってブロックしていくので視聴者が困ることはないのだが。
「……さてと、少し将来を考えるとするか」
もうすぐ夏ということもあり、高校三年の俺はそろそろ進路のことを考えてもおかしくはない。就職するか大学に進学するか……はたまたそのどれでもない道を取るかなんだけど、俺は少し迷っている。
『私としては真白を支えてくれると嬉しいけど……それを決めるのは隆久君よ。あなたの将来のことだから、しっかり自分で考えて答えを出すといいわ』
以前真白さんのお母さんに言われた言葉だ。既に配信者として成功している真白さんの収入は安定しており、今俺は機材の手入れなどを手伝っているが……それも含めてこれから色々と手を伸ばそうと考えた時、真白さんを支えていくことを仕事としてすればどうかと言われたこともあった。
真白さんは機材の手入れなどを俺がしてくれるから仕事ができるんだと言ってくれるけど、何というかそれでいいのかって思っちゃうんだよな。
「……贅沢な悩みだよ本当に」
機材の手入れ、動画作成の手伝い、それはもう二人三脚みたいなものだ。俺との時間を大切にしたい、それだけを真白さんは求めているから事務所に所属もしないし編集者を雇うこともしない。とにかく彼女は俺との時間を大切にしてくれていた。
「……うん?」
っと、そこでちょうど俺のスマホが震えた。電話が掛かってきたようで、相手の名前は“フィリア”さんと出ていた。
「もしもし」
『もしもしたか君? こんばんは~♪』
おっとりとした喋り方、今こうして電話を掛けてきたこの人こそ真白さんの母親であるフィリアさんだ。こうして俺が真白さんと接している以上、その母親と連絡先を交換しているのは別に変なことではない。こんな感じに唐突に電話をしてくることは結構あることだしな。
「こんばんはです。どうしたんですか?」
『今ね、私の方も真白の配信見てたの。そしたらお酒も入っててテンションも高いじゃない? あ、これはたか君が何かしたのかなぁって』
「……実は」
まあ別にいいか、俺は素直に寂しかったことを伝えるとフィリアさんはなるほどねと納得した様子だった。
『あの子からしたら凄く嬉しかったでしょうね。ふふ、聞いてるこっちでも微笑ましく思ってしまうくらいだから』
「……恥ずかしいですねこれ」
それなりに親しい仲だからこそ遠慮のない話題でも話すことが出来る。しかしやっぱり恥ずかしいものは恥ずかしかった。
『でも、そうやって娘を支えてくれる存在が傍に居るのはこちらとしても凄く安心するのよ。夫とも話しているけど、たか君がもし良かったらこれからも……ってね』
「……そうですか」
ちょうど今悩んでいたというか、考えていた話題の一つだなこれは。俺の様子からも今ので何を考えているのか察したらしく、フィリアさんはとても優しい声音で語り掛けてくれた。
『まだ高校生だもの、来年には卒業とはいえまだまだ時間は……人によっては少ないって言うかもしれないけど、考える時間はあると思うわ。その上で答えを出して、自分が満足する進路を決めるといいと思うわよ』
「そう……ですね。焦らずに自分と相談してみます」
『うん! それでいいと思うわ。あ、そうだたか君。夏休みなんだけど――』
それからフィリアさんとしばらく話し込み、お互いに凄く満足した段階で電話は切れた。真白さんの母親ということもあるし、頼れる年上ということで本当に話していて気持ちが楽になるのを感じた。こうして気持ちを落ち着かせてくれる安心感は真白さんと似た部分がある。
「……って、なんか眠くなってきたな」
安心したからかは分からないが、急激に眠たくなってきた。真白さんはまだ配信しているけど……あぁ駄目だ。我慢できそうにない。俺はスマホで真白さんの配信を流しながら、気づけば眠りに就くのだった。
「終わったわぁ。あぁ肩が凝るわね」
それからしばらくして、配信を終えた真白が部屋から出てきた。配信でも言っていたように酒が入っているのもあって気分が良く、その高揚は今でも消えてはいない。そんな真白だが、リビングに入った時にソファで眠る隆久を見つけた。
「あら、寝てたんだ」
配信中寝ていたのかな、そんな気持ちは一切なかった。そんなことを考える暇もなく、隆久の寝顔に心を撃ち抜かれてしまったからである。そんなものは真白からすれば日常茶飯事で、隆久の行動一つ一つに一喜一憂するのだが……まあそれは本人も理解していることだ。
「よいしょっと」
隆久の隣に腰を下ろし、背もたれに背中を引っ付けて眠る彼を起こさないように膝に寝かせた。これだけ体が動けば目を覚ますのは当然なのだが、長年の研究により隆久が起きない動かし方を真白は熟知していた。
膝枕の形になり、隆久の頭を優しく撫で……少しだけ真白は不満を露わにした。隆久にではなく自身の胸にである。
「……見えないわね」
大きく盛り上がるような二つの膨らみ、そのせいで膝枕している隆久の顔が見えづらいのだ。集客力に関しては無類の優秀さを誇る存在だが、こういう時に限っては邪魔に思えてしまう。
まあそれでも、この大きな胸を魅力の一つとして隆久が喜んでくれるので真白にとってはそれだけで嬉しかった。隆久が真白という存在に夢中になってくれれば他には何も要らないのだから。
「たか君が将来のために一人暮らしをしたいって気持ちになったのは都合が良かったわね。たか君のお父さまとお母さまに協力を取り付けるの頑張ったんだから」
隆久の頭、頬、そして唇を撫でながら真白はそう言った。それを聞けばどういうことかと隆久は疑問に思うだろう、しかし隆久は寝てしまっており聞いてはいない。だからこそそこに続く真実を知るのはまだ先になりそうだ。
「あ~あ、早く結婚できないかなぁ」
切なそうに、けれども絶対に逃がさないという意思を感じさせる言葉だ。隆久を繋ぎ止めるために色々なことを講じてきたが、それはおふざけなどではなく本気で隆久を求めているからだ。
いずれ隆久と一緒になった時に困らないために蓄えにはかなり余裕がある。その内隆久に使ってほしいと彼専用にするための口座も作っており、そちらにもかなりのお金が入金されていた。
それは一重に今こうやって配信作業を出来ているのは隆久の協力もあり、毎日気持ちよく配信が出来ているのは隆久のおかげと真白は思っているからだ。機材の手入れや時折の編集手伝い、そして真白のやる気をこれでもかと引き出す隆久の存在……その全てへの対価でもあった。
「……たか君と配信したいなぁ」
ある一つの願望が口から漏れた。
ゲームをしながら、或いは他のことでもいいが配信作業はもはや日常の一幕である。楽しんでやっているし、この先やめることはないだろう。それでも、隆久とそういう関係になったら今のチャンネルとは別にチャンネルを作ろうと考えている。隆久とのラブラブな生活を届けるチャンネルだ。
「……ふふ、楽しそう」
その日が来ることを願って、真白はずっと隆久が目を覚ますまで頭を撫で続けるのだった。
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