本当にえちえちなお姉さん
「何だそうだったの! お姉さん安心したわぁ!」
「……そですか」
今日学校でつい女の子とぶつかる瞬間があったのだ。もしあの子が性格の悪い子とかなら舌打ちでもされて仲間内に知られるようなことになったとは思うけど、心優しい子で助かった。
とまあそんなことがあって……俺自身では分からなかったけど真白さんは匂いを感じたんだと思う。というか何だ匂いって、改めて考えてみるとどうなってんだその嗅覚は。
「……ふむ」
真白さんに気づかれない範囲で俺は少し視線を逸らした。今俺は真白さんと向かい合って一つの机を囲んで夕飯を食べている。相変わらずの美味しい料理に天にも昇りそうな気分である……しかし、そんな俺の視線の先には常に机に乗るようにしている大きな膨らみが見えていた。
確か三桁は行っているとか聞いたけど、その重さを一身にこの机が受け止めているということだ。
「……ふふ♪」
あ、マズい。そう思った瞬間には時すでに遅しだ。気づかれてないと思っていたけどどうやら真白さんは気づいていたらしい。顔を上げると真白さんはニコッと微笑みながら、人差し指で自分の胸を触るように突く。
「ここがそんなに気になるかしら? って、男の子だし当然よね。まあそう見せてるんだけど」
「……………」
絶対狙っているなとは思ったよ。けどいざそれを指摘されると恥ずかしい。普通なら女性はこうやって胸に目が向けられるのは嫌うはずだ。だが真白さんとしてはやっぱり写真も撮ってるし、配信にも谷間を出しているからか慣れている余裕が垣間見えた。
「SNSや配信はあくまで人を釣る道具に過ぎない、この大きい胸はそういうものだと割り切ってるわ。でもね?」
そこで一旦言葉を切り、真白さんは俺の目を見てこう言葉を続けた。
「たか君は別よ? プライベートで触りたいならいつでもいいわ。何ならたか君が持つ性欲全てをぶつけてくれてもいいの。私にはその覚悟があるし、たか君を養っていけるお金もあるんだから♪」
「……………」
本当に、どうして真白さんからこんなに好感度というか、全幅の信頼を寄せられているのかが俺には分からない。俺より三つ上の21歳、大人の真白さんだからこそまだ高校生の俺を揶揄っているのかとも思ったが、そこに悪意はいつだってない……思えばここに引っ越して来てちょっと話す機会があって……それから本当に良くしてくれるんだよな。
「ねえ……たか君」
「……っ!?」
なんてことを考えていたせいか、いつの間にか傍に来ていた真白さんに気づかなかった。下唇を舐めるような仕草、本当にこの人はこっちが必死に耐えているのに理性を粉々にしようとしてくる。
「あの女の匂いを消すためにも、私が上書きしなくちゃね」
そう言って柔らかい肢体をこれでもかと擦りつけてくる。文字通りマーキングのような行為だ。こうやって頭では色々考えても、やはり俺も男ということでこんなことをされるのは嫌ではない……何だろう、段々真白さんに染まってきている気がして俺自身怖くなってきた。
「真白さん、美味しい料理が食べられないので……」
「……あら私ったら。そうよね、冷えてしまったら美味しくなくなるものね!」
サッと体を離した真白さんは再び対面に座った。ついでに大きなお胸様も机に着陸するのだった。
食べかけだったハンバーグを口に運ぼうとして、そこで真白さんはそう言えばと再び声を上げた。
「たか君、お金とかは大丈夫?」
お金……つまり生活費かな。それなら問題はない、ちゃんと毎月家族から振り込まれているからだ。足りなかったら言ってくれとも言われてるし、お金に関しては真白さんが心配するほどじゃない。
「違うわよ。生活費は大丈夫かもしれないけど、趣味とかに使うお金は?」
「……あぁ」
ただでさえそこそこ高いマンションを借りてもらったのもあって、生活費以外は可能な限り送ってもらうのはやめている。それでも少しは友達との時間を大切にしろと多めに送られてはいるけど、手を付けずに返すことも多かった。それを伝えると真白さんは分かりやすく溜息を吐いた。
「あのねたか君、学生のうちじゃないと出来ないことも多いのよ? そりゃあもう来年には卒業だけど、しっかり思い出は作らないと――女友達は抜きにしてね」
「あ、はい」
最後のギロッとした目につい頷いてしまった。けどそっかぁ、まだ夏前だけどあと少しで卒業なんだよな。進路も決めないといけないわけだが、真白さんから夫に永久就職しろって言われてるけどそれはそれでどうなのって話だ……魅力的だけど。
「お金に困ったら言ってね? 月100万使いたいとかならちょっと厳しいけど10万とか20万なら全然余裕だから」
「……やっぱり凄い儲けてるんだね」
動画サイト……フォーチューブの広告収入だけでもかなりの額だけど、写真を投稿する別のサイトにも所謂投げ銭機能は備わっている。一度どれだけの額が入ってくるのか通帳を興味本位で見せてもらったことがあったけど凄まじい金額だった。
「今日の配信の投げ銭だけでも合計15万くらいもらったし、全然大丈夫だからいつでも言ってちょうだい」
「……分かりました」
分かりました、そう言ってお金を貸してくださいって言うことはないと思う。まだ学生の身だし、目の前に大金があったら逆に怖くなってしまうからな。
というか、今の段階でこれだけ人気だが実は真白さんはこの活動を学生の頃からやっていたらしい。その時から学生には不相応なほどのお金が入っていたそうだ。確定申告やら何やらがとても大変だったと笑ってたっけか。
「ご馳走様でした。今日も最高に美味しかったです!」
「……っ! その笑顔! 私も悶え殺す気なのたか君は!」
えぇ……くねくねと体を動かす真白さんに俺は少し引いてしまう。それからお皿を一緒に洗い、テレビでも見ながら雑談に興じていた。あんな風に過激なことをしてくる真白さんだけど、こうやって俺と話をするだけなのも好きなのかまるでお姉さんのように接してくれた。
「そうだたか君、ちょっと待っててね」
「……あ……はい」
このタイミングで待ってて、その言葉に俺は思い当たることがあってつい返事が遅くなってしまった。悪戯が成功した子供みたいに舌をペロッと出した真白さんは衣装部屋に入って行った。
色んな服装の写真を撮ることもあるため、真白さんは部屋の一室を完全な衣装部屋にしている。見せてもらったけどたぶんそうだな、100着くらいはあるんじゃないかなと思う。
「お待たせたか君」
「……っ」
次に姿を見せた真白さんは……何かのアニメのキャラなのか、胸元だけでなくおへその辺りも丸見えな衣装を着ていた。思わず目を逸らそうになったが、真白さんがはいと俺にスマホを差し出した……つまり、撮れってことだ。
「この役目、嬉しいのか大変なのか分からなくなりそう」
「ふふ、眼福でしょ?」
そう言って谷間を強調した真白さん、俺はとにかく無心になりながら彼女の姿を写真に収めていく。何枚か取った後、ビデオに変えてと言われたので、俺は台を用意して揺れないようにスマホから手を離した。
「いずれ夫兼マネージャーになってもらうんだからちゃんと見てちょうだい」
録画されていることを確認し、真白さんは胸を持ち上げてみたり、それから落とすようにたゆんと揺らしたりする瞬間を動画に収めた。それから顔が映ってないこと、特定に繋がるものがないかを確認してSNSに投稿した。
「眠るみんなに癒しをあげる、なんて感じで投稿してみたわ」
「……確かに癒しですね」
「でしょう?」
こういう時、俺も男なんだなって思うよ心の底から。俺はスマホを手に取って真白さんのアカウントに飛ぶ。すると物凄い速さでリプとハートが付いていった。パッと流し見すると、当然触りたいとか彼氏居るのとか、お金いくらでも払うのでオフで会いましょうとかそんなものまで出てくる。
「誰が会うかっての。それに彼氏は居るに決まってるでしょうが。ねえたか君」
「……俺ですか?」
「うん」
そんな真顔で頷かないでください。
けど、真白さんだけじゃなくてこんな風に活動している人は多い。ある程度人気のある配信者や、今巷を賑わせているVtuberもそうだけど、結構な数のガチ恋勢と言われている人たちを抱えているわけだ。
「……血の雨が降るんだろうなぁ」
何かの間違いで真白さんの傍に俺のような人間が居ると知られたら……割とマジで殺されるんじゃないかとビクビクしている。
学校で同じクラスの友人も真白さんの大ファンだし……絶対にバレないように細心の注意を払わないと。頑張れ俺!!
「ふふ、こうやってたか君を胸に抱くのは幸せねぇ」
「……頑張るからな俺」
大きすぎて柔らかな二つの膨らみに包まれながら、俺は真白さんを見てそう願う男たちの欲望を独り占めにするのだった。
【あとがき】
二話目ですが、まずはこの作品を読んでいただきありがとうございます。
最初から最後までこんな感じで終わっていくと思いますので、どうかこれからもお気軽に読んでくださるとありがたいです。
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