雨の小人と雪の小人

ゆりえる

     

「ふぁ~あ」


 雨の小人が目覚めた。


「あふあふぁ~」


 雪の小人も目覚めた。


「僕が先に起きたから、今日は雨降りだね!」


「もう寒いし、そろそろ雪を降らせようよ~!」


 雪の小人が地団駄踏みしながら駄々をこねた。


「仕方ないな~、いつものして、結果に文句は無しだよ!」


「うん、いいよ」


雨の小人と雪の小人はジャンケンした。


「わ~い、勝った~!!今日は、初雪だよ~!!」


「僕は、もう一度、寝直そうっと」


 雨の小人は言うが早いか、すぐに寝息を立てていた。


 今年初めての雪降らしのお仕事に、雪の小人はさっきまでの駄々っ子とは大違いになり、職人技を発揮する。


 まずは、ダーツで目的地を決めてから、瞬時にテレポーテーション。

 今回は北海道の日本海側を中心に初雪を降らせる事になった。


 分身の術で、雪の小人は1億体に分かれた。

 地上に降りて、彼らは一斉にステップし、人間からは見えない足跡を残した。

 その足跡を目がけ、天空の雪降らし隊が寒気を送ると、その寒気は、地表から近くなるにつれ、結晶混じりの綿のような大粒の雪に変わり、雪の小人がステップした足跡を正確に辿ってゆき、瞬く間に銀世界となった。


 翌朝、所々、野山にまだ白い部分を残しているうちに、まだ興奮状態の抜けきらない雪の小人が目覚め、昨日の自分の仕事ぶりがどうなったか北海道の上空高くテレポーテーションし、見下ろした。


「ふぁ~あ、あれっ、雪の小人君?」


 後から目覚めた、雨の小人が、雪の小人を探す。


「昨日は楽しかったよ~!でも、ちょっと疲れたから、今日は、雨の小人君の番でもいいよ~」


「嬉しいけど、せっかく、まだ雪も残っているし......そうだ、たまには一緒にどう?」


 雨の小人から誘って来たのは、『みぞれ』。

 『みぞれ』だけは、彼ら単独では出来ず、2人の共同作業となる。


 「いいね~、久しぶりに君と踊りたかった!」


 2人でダーツし、『みぞれ』の北限と南限を決める。

 雪の小人が北限用のダーツを、雨の小人が南限用のダーツで、『みぞれ』の範囲を決めた。

 『みぞれ』の範囲は、東北から関東の太平洋側に決まった。


 彼らは、それぞれ1億体に分身し、ペアでステップを踏み、足跡を残し、そこに湿った『みぞれ』を降らせた。

 単独作業も大好きだが、彼らは共同作業の『みぞれ』の方がもっと楽しいらしく、人間からは見えない足跡にさえ、彼らが楽しんだ余韻が残されていた。


 この突然の湿った『みぞれ』のせいで、地上では、人々も車も飛行機もてんやわんやになっていたが、それを見下ろすのも、また彼らの余興だった。



 【 完 】


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