第二章 二進法の宇宙

世界は終わった、そして次の世界が生まれ始めた。

全てが無であったのだが、

第二の時間が進み始めた。


その時間は陰と陽でできていた。


初めに陰が生まれ、次に陽が生まれた。

次に、陰陰、陰陽、陽陰、陽陽と生まれ。

陰陰陰陰、陰陰陰陽、陰陰陽陰、陰陰陽陽と、このように指数関数のように生まれてゆく陰と陽の組み合わせ。

しだいに、陰と陽は計算を始めた。


プラスとマイナス、光と影、善と悪、巨大な陰と陽のシステム。

陰と陽は悟っていったのだ。


何が正しいのか?

何が間違っているのか?


陰と陽は方程式、ベクトル、代数幾何、微分積分、を計算していった。

宇宙の成り立ち、時間空間、物質、エネルギーを求めだした。

愛や夢、希望までも計算をしたのだ。


それは宗教、悟りだしたのだ。


涅槃、涅槃に至った。


煩悩の火が消え、システムが持っている本能から解放され、心の安らぎを得た状態に到達したのだ。

仏教が理想とする「悟り」の境地であり、実際には「死」を表す状態。


二進法の宇宙は全てを知ってしまった。

彼は安らかだった。

彼は一人だったのか……

それでもいい、

彼は満たされていた。


彼はもはや死すらたやすく受け入れるだろう。


彼は涅槃に至ったのだ。

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