水色の薄手のカーディガン

朝起きると知らないベッドに寝ている。

眩しい光が部屋の中に入りこんでいるせいで

まわりがよく見えない。

ここはどこなのか。

突然僕の前を何かが横切る。

少しだけ記憶がよみがえってくる。

そう僕はあの子とこのベッドで寝ていたんだ。

あの子はちょうど下着を穿くところ。

「ねえ、ご飯食べに行きましょう」

あの子の声が聞こえた。

起き上がって服を着ようとしたけれど、どこにあるのか。

僕はあたりをキョロキョロと見まわす。

あの子が正面の壁のほうを指さしている。

僕のスーツがハンガーにかかっていた。

あの子はすっかり身支度をすませたようだけど

どうして?昨日と恰好がちがうじゃない。

あのときと同じうすいピンクのTシャツに赤いチェックのスカート。

「寒くないの」

「大丈夫。カーディガンがあるから」

あの子はそう言って僕に水色の薄手のカーディガンを見せた。

いや、そんなことじゃないんだ。

「ねえ、きのうの服はどうしたの」

「ずっとこの格好だよ」

あの子が首をかしげながら僕に言う。

「先に出てるね」

ちょっと待ってよ。置いていかれたら僕は迷子になっちゃう。

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