月が見えてくる頃

いつのまにこんなに暗くなったんだろう。

食事をしているときはわからなかった。

普通にグリルしたチキンを食べただけ。

「ハーブの香りがするね」とあの子は言ったけれど

僕にはただ美味しいとしか。

女の子はちぎったロールパンをソースにつけて食べている。

僕はライスがよかったんだけれど。お任せだから。

僕も女の子の真似をしてパンをソースにつけて食べた。

「美味しいね」思わずそう言ってしまう。

女の子はぼくを見て微笑む。

そんなに時間はたっていないはずだった。

また日食なのか。そんなはずがないと思いながら空を仰いだ。

星が光っていた。

「ちょっと寒いね」僕が女の子に言う。

僕と女の子は来た道を歩いて戻っていく。

永遠に続く暗い道なのか。道を照らす街灯がずっと先までつづいていた。

「そろそろ月が見えてくる頃ですよ」

僕は昔見た映画を思い出した。何の映画だったかは覚えていないけれど。

それとも小説かなあ。

僕の前を歩いていた女の子が急に立ち止まり

少し考えているようなそぶりをした後

僕の手を引いて道の脇の木々の間に分け入っていく。

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