第18話 安全確実に
翌日。
身分証を受け取りに冒険者ギルドへ向かった。
さすがに朝一ともなれば、小さな町でもそれなりに並ぶようだ。
ちらちらとこちらに視線を向ける冒険者たちに思うところはある。
騒ぎを起こしたんだから仕方ないが、気にならないと言えば嘘になる。
まぁ、敵対心は込められてないから別にいいんだが、奇異の目を向けられるのはあまりいい気分がしなかった。
10分ほどで俺の順番がくる。
受付にいたユーリアさんは笑顔で対応してくれた。
「こちらが冒険者カードになります。
先日お伝えしましたが、身分を示すものになっていますので、紛失等なさいませんようお気をつけください」
「あぁ、わかった」
冒険者カードを受け取る。
銅色の小さなプレートに名前と年齢、個人ランクが記載されていた。
冒険者ランクはカードの色で判別できるようになっている。
登録時はいちばん下のFから始まる。
依頼達成数や冒険者の能力、ギルドからの信頼で上昇する。
カードの色は銅、青銅、鉄、銀、金、そしてランクAの白金となる。
Cである銀ランクになると中級者、金のランクBで上級者と扱われるそうだ。
中でも白金ランクのAに到達した冒険者は達人の領域になると、ユーリアさんは少しだけ興奮気味に説明してくれた。
このランクはかなり特別で、依頼達成率や本人の技量だけじゃなく、内面的な人となりも重要視されるのだとか。
だがそんなランクの、さらに上の領域が存在するようだ。
「……ランクS。
世界でもたった5人しか認められていない最高の冒険者で、多くの人から尊敬される英雄たちです」
カードの色も黒で、このランクに関して詐称した場合は厳罰に処される。
それだけの意味を持つ英雄たちが存在するのならば、俺が呼ばれることはなかったんじゃないだろうかと本気で思えた。
しかし事はそう単純な話ではなかった。
ましてや、非常に厄介な状況だと改めさせられた。
かつて10英雄と呼ばれた世界最高のランクS冒険者たちが魔王討伐に向かったが、誰ひとりとして帰って来なかったそうだ。
現在では世界に5名しかいないが、残念ながら魔王を倒せるほどの強さがないと判断されているのが現実らしい。
これが伝説上の話でないのなら、つまりは異世界人の"勇者"でなければ魔王の討伐は不可能だと言われているようなものだ。
一条にそれを叶えられるかは本人の努力次第だろうが、無能扱いされた俺の攻撃が人類の敵に通用するとは限らない。
いても邪魔にしかならないことも考えられるし、今は関わらないほうが賢明か。
「何か依頼を受けたいんだが、初心者におすすめの仕事はあるか?」
「もちろんございますよ。
ハルト様はチームを組んでいませんので、森へ向かうのは控えたほうが安全かと思います。
少々厄介な盗賊が潜伏していると噂されていますが、現在確認中です。
情報が精査されるまでは極力避けるべきだと判断します。
草原での薬草採取依頼などはいかがでしょうか」
「薬草、か。
俺は知識に疎いんだが、素人でも判断できるものなのか?」
ハーブに詳しいわけでもないし、薬草なのか雑草なのかはもちろん、俺は毒草すら見分けがつかない。
色々と問題がありそうな気がするんだが、どうやらわりと適当でいいらしい。
持ち込んだ薬草の選別もギルドでした上で計算してくれるのだとか。
「ある程度の知識をお教えすることも可能ですが、触れただけでも危険な毒草はリュオマ草原に生えていません。
さすがに雑草ですと買取できませんが、薬草と見分けるコツもありますので初心者さんでも十分に稼げると思いますよ」
採集用の籠とナイフも、依頼を受理した冒険者には貸し出してもらえるようだ。
それだけ多くの薬草が必要なのは分かるが、どうにもこの世界の冒険者は魔物を狩ることに注目が集まる傾向が強く、薬草採取などは好まれないと彼女は話した。
初心者に至れり尽くせりと思える採集依頼でも受ける冒険者がいないのは、かなりの問題だと思えた。
「依頼料も魔物討伐より少なくなります。
自由な冒険者になってまで薬草も何も、なんて思われてしまいがちなんですよ。
ですがその分、安全確実に安定した収入が見込めますので冒険者ギルドとしてはおススメできますし、何よりも依頼受注者が少ないので薬草の取り合いになることもございません。
野草と薬草の判別がつくようになれば何かと便利ですし、まずはお散歩がてらに採集してはいかがでしょうか」
なるほど。
色々と問題発言はあったが、確かにその通りだな。
薬の調合ができなくても頭痛や吐き気、腹痛や発熱を緩和する薬草も生えているらしいから、まずはそういったことを学ぶのもいいかもしれない。
「魔物の討伐をした場合は、最低限の剥ぎ取りをおススメします。
ホーンラビットなら角、ボアなら牙、ディアなら角ですね。
残念ながらゴブリンは希少なアイテムを持っていたとの報告はこれまでされていませんし、素材としても使えないのでそのままで大丈夫ですよ」
「買取はここでしてもらえるのか?」
「はい。
素材をお持ちいただければ鑑定の後、代金をお支払いします」
「そうか。
それじゃあ、採取依頼を受けるよ」
「ありがとうございます。
それではこちらにどうぞ」
受付を別の職員に任せたユーリアさんは、別室で薬草の見分け方について詳しく教えてくれた。
中でも興味深かったのは、リュオマ草原は薬草の宝庫だということか。
採取する冒険者が少ないことや魔物も食べないこともあって、相当量の薬草が生えているようだ。
一般的な病気に効果があるものだけじゃなく、日用品に使えるものも多いために依頼書を欠かすことなく貼り出しているそうだが、ある程度経験を積んだ冒険者は見向きもしないらしい。
値段もある程度聞いてみると、魔物討伐依頼ほどじゃないにしても、やはりユーリアさんの言うように安定した収入が見込めそうだ。
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