神様と信者
眠
神様と信者
寝床から起き、朝日を浴びに行こうと外に出ると足元に小さな生き物が二ついた。おそらく、人間の幼体だろう。いつもなら白くひらひらした皮のようなものを纏った人間が、私が外を出歩く度についてくるのだが。どうやら世代交代の時期が来たらしい。こうも小さいと踏んづけてしまわないか心配になる。
私の叔父から聞いた話によると人間が我々と共生するのはそう珍しいことではないらしい。こちらが危害を加えたりしない限りは温厚な性格をしていて、たまに周囲で喚いたりするのが鬱陶しいというのはあるが、私の寝床から古い毛を回収して綺麗にしてくれたり食物をくれたりと、便利な一面もある。但し凶暴な一面もあり、彼らの仲間、特に幼体を少しでも傷つけたりすると途端に目の色を変え、集団で襲いかかってくるらしい。酷い場合は家に火をつけられることもあるから気をつけろと叔父は言っていた。あまり足元でうろうろしないでほしいものだ、と私は人間の幼体をちらと見つめる。
近くの川で水を浴び家に戻るまでの間、人間の幼体はずっと私をじろじろと眺めながら足元を歩き回った。成体と違って丸く、うっかり蹴飛ばしでもすればころころと転がっていきそうだ。家まで着くと二つの人間が目を丸くして立っていた。ここ最近、私と共生していた個体だ。
私と共生する個体はどういうわけかいつも二つだ。しばらく共生すると肌のしわが増え、動きが悪くなってきたな、と思う頃に別の個体がやってくる。今回は世代交代が早いなと思ったら、幼体が勝手に私のところに来ただけらしい。成体は何か声を上げるとこちらに駆け寄り、さっと幼体を抱き上げた。そして成体は警戒するような、不安がるような視線を私に向け、何度も頭を下げた。たまに成体たちが見せる動きだ。ことあるごとに彼らは頭を低くするので、おそらくその動きには何か特別な意味があるのだろう。
ともあれ幼体を踏んづけてしまわずにすんで良かった。私は安堵し、寝床へと戻った。
神様と信者 眠 @nemuru
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