第5話
夜の帳が下り人通りも明かりも無くなった頃、手に持つスマホが明かりを灯す。
と同時に着信音が響く。
プルルルル
プルルルル
スマホが鳴った。
え?
スマホが鳴ってる。
人工衛星どころか基地局さえ無さそうな科学と無縁そうな世界でスマホが鳴ってる?
私は慌ててスマホを耳に当てた。
「もしもし!」
「私カナタ。今あなたのお家の前に居るの」
「なんでだよ!私は今、絶賛迷子中だよ!」
「私カナタ。今あなたの近くに来てるの」
「良いから早く来なさいよ!」
「私カナタ。今あなたの後ろに…」
「遅いわ!どんだけ待ったと思ってんのよ!」
振り返ると
「案内人の癖に仕事放棄してんじゃないわよ!まったく!」
「あらあらまあまあ!淑女たるもの何時も余裕を持って優雅に立ち振る舞わなくてはいけなくてよ?」
「あのねぇ」
「そ・れ・に!口調も宜しく無くってよ!」
「……はぁ〜、良いから仕事してよ。ギフト設定とやらを説明してくれるんでしょ?」
「そうでした!ウッカリウッカリナリ〜テヘペロ!」
「殴りたい!この笑顔!」
「はい!という訳で」
「どう言う訳よ…」
「実はもう業務営業時間が終了してまして、ご説明はまた次回という事で、お疲れ様でしたぁ〜」
「いや、待ってよ!お疲れ様でしたぁ〜じゃないでしょうが!あ・な・た・が!遅れたせいよね?」
「?」
「いやいや、?じゃないでしょ!貴女が遅れたんだから責任持って処理しなさいよ!」
「??」
「いや、だ・か・ら!」
クソ!あざと可愛い顔して逃れようとすんなし!
絶対に逃さん!
「あのね!」
「何だかよく分からないけど私、もうお
そう言って
「あ、あ、あ、あんの女!訴えてやる!」
夜中の静寂の中に、ただ私の声だけが木霊する。
「やかましい!静かにしろ!」
何処からか叱責の声が私の惨めさを際立たす。
今更、宿屋も探せない時刻と状況で野宿確定な私は途方に暮れるしかなかったのだった。
「お腹すいたんですけど…」
ぐーぐるる
無意識下でも優雅さを…。 no.name @fk2310
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