第4話
気が付くとそこは見知らぬ街の中だった。
「……」
行き交う人々、走り行く馬車。
そして、今まで手を繋いでいた美少女は目の前から居なくなっていた。
「……」
唐突にドスっと肩をぶつけられる。
「ボーと突っ立ってんじゃねぇ!危ねぇな!」
そんな捨て台詞を吐かれて去って行く男からスられた財布をスリ返しつつ流し見していると、周りからも胡乱な目で見てくる人達がチラホラ出てくる。
だけど私は今それ所ではないのだ。
「……」
おい!美少女よ!何故いない?案内人なのに何故いない!!
「ガイドブックも無しに放置されても困るんですけど」
私の異世界での最初の言葉はこれだった。
酷い。
これは、余りに酷くはないか?
案内人なら最後まで案内しろし!
美少女だからって許されると思ってんのか?
私は沸沸と頭に登る血を抑えるように拳を握りしめた。
「とりあえず迷子になったら動かないは鉄則だよね」
余りに人通りが多いので建物の壁に寄りかかり美少女が来るのを待つ。
「何か連絡手段とかないかな?」
考え込んでいると今度はトートバッグごと引ったくろうとする浮浪者の様な格好の子供をヒラリと躱し足を掛けて転ばせる。
「ウゲっ!」
何か足元で呻いていたが頭が連絡手段の方法ばかり考えていたので私は一切気が付かなかった。
「あ、そうだギフトとかポイントとか言ってたしゲームみたいにステータス画面とかあるかも!なら当然ヘルプ機能もあるよね!て言うか小説あるあるじゃん!すぐに思い付けるとか、流石私!天才じゃねぇ?それじゃ早速、ステータスオープン!」
しかし、何も起きない。
「あ、あれ?おかしいな?ステータス!オープン!オープン!あれ?言葉違うのかな?でも私、他に開きかたとか知らないよ〜」
顔を上げると不審者を見るような目でめっちゃ見られていた。
「うぇ( · ᯅ · )」
慌てて私は建物と建物の間の裏路地に入り込み何か持っているものでヒントがないか確認してみた。
トートバッグの中にあるのは財布と定期券とタブレットとスマホに化粧ポーチ、テッシュとウエットテッシュに家の鍵と…
「よう、姉ちゃん、こんな所でなにしてんの?俺たちとどっか遊びにいかねぇ?」
「……」
あ、タブレットとかにステータスデータとかあったり?
「おい!ねーちゃん!何無視かましてんだこら!」
4人組のチャラい野郎の1人が肩に触れようとしてヒラリと躱し回転運動のまま相手の男の後頭部に踵蹴りを食らわせる。
「うがっ!!」
そのまま倒れ込む男。
「てめぇ!糞アマァ!何すんだこら!」
一斉に襲いかかってくる野郎共。
その瞬間、高く飛び上がり2人の男の間に入り込み両足を開きこめかみを蹴りつけ両側の壁にぶち当てる。
そして、怯んだ最後の1人に金的を当てて沈める。
「………」
うめき声が周りから響き渡るが私の耳には入ってこない。
「駄目かぁ〜。ならスマホの方は…」
結局、何も見つけられなかった私は、また初めの場所に戻り、あの美少女が来ないか待つことにした。
そして、その日かの美少女は一向に現れなかった。
美少女様めぇ〜タダでは済まさんからなぁ〜。
覚えていろ〜!!
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