第11話 頼み事
薄暮
理不尽な説教を受けること二時間半。もう六時をまわった頃合いだろうか。
魔女の説教は特に心に響くことはなく、ただただ彼女の美しい顔を眺める時間へと変わった。説教をし終えたというわけではなく、生徒の完全下校ということで中断された。説教の原因ともいえる少女は、途中で退出させられていた。もう怒っているという表情ではなく、不安気ですこし申し訳なさそうな顔をしていた。
完全時刻ギリギリの時間なので、部活生が急いで練習を切り上げていく姿や早く帰れと促されいる生徒もいた。下駄箱の近くに見覚えのある茶髪の少女が注意されそうになっていた。
まずいなと思い。急いで下駄箱に向かった。
~~
「おまたせ、香久山さん。柊先生の頼み事ながかったね」
そう指導に来た先生を牽制するように言った。
「うん。たいへんだったね」
香久山さんも感じ取ってくれたらしい。
「それでは失礼します先生」
そう言い香久山さんと共に学校を後にした。
~~
「わざわざありがとうね、片山君」
「気にしないで。説明していなかったけど、部活に入っていない生徒は基本的に五時半以降学校に残っちゃダメなんだ。もし理由もなく残っていたら五時以降の教室の開放が無くなるんだ。」
「なるほどね~、だから急いできてくれたんだ」
直ぐに会話が途絶え、少し気まずさが出てき始めた。
「ねぇ、片山君。私怒ってないからね?そりゃ寝ている片山君と同じくらいの点数だったのは今でも悔しいし、少しむかつくの」
「そりゃそうだろ。それが普通だよ」
「でもね次はちゃんと勝負してほしいなぁ。多分勝てないだろうけどね」
「…いつかな。今回のことは悪かった一応反省してるつもりだ」
また会話が途切れた。
そういえば、先生のご褒美って何だったんだろう。
「なぁ、香久山さん。先生からの褒美とやらはもらったのか?」
「うん貰ったよ」
「聞いていいか?」
「うん。先生からのご褒美は君を土日の間ただ働きをさせる権利を貰ったよ」
「うん。え?」
この少女が何を言っているのか理解できなかった。人を無償で働かせるなんて横暴じゃないか。いや圧倒的理不尽だ。
「具体的には買い物に付き合ってほしいってところかな」
「なんだよそれ、普通に言えよ普通に」
「荷物持ちもお願いね~」
なんだこの気持ち。これが世に言う憎しみというやつか。
世の男性よ、ここがキレるタイミングだ。
「土日両方買い物に使うのか?」
「ん~片方でいいかな。日曜は君の家におじゃましてもいい?」
「え、なんで?」
「柊先生が片瀬の家にはゲーム・漫画色々あるから好きなのを貰えってさ~」
「理不尽だろ」
あの魔女の前では物を所有する権利すら失ってしまうのか。
なんて理屈。なんて魔女だ。
美人じゃなかったら呪ってたぞ、まったく。
~~
「ここでいいよ。土日開けといてね。よろしく~」
「ほいほい」
「じゃあね~」ニコニコ
やっといつもの笑顔だろうか。
まあ、彼女が少しは元気になってくれたのでいいとするか。
もうこんな時間だな楽にドライカレーにしようかな。
そう思いながら秋は家に向かった。
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