都会のトム&ソーヤ

都会のトム&ソーヤ①

刊行日:2003年10月10日


この作品、今まで読んだことなかったんですよ。

「はやみねかおる先生が好きなら読んでみて!」とは言われていたんですが、今の今まで色々とチャンスを逃してしまいスルーしていました。


しかし!今回の企画は「はやみねかおる、全部読む」です!いいじゃないの、いいじゃないの、全部読んじまおうじゃないの!!ということで、早速電子書籍版をダウンロード!


はやみね先生が描く青春アクション。うーむ、どうなるんだろう……気になりますね。


あ、タイトルは「まちのトム&ソーヤ」なんですね。「とかいの」かと思ってました。このレビューを書く時でもちょいちょい間違えてしまいます。


おそらく……なんですが、「トムソーヤの冒険」を下敷きに都会の片隅で主人公の二人組が大活躍する……!的なお話じゃあないかなと思うんですよね。それでは早速、小ネタを拾いながら行ってみましょう!


□小ネタ


・いきなり、サバイバルものなのこれ?


・セルロイドは燃えやすい。これは有名です。このおかげで最近は殆ど使われなくなっています。作品執筆当時はまだあったのかな。


・タバスコの罠はちょっと容赦なさすぎだと思います。


・創也君、将来的にデスゲームとか主催しそう。


・ショパンのピアノ曲、好きなんですね。


・砦、言ってみれば都会の秘密基地なんですね。


・ワトソンとホームズ、やはり探偵モノで行くのか?


・言われてみれば、この二人ワトソンとホームズの関係っぽいですね。


・映画音楽、いいですよね。他にも映画ネタが出てきていい感じです。


・お婆ちゃん、ARMSのママみたいな感じだな。


・『おおブレネリ』と『ドナドナ』の組み合わせは夢水清志郎シリーズでもでてきましたね。作者のお気に入りなんでしょうか?


・4大ゲーム、これ探偵小説三大奇書とされている、「黒死館殺人事件」「ドグラマグラ」「虚無への供物」からとられていますね。なお、もともとはこれで三大奇書でしたが、「匣の中の失楽」を入れて四大奇書に数えるという考え方もあり、これが4大ゲームの元ネタになっているのでしょう。


・となると、『ルージュ・レーブ』は何が元ネタなんでしょうか……?オリジナル?

→読み終わった後ぐぐってみたら、フランス語で「赤い夢」だそうです。なるほど……


・『栗井栄太』はクリエイターから取られているでしょうし、偽名っぽい。


・一人でゲームを創るのは大変なこと……なんですが、同人ゲーム界隈にはたくさんいるぞ!創也君、D○siteとかで売ってみたらどうだろう?全年齢版の市場も存在するぞい。


・テレビゲームを作るには電力が必要!2003年当時だとそういう認識だったんですかね。今は大麻栽培とかビットコイン採掘とかのほうがデカそうですが……。


・「そう、つまり下水道にいるんだよ!!」は流石に思い過ごしのような気もします(本文でも突っ込まれてるしな!)


・スパイ大作戦は「なおこの〇〇は自動的に消失する」というのがお約束なのです。ビデオテープとかレコードとか。


・だから、お婆ちゃんは何者???


・「なめくじに聞いてみろ」は都筑道夫先生のミステリです。


・毎日半額!そういえば、マクドナルド途中から平日半額をやめて毎日半額になったんですよね。毎日半額だったらそれはすでに定価では……?というツッコミ当時の子どもも感じていましたが、作中でちゃんと拾われています。


・『アメリカン・グラフィティ』から『ロッキー』のサウンドトラックが出てきます。


・登場人物の所で気が付きましたが、夢水清志郎事件ノートの『ハワイ幽霊城の謎』に出てきたクイズ番組って、この『都会のトム&ソーヤ』からのゲストキャラだったんですね。


・ダッジ・モナコ440、気になったのでググってみたら、映画「ブルース・ブラザーズ」に出てきた車だそう。映画ネタだったんですね。


・部下のコードネームがドイツ語読み!中二病満載の良いキャラクターです。


・堀越D、騒ぎが起こるのが好き。というキャラ付けをしっかり行ってますね。


・すっかり忘れていましたけれど、そもそも創也くん、ゲームクリエイターのことを探そうとしてたんでしたっけ。


・クロロホルム、実際はジエチルエーテルの方が麻酔としてはよく使われるようになっている……なんですが、ジエチルエーテルの方は非常に燃えやすく、あと最近規制が厳しくなったのでフィクションでも使い勝手が悪いです。


・気配だけでキザ感を出せる我毛君、何?


・ナプキンの暗号、数字っぽいですね。全部で4パターンしかないので、クイズの番号か。


・携帯電話の液晶をライト代わりに使う。僕らはもうこのやり方に慣れっこですが、携帯電話が出始めの時期(それこそ2003年の中学生で携帯持ってるのは相当お金持ち)だったので、ちょっと目新しい表現です。


・発泡スチロールのケース、割と本気出せば破壊できそうな気もします。爪で掘るんじゃ!ネズミがやっているようにな!!


・謎のクリエーター君、結局謎のまま……ということでこの巻は終了です。


□総評

読む前はですね、都会を舞台にしたトムソーヤみたいな感じなんだろうなぁと思ってました。作者からの巻頭の言葉もそれっぽいですし。


サバイバル知識も「都会でサバイバルしてやるぜ!」という意気込みにあふれていてなるほど、これでトムソーヤの冒険をやってみせるんだな?と思ったのですが、ところがどっこい、ゲーム作成とか、フィジカル最強のお目付け人とか、「トムソーヤにそんな要素あった????」って感じになってきてわからなくなってきました。


あ、でも、下水道の探検はトムソーヤの洞窟探検を都会に置き換えたんだな。って感じがしてほっこりしましたが、要素的にはそれぐらいなんですよね。

てか、主人公二人組、トムとソーヤだと思ってましたけれど、違うんですね。トムは?トムはどこに行ったの?


まあ、ここらへんは結構難しい部分があるのでしょう。トムソーヤの冒険の二人組、トムソーヤとハックルベリー・フィンをそのまま現代に置き換えると、トムはともかく、ハックルベリー・フィンは被虐待児ですからね。(アル中の親父を持つ浮浪児なので)この設定、うまくやればめちゃ面白いものはできるとは思うんですが、色々な展開を考えると無理があったのかなと。(児童相談所はなにやっているの?みたいな部分で現代にそのまま置き換えるのは難しそうです)


最終的に登場したキャラクターは、一部ポンコツ要素が足されたホームズと、サバイバル能力MAXになったワトソンだったわけで、トムソーヤを題材に男の子二人組のコンビを描いてみるか!よーし頑張るぞー!と筆をとった瞬間、窓から入ってきたホームズとワトソンに両腕を掴まれて拉致されて、気がついたらこんなのができてましたってぐらいの勢いを感じます。

「んなこと言ったって、キャラが動いたんだからしょうがねぇだろ!!」という声にならない叫びをキャッチしてしまいました。


さて、今シリーズの要素となっている「ゲーム」なんですが……正直私、はやみね先生はそれほどコンピュータゲームに詳しくないじゃないかなって思うんです。アドベンチャーゲームとかはやっている匂いを感じるんですが、コンピュータ自体に対する言及もビックリするほど少ない。


そして、何よりも「四大ゲーム」なるものの元ネタがゲームでなくて、探偵小説なんですよね。おそらく、はやみね先生、あまり詳しくないゲームについて書くより、自分のバックボーンである探偵小説の方が濃く出てしまったというか。


とはいえ、コンピュータゲームに対して一切知識がないかと言うとそんなことはないと思ってまして、これ二巻目以降読んで気がついたんですが、冒頭に「データを読み込んで下さい」って出るんですよね。これってフロッピーとかの時代のPCゲームな挙動なわけで、(少なくともコンシュマー機ではない)その時代にアドベンチャーゲームを色々プレイしたことがあったのかなと予想してしまいます。


その話はともかく、全般的にこのお話「ゲーム」要素が浮いている感じなんですよね。どちらかというとデスゲームものというか、リアル脱出ゲームみたいな感じですし。


と、いろいろと気になった所で、次巻以降でどうなっていくか、見ていくことにしましょう!果たしてはやみね先生はゲームをどう処理していくするのか?次回をお楽しみに!

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