卒業~開かずの教室を開けるとき~
刊行日:2009年03月14日
ついに、ついに最終巻です。
感慨深い気持ちで、今、端末の画面をスワイプしています。
シリーズ完結まで、15年。長い年月です。
10歳でこのシリーズを手にとった子どもが25歳。子どもだった読者もいつの間にか大人へ。時間の流れに思わず指が止まります。
夢水清志郎シリーズが完結したことは知っていました。
本屋でPOPを見て「うわー!ついにシリーズが終わるんだ!」と思ったのを覚えています。
でも、こうして手に取るまでには、10年以上という、とても長い時間がかかりました。
なんていうか、怖いんです。先を読んでしまうのが。このまま読み終えればシリーズは終わってしまう。心の中でそれを拒否する自分が居ます。
でも、いつまでも足踏みをしているわけにはいきません。
今こそ止まった時間を動かす時!!
私も「卒業」する時が来ているようです。
さて、まずは主な登場人物を確認しましょう。
伯爵!伯爵じゃないか!!どこにいたんだ!!ミステリーの館の時に出てきてくれよ!一巻のライバルがこうして出てきてくれるのは大変うれしい仕掛けです。
あと、カマキリ部長の弟が出てくるのも嬉しいですね。カマキリ部長、好きだったので……。
夢見。っていう謎の人物が気になりますね。夢水(夢見ず)の対極にあたるので、なにか関係があるのでしょうか?(教授本人とか、兄弟とか……)
それでは早速、小ネタを拾いつつ読んでいきましょう。
□拾われている作品
○本
・『仮題・中学殺人事件』
・辻真先先生の推理小説だそうです。読者が……という教授のセリフも内容に関してのネタになっているっぽい?(私は未読なので読まなければ……)
・『盗作・高校殺人事件』
・上作の続編
○音楽
・『悪魔のトリル』
・どこから流れてくる曲として登場
・『ああ人生に涙あり』
・水戸黄門のテーマ、人生苦もありゃ~ってやつですね。
・となりのトトロ『さんぽ』
・『365歩のマーチ』
・ビバルディ『四季』
□小ネタ
・『午前零時のシンデレラ事件』はいままで出てきたことない事件ですね。『神隠島』はずっと出てきていますが。
・虹北学園の校訓(うろ覚え)の『友情、努力、勝利』はジャンプの三原則と言われるものです。
・「京風の石狩鍋」一巻で出てきたネタです。シリーズ総決算ということで出してくれているのでしょうか
・「たてかよこかわからないステーキ」ネタ、また出てきましたね。
・肺炎をおこしかけているということで入院する教授。以前平日半額のハンバーガーで入院したこともありましたね。
・冒頭の「つかみ」、今回は教授が入院した話で、謎を解くのも亜衣なんですね。修学旅行編から冒頭での謎解きの探偵役は亜衣になっていましたが……成長しました。
・教室に集まったメンバー、川津、島井、横山、後々どういう形で出てくるんでしょうか……?
・土屋……ってことは……校長先生!?
・密室の教室から消えた生徒……一体トリックは……
・わざわざ教室の図がついているのが怪しいですな。線状に貼られた御札があやしい。天井を固定するために御札を貼っているだけで、これ剥がしたら抜け穴になってたりするんじゃあないのか?
・三年の最後に転校してくる転校生、怪しすぎか??実際にありえんのこれ?
・いつの間にかMP3プレイヤーが出てくるようになりました。シリーズ最初(1994年)はMDが出始めた頃だったんですがね……。
・進路が別々になる展開ですね。
・旧校舎の錠が壊れている……転校生が壊したのか?
・UMA捕獲隊、川口君の使われ方!
・ねじ込み式の窓。懐かしいですね。
・染井吉野さん、再登場。亡霊事件以来ですね(当人はすでに存在しませんが)
・「密室と聞くだけでたいくつな日常が赤い夢の世界に変わった」分かるで……
・オムラ・アミューズメント・パーク再登場!さよなら天使以来ですね。
・過去編で出てきたジャパンテレビの堀越AD、前作のクイズ番組のディレクターですね。
・ADが直面した怪奇現象の数々、なにかトリックがありそうですね。
・心霊現象研究会の仁和君、気が付きましたがこれ元ネタが「美輪さん」なんですね。
・秋元麗先生、いつのまにか変わっているの、怪しい空気がつきまといますね……。
・おしょうさんも登場、最終巻だからオールスターですね!
・広島風明石焼き、多分実在しない料理なんでしょうね。
・17章、伯爵。遂に来てくれるのか伯爵!!!
・夜の教授は、闇のエネルギーを吸収しているかのよう。やっぱり闇属性なんでしょうか。
・完全に親戚のおじさんと化した伯爵。もっと絡んできてもいいんですよ!
・密室の謎が……わからない!!うーんお手上げ!
・フランスの高校を受験。バイタリティ高いですが、向こうは9月入学……なので、しばらく暇になりそうですね。
・「子どもが夢を持てる社会を作る――それが大人の仕事だよ」のセリフは良いですね。児童文学としての作品ででていることにはやっぱり意味があるわけで……。作者の思いがにじみ出ています。
・「今年最後の雪になるだろうな」の所で口ずさんでいるのは、もしかして「なごり雪」?卒業ソングとしても使われているので……
・亡霊事件の時にでてきた前川先生再登場。シリーズ総決算って感じですね。
・卒業の描写、すごい懐かしくなってしまいました。自分の時はどうだったかな……。
・一朗太父さん、作中に登場したの何気に初めてじゃない??目次にはずっと存在してたけど!(しかも似顔絵付きで)
・卒業式での謎解き、最高の演出じゃないですか!!!
・「犯人はこの中にいる!」使いたいです。
・「さて――。」一巻から続けてきた、この伝統を、ここで使うのに思わず笑顔になりました。
・『神隠島』最後にまた、名前だけ出てきました。
・あとがき、感無量で読みました。いろいろとあったなぁ……
□総評
卒業、それは学校生活の終わり。青春の思い出。
はやみね先生がシリーズの最後に持ってきたのは、この卒業ネタでした。
良いシリーズって読み終わるのに覚悟がいるんですよね。読み終わると「ああ、終わっちまったなぁ……」という喪失感と、面白いものを読んだなぁという満足感が両方一緒に押し寄せてきて、裏表紙なんかをしばらく眺めている。
本作を読み終えたときはそんな気持ちでした。(電子書籍版だから裏表紙はないけどね!)
伯爵やら、ゴーストやら、とにかく今までのキャラクターがドシドシ出てくる今作、シリーズの最後にふさわしい流れで思わず嬉しくなってしまいました。
ファンサービスもさることながら、やっぱり「卒業」と言う一大イベントと探偵ものの絡ませ方がうまくて、全校生徒の前でスピーチしながらの謎解き!とか、シリーズを通して何度も何度も描いてきた「――さて」で謎解きを開始する所とか、本当に痺れてしまいました。(2021/08/09 さて――。の間違いでした。すみません!)
はやみね先生、シリーズを通して本格推理小説、赤い夢の世界の面白さを皆に伝えようとしてたと思うんです。俺はミステリが好きなんだ!だから皆ミステリの面白さを知ってくれ!!というような。
教授や伊藤さんといった強烈なキャラクターも面白さの要因だと思うんですけれど、全シリーズを読み終えた私には、この「ミステリって面白いんだ!」という作者の純粋な思いがあったからこそ、ここまで長期シリーズになったのかもなと言う思いがしています。
「名探偵ってのは、みんなが幸せになれるように事件を解決する人のこと」という定義は本当によくて、私はこれからの人生で、名探偵とは?と聞かれたら、こう答えようと思います。
それでは、皆さん。お疲れさまでした!
夢水清志郎シリーズは一旦終了ですが、「はやみねかおる、全部読む」はまだまだ続きます!次シリーズの都会のトム&ソーヤでお会いしましょう!
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