笛吹き男とサクセス塾の秘密
刊行日:2004年12月16日
さて、ついに夢水清志郎シリーズも十周年!
私もこの巻は一切読んでいませんので、完全初見というわけです。
せっかくなので、これは推理小説の楽しみ方、「作中の謎を解いてみる」をやってみようと思います。興奮してきたな。
まずはタイトルから。サクセス塾……なんかワルそうな名前の塾です。児童文学で詰め込み教育を行う塾=悪の図式は根強いので、きっとこの塾が塾生に催眠をかけたり洗脳したりとやりたい放題するんだろうなと思います(偏見)。
続いて主な登場人物欄。実は私、時々本を読む前に「おもな登場人物だけで犯人を予想する」って遊びをやることがあるんですよね。まあ、主な登場人物の中に犯人が出てこないこともあるんですがね。
さて、今作の登場人物はっと……
星野英雄:榮太郎の息子。成績は全国一位
小川健太郎:英雄の友達。いつも成績は二位
……いや、犯人だろこいつ!!!どうみても小川健太郎君からクソデカ感情矢印がでてんじゃろがーい!!
ということで、「多分小川くんが犯人」と考えて、小ネタを拾いつつ読んでいくことにしましょう。(とはいえ、この黒姫ってやつも怪しいな……小川君を影で操ってそう)
□拾われている作品
○本
・ロバート・A・ハインライン『夏への扉』
・ハインラインの超名作SFです。冷凍睡眠を扱っています。
・このシーンでは『人工冬眠の可能性』『肉体の低温保存システム』『冬眠のメカニズム』『恒温動物と変温動物』なる書籍も紹介されていますが、本当にある本なのか、架空の書名なのかはわかりません。一般的なタイトルですしね。
○音楽
・嘉門達夫の曲
・レーチの姉ちゃんが聞いています。なお、嘉門達夫はコミックソングで有名な歌手ですが、年代的には結構上の層の歌手です。
□小ネタ
・三年生になった気分を「面白い漫画がたくさんおいてある歯医者さんの待合室」に例えているの本当に上手いなと感心しています。
・ハーメルンの笛吹男の話は実話。というネタ。作中で紹介されている通り、この時期に該当する街から子どもが消えたのは史実だろうと考えられています。(詳しくは検索してみよう!)
・密室、と聞くと反応してしまうサガ、分かりますぞえ。
・13人の兵士が消えた事件、推理しようと思ったのですが、失敗しました。
・毎回恒例となっている冒頭の謎解き、今回は兵士の話が来た感じですね。
・『亜衣の彼氏』という文章はどうも怪しい。というネタ。おもな登場人物の欄に文句を言う登場人物みたいなメタ的なお遊びは大変好きです。
・冬眠を試みる教授。なお、変温動物と恒温動物の話が出てきますが、教授が言っている通り、冬眠は基本的に変温動物と恒温動物の区別なく、する動物はします。ただし、恒温動物の場合は体温や心拍数を下げるので、より複雑なプロセスになっています。というか、変温動物の場合、体温が下がりすぎて活動できないだけなのと見分けがつかないという問題も……。
・ムーミンが冬眠することについて言及する教授。ムーミンファンでなければ中々知らない情報ですが、彼ら冬は冬眠して過ごすんですよね。(「ムーミン谷の冬」という巻で詳細が分かりますよ!)
・伊藤さんが持ってきた「掲示板をプリントアウトした内容」明らかに2chの内容で時代を感じます。はやみね先生もこの時期、参考に覗いたりしてたのかしら?(なお、2004年はフラッシュ全盛期ですね。
(2004年を振り返るすなふえ氏制作のflash https://www.nicovideo.jp/watch/sm22772235)こんな時代だったのだ……。
・必ず成績が上がる塾。相対評価だと難しいですが、絶対評価の場合はとりあえず年号を一つでも覚えるだけでも成績があがるので嘘ではないかも。
・M大学の学長、夢水清志郎のこと嫌いすぎ。マジで何があったん……?
・ポチアマゾンは、「トヨタ・ファンカーゴ」だそうです。具体的な車種名が出てきたのは初めてですね。
・「サクセス塾に不利な報道をした場合は賠償」非常にブラックな匂いがします。というか、こういう不平等な契約は、基本新聞記者は受けないはずです(公平性に反するため)伊藤さんは新聞記者ではなく雑誌記者なので飲んだのかもしれませんが……。なお、似たようなことをやっている会社としては、東京ディズニーリゾートがあります。雑誌などで取り上げるときには、ブランド維持のために必ずチェックが入るんだそう。だから、ありえない……というわけでもないんですよね。(労働問題とかをすっぱ抜く週刊誌はそんなの気にせず独自で取材をしますが)
・アメリカには枕投げのメジャーリーグであるMLPなるものがあるとのこと。マジで?
・初対面で人形を操ってくる少年。明らかに危ないやつですね。花京院か?
・三つ子でかわりばんこに授業を受ける。……ついに三つ子設定を生かした展開になりましたね!それぞれキャラが立っているので三つ子ってのすっかり忘れてました。
・笛吹き男見つかる!の通報を受けて駆けつける岩清水刑事。ポンコツ化するのに反比例してお話に絡めやすいキャラクターになっていきますね。
・警察官は礼状を持ってこないと防犯カメラを見れない。こういう描写がちゃんとしているのは良いですね。
・「月食を消す」このトリック悩んだんですが、結局解けました。「いくらなんでも月食を消すことができるわけないだろ」と考えたのが良かったようです。やったね!遂に作中のトリックを先に解けたぞ!!
・これに気がついたので、監視カメラのトリックも解けました。
・「静かな赤と、動きのある赤」犯罪を赤で表すのはこのシリーズに共通したイメージですね。
・教授の出した算数の問題。私も無事正解できました。
・怪我した指を使わないでも吹ける曲を作る。のはまんま、『悪魔が来りて笛を吹く』のネタですね。
・あとがきでは10周年ということでいままでのシリーズを振り返ってくれています。元ネタの推理小説が続々紹介されてて大変うれしいです。
ところで、やっぱり「機巧館の数え歌」は「これ児童書でやっていいんですかね???」って思いがあったんですね。その割には担当に「子供向けとか考えてたんですか??」って返されたそうですけれど。
・「そして五人がいなくなる」を「本当は十人の予定だったけれども、トリックが思いつかないので五人になった」と謙遜しているんですが、実際は十人も消してたら尺が長すぎて児童向けに収まらなかったからでは?とも思うんですよね。
□総評
おもな登場人物の部分で「もうこいつが犯人だろ!!」ってなったのは、やや正解でした。しかしそんな単純な話でもなかったので満足です。
解決編に入る前にトリックが分かったのは嬉しいです。子供の頃から何度もやってみようと頑張って結局無理だったので。トリック自体はちゃんとヒントが出ているので、子どもでも頑張れば解けるようにしているんだろうな。と感じたり。
今作は塾が舞台ということで、受験勉強の問題にもフォーカスしています。お釣りの問題とかも印象的ですが、やっぱりこういう学校ネタになると、一家言ありますね。
「シリーズ最初は亜衣たちより年下だったのに、いつの間にか追い越してしまった」長期シリーズだとこの問題があるんですよね。10歳で読み始めた子どもが20歳ですからね。シリーズをずっと追ってた子どもだったら、この本を手にとった時どんな気持ちになったのかなとか、ふと考えてしまいまいした。
そろそろシリーズ、残すところ二巻と、最後も見えてきて寂しい限りですが、このまま進んでいきましょう。次回もお楽しみに!
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