亡霊は夜歩く
刊行日:1994年12月08日
ということで、シリーズ二作目、
「亡霊は夜歩く」のお時間です。
タイトル、これは横溝正史先生の「夜歩く」をイメージしてたりするのかしら?
夏休みが舞台だった前作と代わり、今作は学園モノとなっています。「校則」がテーマに大きく関わってきており、はやみね先生、職業柄(執筆当時の本業は小学校の先生なのです)相当気合が入った作品になっています。
全体を通してですが、今回は構成が何故かレストランをイメージしたものになっておりまして、
目次が
◆メニュー 料理長のごあいさつ
◆おもな登場人物
◆前菜 振り向けばミステリーサークル
◆主菜 亡霊は夜歩く
◆デザート 晩餐会にご招待
となっています。うお!おしゃれな演出~~!
しかし、作中でレストラン要素は特に拾われていません。強いて言うならソメイヨシノさんが書いた「推理小説の料理法」ぐらいでしょうか。(あと、最後のオチか?)
校則がメインなら「一時間目、二時間目、放課後」とか、「第一条、第二条」とかになりそうなものなのに……。あとがきによると「今作はレーチというキャラが大暴走したので少し予定が狂った」そうなので、もしかしたら最初はレーチがレストランにガッチリ絡む予定だったのかも?
前菜、主菜、デザートでそれぞれちょっとした謎解きが入っているのが面白いところですね。対象年齢が子どもだと、長々とした導入では飽きてしまいますから、最初に小さなジャブで惹きつける必要があると考えたのかもしれません。なにはともあれ、いっぱい謎解きがあるのはお得な感じです。
全体としては、はやみね先生の書きたいものが一本芯として通っているのが好印象です。
□拾われている作品
○本
・フレドリック・ブラウン『火星人ゴーホーム』
┗言わずとしれたブラウンの名作。
・大菩薩峠
・伊藤秀男「昭和の探偵小説」
┗部長が持っている本。どうも評論らしい?
・『十人のゆかいな引っ越し』
┗この絵本は、安野 光雅 氏による数学の絵本だそうです。教授は論理学なので数学系の本を読んでいるのかな?
○音楽
(以下はオルゴールのラインナップ)
・カッコーワルツ
・谷間の農夫
・エリーゼのために
・峠の我が家
・ロングロングアゴー
・ラバーズ・コンチェルト
・トロイメライ
・シューベルトの子守歌
・おもちゃの兵隊
・オールドブラックジョー
・ローレライ
・楽しき農夫
・埴生の宿
・白鳥の湖
・ハッシャバイ
・嘆きのセレナーデ
・グレン・ミラー・オーケストラ「ムーンライトセレナーデ」
○絵画
・テニエルのアリスの挿絵
□小ネタ
・ミステリーサークルの成因について『間違いなくこれはプラズマです』と主張するおじさんがでてくるのですが、これは大槻教授という実際の研究者がモデルですね。当時はオカルトブームだったのですが、大槻教授はそのオカルトブームに真っ向から立ち向かうスタイルで有名だったのです。「これはプラズマです!」みたいな言説は色んな所でパロディ化されてました(ぬーべーにも出てました)。年末にTVタックル超常現象スペシャルでた○出版社長とバトルしてたの懐かしいなぁ……
なお、ミステリーサークルに関してはほとんどが人為的ないたずらであるということが暴露されたために、プラズマ説も怪しくなってしまったのですが。
とはいえこれは当時の話。今の子どもには解らないとは思います。ただ、当時そんなブームがあったと覚えていただければ幸いです。
・「宇宙狂おじさん」の質感が最高。当時のオカルトブームにはこんなおじさんが沢山出てきたんですよね~!
・「宇宙人やUFOの目撃者に、絵の上手な人は居ない」の法則、秀逸すぎて未だに思い出してしまう。
・「今年はお米の出来が悪い」、教授が聞いているのは、平成の米騒動で有名な1993年の大凶作のこと。当時のパニックは調べると色々とでてきます。
・時計塔の傾きは、23.4度。この角度ですが、地球の地軸の傾きと一致したものになっています。でも特に拾われてはいないので、とっさに頭に浮かんだ数字を書いたのかも?
・内容活動一切不明の「3月ウサギ友の会」が気になりますね。そのうち出てくるのかしら。多分お茶会やっている組織だと思うんだよな……
・『超常現象研究会の会長、中村巧さんを研究する会』妙に印象に残りますね。後々のシリーズで回収されたりしないのかしら。
・学級委員のカップルの春木くんと村田さん。別のシリーズにでてきたりします?
・文芸部の面々はワープロで書いています。パソコンではないんですね。この時代1994年はまだWindows95も出ていないので、文字通り文章作成しか出来ない専用機(うーんと多機能になったポメラみたいなものを想像してください)で文章を作っていました。今の時代はこうしてスマホでもPCでも書いたテキストをすぐに公開できたりしますが、ちょっと前の時代ではそれも不可能でした。
・主人公はフロッピーに小説を書き込んでいますが、このフロッピーがなんなのかは今の時代説明が必要かもしれませんね……。
・部誌、年に五回ってかなり頑張ってますね。二ヶ月に一回ぐらいのぺースか。
・カマキリ先輩、確か後のシリーズで部長になっていたはず。
・星占い同好会の会長、間直玲子。ヒットラーの『我が闘争』を原著で読んだりするという設定ですが、普通にやべーやつ。
なお、後で「ヒトラーのようなカリスマ性が欲しかった」みたいな拾われ方するんですが、間直さん!それを参考にするのは間違ってるぞ!
・「大きな魔法円が現れる」、なんとはやみね先生、ちゃんと魔法円と魔法陣を区別しているのが偉い!結構みんな混同しがちなのに……。魔法円(サークル)は、呼び出した悪魔から身を守るものであり、術者が中に入って使うものです。本来ならばこれが伝統的なスタイルなのですが、水木しげる先生が「円の中から悪魔が出てくる」という逆の描写にしたため、こっちが日本では流行ってしまったそうです。詳しくは調べてみてください。
後々の所で「不完全な魔法円だと、おり立った悪魔に、よびだした人間が食われちまう」と書いているので、はやみね先生は正しい使い方を把握した上で書いているよう……と思ったのですが、後半の描写だと「魔法円が魔界からなにかを呼びだす」「魔法円の中心にすごい音をたてて何かが落ちてきた」というものがあるので、これはゲート的な意味でも使っている?
・魔法円は、いわゆるダビデの星(六芒星)なのですが、文中では「2つの三角形を上下逆さまに組み合わせた六角形を真ん中に、4つの同心円」という記述をされています。宗教的シンボルを避けたのか、読者に伝わりやすくしようと考えたのか。
・タコスのことを皆知らないので、作るのに失敗しても「これがタコスだ!」で言い張れる。この時代はそうかも知れませんが、国際化が進んだ今の時代だと難しいかも?
・一週間の温泉旅行、普通にめっちゃ長いですね。
・十年前に神隠し島に行っている件、伯爵が言及していた件ですか。
・「夢水さんが大丈夫って言っているんだったら大丈夫だ」上越警部、完全に夢水清志郎にデレてるな……。
・亜衣のファンが初めて出てきて、亜衣がテンションを上げるシーン、嬉しさが伝わってくるようで好きです。非常に印象深いシーン。
・教授のおみやげの「十二色ボールペン」おもわず「あった~~!!こんなのあった~~!!」って思ってしまいました。すぐ色が出なくなるやたらと太いやつな!!!「先っぽがグラグラ」の表現で思い出が一気に蘇りました。作品に時事ネタを入れる是非については時々話題になりますが、私はこういうので昔を思い出すことができるので好きです。
・美衣のお菓子作り好き設定。この話から注目されるようになった感じ。
・びっくりたこ焼き、本当にあるんだろうかな?知っている人いたら教えて下さい。
ということで、お腹いっぱいになってこの話は終了。次は、三作目の「消える総生ま島」です!!
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