第14話 夫婦

 久しぶりにあの人から訪ねたきた。このところ会えば聚楽第の事で口論になってばかりだった。あの人の子が出来た事は嬉しい。思い人の子であった茶々は二人の子を産んだ。一人はあまりに早く亡くなってしまい、お拾しかもういない。年を考えると生まれた事が奇跡のようだ。その為、噂がある。秀吉の子ではないという噂が・・・。だからなのか、茶々やお拾の事になると周りが見えなくなるのは。噂であっても自分の死後どう影響するか分からいからこそ、二人を守る為にどんな事でもしようとしているのは・・・。

「おまえ様、どうなさいったのです。難しい顔して」

ここにきてからずっと険しい顔をしている秀吉におねは優しく語りかけた。


 ずっとだまっていた秀吉がゆっくりと話し始めた。自分の考えを整理するように

「駒姫の件じゃが、おねの頼みどうりにしたんじゃが・・・。聚楽第の者達は許さぬ。謀反人どもには厳しく当たる・・・そのつもりじゃったが利家や家康が文句を言ってきおった。佐吉もじゃ」

三成は自分の考えに賛同すると思ったいたのにおねが余計な事を言って言いくるめたのだろうという視線を向けてきた。

「武家の習いでは平時の時は女子供は助命されます。それを曲げるとしても佐吉は流罪だと考えていたのですよ。なのにおまえ様は死罪と言った。皆が反対するのは当然です」

道理に合わない。秀次はどちらも折れなかった結果に起きた悲劇だ。謀反はなかった。言いがかりを付けて命を奪おうとしている。一の台は全くの他人ではないだろう。

「公家の方々も今回の件には反対しております。無駄な血を流す事は好まない方々です。このままでは朝廷まで敵に回しますよ」

五大老が動いて事で公家達も反対に回った。特に菊停は激しく反対している。娘と孫の命、自分にまで連座されかねないと思っているからだろう。その事も不快なのかもしれない。


 秀吉は不機嫌そうだった。朝廷との中を拗らせたくはないが五大老が今回の件で豊臣家へ影響を増すのは嫌らしい。主家を抑え込めるという実績を作るのは避けたいと考えているのだろう。

「茶々がな・・・、謀反人どもを許せぬと言っておるんじゃ。女であっても婿を取り反旗を翻すしたらどうするのかと。誰が自分達を守ってくれるかとな」

儂が死んだ後の事を考えるとその考えが頭から離れないと言ってきた。思わずため息が零れてしまう。

「なら全ての諸大名に起請文でも書かせなさい。お拾に対し反意なく仕えるという血判状でもなんでも、破るものはお家断絶をすると言えばよいでしょう。その上で五大老を互いに監視させ合いなさい」

互いに監視させ裏切る事が出来ないようにすればいいと言った。

「聚楽第は力を失いました。反乱に手を貸すもは潰されるだけです。家を潰したい思うもがいると思いますか。憐れんでもそれ以上の事をするものはいないでしょう」


 そんなもの役に立たないと思った。おねがあまりにも必死に言ってくるものだからそうしようと言ったが聚楽第は別だと告げた。諸大名は抑える。その中で互いに潰し合えばいいと思った。特に毛利、徳川、伊達、島津は危険だ。宇多喜は信頼出来るが前田は利家が死んだ後が心配だ。息子は父親程ではない。上杉は義理堅い上、豊臣家を裏切る事はないだろう。図に乗るようなうなら処分するが・・・。

 朝廷の連中を宥めつつ五大老の影響を受けていないと分かる形で聚楽第を処分せねば。死罪はまずい。茶々を説得せなばならんな。お拾の為、朝廷を敵に回せないと言って・・・。だが男児は殺す。後は流罪。命が助かるならおねも文句は言わないだろう。結局当初の予定通りか・・・。

「おね、茶々に全員死罪は取りやめというぞ。おねの言う通りじゃ、皆死罪はやり過ぎやの。男児のみ死罪。後は流罪にする」

おねは目を伏せた。本当は男児も助けたかったのに違いないが習わしでも敵将の息子は幼くても皆殺されたきたのだ。

「出家に留めてくれませんか?流罪はあまりにも過酷です」

命あるだけましだろうと諫めるがおねは納得していなかった。これ以上話してもまた互いに怒鳴り合うだけだ。さっさと出て言いて佐吉とどこに流すか決めんといかんな。茶々には夜でいい。ゆっくり機嫌を取りながら言えばいいだろう・・・。

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