第10話 前田と徳川

 淀を追いかけ秀吉の下に向かうと五大老である前田権大納言と徳川内大臣がいた。どうやら説得に来ていたらしい。一瞬、三成は家康みた際に顔顰めたが何事もないように挨拶を交わした。利家は明るく、家康はにこやかに返し、治部殿が素直に挨拶されるとはと言ってきたが無視した。苦笑しているが腹の底は知っているのでどうでもよい。

「太閤様、治部殿から聞きました。駒姫は側室ではないと。側室ではないなら罰するのはお止めください」

罪のない娘が不当な扱いに会うのは耐えられないとうと秀吉は狼狽えた表情をしていた。

「太閤、淀殿の言っている事は道理だ。ここはお咎めなしでいいではないか。わざわざ禍根を作る必要はない」

利家がそう言うと続けるように家康も説得してきた・

「太閤様、厳罰を求める気持ちも分かりますがこれはあまりにも理不尽です。これは戒めにはなりますまい」

三者の言葉が秀吉に刺さる。助けを求めるように自分を見てくる秀吉に対し

「太閤様、私は同意見でございます。どうしても斬首するといならば代わりに私が腹を切ります。どうかご助命を」

三成はそう言いり頭を下げた。

「そこまでいうならば駒姫は許そう」

「でしたらすぐに書状をお願い致します。すぐに聚楽第から出したく存じ上げます」

書状を書き花押があれば言い逃れは出来ない。破ったら淀が責め続けるだろう。

 

 墨は用意され秀吉が書き始める。暫しの沈黙が続く。

 書き終えた書状に花押を確認すると小姓に最上家へ届けるように命じた。これで問題の一つが片付いた。

 帰ろうとする淀を引き留めつつもう一つ話をする。淀以外は分かっている。これからの話が本番であり、もっとも難しく長い話になると。

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