第9話 淀君
しばらくして三成は北政所を訪ねた。淀君に会いたい事、駒姫や聚楽第の事を話す為だ。
客間に通され待っていると北政所は来た。少しやつれた表情をしている。聚楽第の事が堪えているらしい。
「力になれなくてごめんね、佐吉」
悲しそうにそう言ってくるおねを見て三成は言葉に詰まった。お辛いのはご自身でしょうと。これから言う事が余計に傷つけてしまうと分かっているせいか、罪悪感が胸を締め付ける。
「おね様、まだです。菊停や五大老にお願いし、駒姫や聚楽第の方々の件を太閤様に説得してもらっております。まだ可能性があります。今回多くの者を救う為、私にある方に会う許可を頂きたいのです」
そういうと北政所は表情が固まった。だれの事か分かったからだ。心の中で子を産んだという嫉妬等が渦巻いた。秀吉は自分でなくあの女の意見を尊重するようになったという感情も・・・。
「私が許さなくとも会えるでしょ」
冷たく言った。三成にしてみれば淀はかつての主家の姫でありもしかしたら自分より親しみがあるだろうと思っていたからだ。
「正室である北政所様を通さず会う事は許されません。奥の支配者はおね様のみです」
おねを気遣った上での発言であるが気の利いた事が言えない自分が恨めしい。
「淀から太閤様に説得させるのですね。この度の震源から・・・」
あの女が余計な事を言わなければ一の台は死罪になる事はなかったのだ。それなのにその女に頼らなけ救えないとは・・・。
「佐吉、淀殿に会い。駒姫を救いなさい。そして聚楽第の事はあまりに理不尽であり豊臣家の為にならない事を諫めない。諸大名、公家の説得が間に合うように時間を稼ぐのです」
三成は自分を立てた。淀ではなく自分を近江出身の代表格である三成が自分に組みすると分かれば淀に対して牽制になる。近江衆かつてのように自分の意図を汲むようになる。好き勝手な事はさせない。豊臣家は自分と秀吉が築き上げてきたのだから・・・。
淀君に使者が来た。北政所からだ。石田治部が自分を訪ねてくるらしい。なぜ直接ではなくいちいち北政所を通すのだと思った。お前の家はかつて浅井に仕えた家だろう。正室というだけで自分を押さえつけようとしてくる女に何を遠慮しているのだ。私は子産んだ。お拾は鶴松とは違う。けっして病で死んだりはしない、天下人の正当な後継者だ。浅井と織田の血を受け継いだ子。もしかしたらそのいう気持ちを嗅ぎ付けからこそ北政所は自分を警戒しているのかもしれない。
三成は淀のいる部屋へ通された。軽く挨拶をすませる。顔を上げる美しい女がいた。どこか影を感じさせつつも守ってあげたく感じさせる女だ。
「急な願いにも関わらずお許し頂きありがとうございます。この度は駒姫と聚楽第の件でお伺いしております」
三成は駒姫がまだ関白に会ってない事を告げた。自分が伏見連れていったのでその事に噓偽りはない事をいうと淀君は驚いていた。
「まことか?私は側室と聞いていた。だから一味として厳しい処罰を求めたのです」
そういうと控えたいた侍女達をしかった。
「なぜ、誰もそれを言わなかったのだ。私を世間知らずとばかにしているのか」
侍女達は口々に謝罪をしいるが淀の怒りは収まりそうにない。
「淀殿それくらいでよろしいではありませんか。間違っていた事が訂正されたのであればそれは豊臣家、ひいてはお拾様の為になります。何卒、太閤様に無罪放免にしてほしいとお伝え願えないでしょうか」
「そうね。早いほうがいいい。すぐに言いにいきます」
そういうなりすぐに会いに行こうとする淀を追いかけながら三成は変に行動力があるなと思った。感情的というか、衝動的というか自分にはない面だと。そして聚楽第の話を太閤と淀の2人に相手にしないといけないのかと思った・・・・。
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