第7話 宛先
聚楽第で会見後、すぐに菊停家向かった。夜遅くむ向かう旨を伝えおいた為か、会う事が出来た。
一の台の手紙を渡し、朝廷から働きかけて欲しい旨を話したが、感触はあまりよく無かった。娘を助けたい気持ちがあるが、太閤と揉めたくないらしい。諸大名が味方になってくれるのなら強く働きかけれるとの事だ。仕方ないので、駒姫から預かった手紙を書く家に送るのを手伝ってほしいというとこれはすんなりといった。諸大名を動かせると言ったのが効いたのか、娘を見捨てる事が出来ないからなのか左近には分からなかった。公家らしいしたたかさというべきか時勢を読んでいるというべきか・・・。
数日が最上家を訪れた。控えめにいってあまり歓迎されていない。石田の家臣が何の用だと斬りかかってきそうな雰囲気があるが、義光の会う事が出来た。
「駒の文を預かっているそうだな」
こちらの訪問を喜んでいるような振りをしているが、内心は怒っているだろう。お前の主のせいでと。
「駒姫様からの文でございます」
そういって手紙を差し出すと義光は静かに読みだした。
「そなたこの手紙の内容はまことか?治部殿はその覚悟が」
自身の身をもって駒姫を守ってくれるのかと聞いてきた。左近は三成が駒姫を助けようとしている。だが、秀吉を優先するあまり、周りが見えなくなっているのを危ぶんでいた。だからこそあえて三成自身を危険にさらす事で情を示させるように持っていこうとしている。駒姫を利用しているのだ。だが、それをいう必要はない。
「我が主は今回の件で駒姫を罰するのは道理にかけると考えております。もし、姫を罰する事があれば世が乱れると考えております」
だから姫を守るのだと、そう告げるとと義光は少しうれしそうに頷いた。決して無償ではない。裏があるから助けるのだ。そっちほうが安心出来る。無償で助けられたのなら今後、三成に対し配慮し続けなければならいないのを考えるとお互いの利益の為のほうがよい。
「現在、我が主以外にもこの件で動いている方がいらっしゃいます。その方は一の台様を始め側室方々や姫君達、そして若君達も助けたいと思っています。その際に何らかの形でご配慮頂ければと・・・」
「仲の良い者の声をかける事は出来るが・・・。若君達は難しくないか」
分かっていると告げる。形だけでもいいのだ。幼い若君達を助けようとしたという事でも救われるもがいる。
「駒の件、最上家の件で治部殿に一度話がしたい。取り成しをお願いする」
「承りました」
これでいい。最上との話はついた。後は三成の腹を括らせるだけだ。
帰り際、奥方が礼を言ってきた。娘の事をずいぶん心配していたのだろう。ずっと仏に祈っていたと。駒姫は元気でしたかと、礼というよりも質問が多かったが元気である事、姫からの手紙がある事を告げると嬉しそうにしていた。このまま無事に終わって欲しいと思った。
最上の屋敷の雰囲気が少し明るくなっていく。駒姫の為に太閤の重臣が動いている。その事実が屋敷にいる者達を明るくした。
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