第2話北政所
目の前にいる女性 北政所であるおね様にいざ会ってみるとどう切り出せがいいか迷ってしまう。普段の自分なら端的に話しているだろうが、ここ数年の尾張出身の者達との関係や関白の件を考えると会ってもらえただけでもありがたいように三成には思えた。
「話したい事があるのでしょ。ここ最近噂になっている事で」
北政所から言葉をかけてきた。
ここ聚楽第で起きている事は大阪城においても悪い意味で注目の的だった。秀次の遺児がどうなるのかは誰もが気になっている。おねにとっては可愛い甥の子ども達であるから尚更その身を案じるているのだ。
「実は最上の駒姫の扱いで困った事になっております。姫の扱い次第で関白様の遺児達の扱いが変わるのです」
おねは少し考えながら先を促した。
「駒姫はまだ関白様に直接会ってはおりませぬ。この姫を罰する事は道理に反します。ですが、太閤様は姫を罰する対象に含めようとしている。おね様から説得して頂けないでしょうか」
三成は頭を下げた。暫しの沈黙が空気を重くする。
「一の台を含む他の側室や子供達はどう考えているの。男児は死罪にするつもりか」
おねも理解はしていた。父親が謀反の疑いにより切腹を命じられた以上、男子も連座により死罪になるのは避けられない、まして秀吉にはお拾がいる。お家騒動の禍根は断ち切りたいと考えている以上、自分が話しても聞きはしないだろう。それでも問うたのは情があるからだ。せめて幼い子らは助けてあげたいという秀次への思いからである。
「男児は死罪になるでしょう。豊臣家の今後を思えば譲れません」
感情を殺した声で三成が答えた。
「一の台様や側室の方々や女児は流罪か尼寺送りになるかと・・・」
おねは厳しいと思った。流罪はやり過ぎではないか、出家させるだけでよいのではないかと三成に視線を送るがただ真っすぐに見つめ返されるだけだった。
会った事のない不幸な姫は許されるように取り計らってほしいと言いながら自分と交友のあった一の台達は罰すると告げる三成に対し腹ただしい思いがあるが、秀吉の思いを汲んでの事だと思うとやるせなくなる。自分に子がいれば、かつて側室が生んだ2人の子が無事に成人していれば孫がいたかもしれない。こんな事は起きずに済んだと思うとなぜという思わずにはいられなかった。
「駒姫の事を含め、聚楽第の事を話しましょう。佐吉は聚楽第へ赴き一の台に話すのです。北政所はそなたらの事を思うておると伝えよ」
あえて幼名で名を呼んだ。今回の件は秀吉の意図を汲んで行動するのではなく、道理に則って動いて欲しいと。無実の女達が理不尽な思いをしないよいようにしてほいしいと。
三成はじっとおねを見つめ深く頭を下げた。
秀吉と話さなければいけない。最近の秀吉はどこかおかしい。不安がある淀君への入れ込み具合が何か恐ろしい事になるような気がする。場合によっては淀君とも話す事になるだろう。彼女が自分の話を聞くかどうかは別として・・・。
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