もし駒姫が助かっていたら

初心者

第1話 駒姫の扱い


 三成は面倒な事になったと思った。太閤様に呼び出されてすぐに聞かれた聚楽第の亡き関白秀次の奥の件だ。この問題をどう片づけるかが今後の豊臣家に安定に繋がるからだ。

 一番の問題は最上の駒姫の扱いについてどうすべきかだ。他の側室との線引きを考えなければならない。秀次との目通りが済んでいない事を考えると帰すべきだと思う反面、日が浅いというならば他の者も騒ぎ出すと思えば難しい問題だと三成は思った。

「線引きが重要です。天下の安寧の為・・・それを騒がすものには強い態度で挑むべきかと」

太閤が自分を観察しているのが分かる。

「しかし、目通りの済んでいないものは関白殿下の一味ではないので最上家へ帰すべきかと」

太閤自身迷っているのだろうか。一瞬納得したような気がした。

「三成の意見も分かるが、最上の姫の件は少し考える」

それだけ告げると秀吉は奥の淀君のもとへ行ってしまった。


 秀吉にとって今大事なのは、幼いお拾と淀君を守る事だ。淀君には実家がない。自分が滅ぼした為、頼れる親族衆がいない。自分亡き後あの2人を守る為にどうすべきかを考えなければならなかった。

 三成は線引きしつつ最上に恩を売り味方に付けようと進言しているのは分かる。だが、自分に従った振りをしつつ天下を奪うつもりでいる徳川や野心を持つ大名達からいかに守るかが重要なのである。最上程度では力が足りない。父親が武名高くともその息子が父親と同じとは限らない。将来を考えると役に立つとは思えなかった。

 それよりも自分に逆ら者は斬る。後継者であるお拾とその母である淀君に逆ら者は同じく斬られるという恐怖を諸大名に与えるほうがよいのではないか。冷徹な事を考えながら淀君のもとに向かう。秀次が死んだ事、男子は死罪にする事を告げようと思いながら・・・。


 太閤が去った後、三成は駒姫は何らかの罰が下ると思った。一瞬納得したように見えたが、お拾様の事を考えると何らかの形で罰を与えるような気がした。習わしであれば男子は死罪、女子は尼寺送りか流罪になる場合があるが、まだ会った事のない姫を流罪や尼寺送りにはしないだろうと思うが、なぜか不安で仕方ない。一度北政所様に相談しよう。秀吉様を説得してくださるのはあの方しかいないのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る