何でも屋

 着信があった。


「もしもし。なにかご用はありますか?」


「なんだ、そっちからかけてきたのというのにご用はありますかとは。聞きたいのはこちらの方だ」


「申し訳ございません。私は何でも屋をやっておりまして、このように電話で注文を取っているので、あのような文句になってしまうのです」


「つまりなんだ。頼めばなんでもしてくれるというのか?」


「えぇ。しかしいくつか条件があります。1つは人智を越えた要求は呑めないということ。不老不死にしてくれなんてものは私にも不可能なのです。2つめは、依頼料は依頼なさった要件の複雑さに比例するということです。ロケットを作れと言われますととんでもない金額が必要になりますし、辞典を紙に写せと言われますと、こちらも大変な額となってしまいます」


「なるほど。ではちょっと頼んでみようかな。この星でもっとも大切なものはなにかな? 1つじゃなくても良いぞ。教えてくれ」


「ははぁ、まずは信用に足りるかテストというわけですね。このような例は初めてですが、回答させていただきます。やはり命でしょうか。しかしその命を支えるには水や食料が必要ですよね。水や食料を得るには知識が必要ですから、もっとも大切なものは知識でしょうか? いや、しかし知識があったとしても・・・」


「分かった。もう良いぜ、あばよ」


「あっ、依頼料も払わず電話を切られてしまった」



「どうやらあの星の生き物は食べ物がないと生きていけないらしいぞ。それを奪って支配してやろう」


 そう言って、地球の侵略に来たケラ星人はニヤリと笑った。

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