地下鉄で通り魔から救ったクールで完璧な美少女生徒会長が俺だけに自信がなくて甘々なところ見せるのが最高にあざとい。〜おっぱいだけが完璧じゃない完璧美少女〜
第29話「二人で歩く時ってこんなんだったっけ?」
第29話「二人で歩く時ってこんなんだったっけ?」
ざわざわとしている駅構内を歩いていると早速3回ほど、うちの高校の女子生徒や男子生徒に声を掛けられた。
珍しく男子生徒からのエールに嬉しそうに笑っていた先輩に「ほら、言ったじゃないですか」と言うと——
「ねぇ、嫉妬してる?」
「え、嫉妬⁉ そんなことはさすがに……」
「その顔は思ってる、だよね?」
「……くはぁ。先輩はさすがですね」
「そりゃあ、伊達に生徒会長してるわけじゃないからねっ」
ない胸を張る先輩にやられながらも、嫉妬しているのは本当だった。
モテないことを悲しんでいた先輩的には絶対に嬉しいことだし、人気が出るのも嬉しいけど……なんかこう、嫉妬しちゃう気持ち悪さもあって何とも言えない。
今なら分かるけど、きっとアイドルが引退して結婚した時のファンの心情はこんな感じなのかな。
それとも、誰も知らないような穴場なアイドルの素性がヒットによって知られちゃったときに、嬉しい気持ちとは裏腹に嫉妬しちゃう的なね。
どうにもならないから仕方ないけど。
「そんなに嫌かな」
「い、嫌だなんて――思ってませんよ?」
「嘘だぁ。表情が歪んでるよ」
「そんなに表情に現れやすいんですか……」
「うん。なんかもう、これははっきりと」
「なんでも分かりますね、先輩は」
「なんでもじゃないけどね? まぁ、翔琉君とはそこそこ長いし。さっきも言ったけど生徒会長だからメンバーの顔はしっかり見るようにしてるからね」
先輩はえへへと恥ずかしながらそう言った。
なんかこう、しっかり見られているんだなと改めて感じて、ほんわかした気持ちになった。
そして、羽川翼節も意外としっくりくる。先輩は女の子口調で話さないし、若干僕っ子感もあるから不思議な感じだけど悪くない。
「それじゃあ、これからは俺も先輩の顔見ないとですかね?」
さすがに先輩にばかりいいとこ取られるわけにはいかない俺は目を合わせてそう言った。
すると、今度は今度。
分かりやすく目をまっすぐ見開いて驚いた顔をする先輩が見えた。
「っ——え、いやぁ、そんなことしなくても私が見てるし……」
「俺も仕返しですよ?」
「そんな仕返し、さすがにいらないよっ」
「あはははっ。まぁ、彼氏なら彼女相手にこんくらいのことしてもおかしくないでしょう?」
頬を赤らめて弱々しい視線で睨みつけてくる。
「っ~~恋人役をいいことに」
「だって、こんなこと滅多にありませんからね? そりゃ、多少は全力でやらないと割に合わないって言うか」
「それがずるいんだよ、もう……(本当にそう思ってるのかって思ったじゃん)」
流石に置いたが過ぎたか、先輩はムスッとしながらぼそぼそ何かを呟いた。
「なんか言いました?」
「なんでもない! ほら、行くよ! まずは服やからだからね!」
「え、今絶対に何か!」
「いいのぉ!」
というわけで、俺と先輩の第一回恋人デートが始まったのだった。
☆☆☆
まずはチカホを歩いてすぐの場所のデパートに入っている価格が安い庶民の味方の洋服屋さん、CUに足を運ばせた。
「ん~~、これとかどうかな?」
「スラックスですか?」
「違う違う、そっちのぴっちりしてるのがスラックスで、これはボトムスね?」
「うげぇ、分からんですよ……」
「書いてるじゃん、表記でしっかり」
普段からあまりお洒落に興味がなかった俺としてはセールの時に安いものを買って長く着るということを実践してきたのでこうやって塾講することはなかった。
なにより、商品名など見たことも考えたことがない。
俺の視線は全部値段に集約されているし。
しかしまぁ、そんな俺のファッションには目を瞑る様に先輩は投げかける。
「の割には、良いもの着てるよね」
「あははは、俺が合わせるといっつもララが茶々入れて来てたんで。なんか勝手に組み合わせを覚えたって言うか……」
「さすがララちゃんね。顔は悪くないんだから、服だってよくしないとだもん」
唐突の褒め台詞にボっとしてしまった。
「顔、わるくないんですか?」
「え、あぁ、うん?」
「そ、そうですか……」
仮にもこう、恋人になっている先輩言われると胸に来るものがある。俺はきっと、向こう10年はこの言葉を忘れないだろう。
手を引く先輩に連れられて、トップスからアウターまで色々な単語を覚えながら総額2万円分の服を買いこんだ。
服に2万円。普通に考えたら一気に買えば当たり前の額かもしれないけど、俺にとってはかなり高額だったのは言わずもがな。
そんな俺を見かねてなのか、先輩がバイト代から半分ほど出してくれた。
袋いっぱいに買い込んだ服を眺めながら、隣を歩く先輩を見て言う。
「先輩、全部払っても良かったんですよ?」
「いいのいいの。だいたい、私の都合で合わせてるんだし」
「別に俺は合わせてるなんて。むしろ、二人で遊べて楽しいって言うか」
「……それ、今言うのずるい」
「え?」
急に立ち止まって、また走り出した先輩に驚いた俺であった。
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