第7話 いざ冒険へ
ムギとパーティーを組んでから暫く、私たちはひたすらレベル上げに没頭していました。
私が戦闘に不安しかないので、実戦経験を積むためという側面もあります。
近頃は私が〖拘束攻撃〗で敵の身動きを封じて、ムギがトドメをさすというパターンでサクサク快適に経験値を得ることが出来る様になりました。
ただ――――――………。
「………飽きた」
特段目新しいスキルを習得したわけでもなく、パターン化された戦闘で強く出てしまう作業感………ムギがそういうのも仕方のない事かもしれません。
「それじゃあ少し遠出してみます?」
とは言え右も左も――――――地図を見ても迷子になる確率の高い私には、特に行く当てなんて何もないんですけどね。
それでも私の言葉にムギは弾んだ声で、
「初心者に丁度良い腕試しの場所が有るらしいのよ。そこに行ってみましょう!!」
既に私と何処へ行こうか考えてくれていたみたいです。
私みたいなヘタレ初心者に合わせてくれるのはとても嬉しいけれど、同時に何だか無理させて申し訳なくって罪悪感を感じてしまいます。
「ムギ、邪魔だったら言ってくださいね?ムギは他のプレイヤーさんたちにも声をかけてもらったりしてるんですから、どんどん先に進んでも――――――」
事実、ここ数日の間にムギは幾つかのプレイヤーさんたちから声を掛けられている。
種族の珍しさもあるだろうけれど、ムギは強い。
本当は私の〖拘束攻撃〗なんて無くたってムギは一人で敵を倒せちゃうし、そちらの方が経験値も多くて早く強くなれる。
「は?意味解んない!友だちを邪魔だなんて思う訳ないでしょ?良い?私が!リンと!一緒に遊びたいから一緒に居るの!まったくもう………あんまり恥ずかしいこと言わせないでよね!」
そう言って私の背から降りて前をトコトコと歩いて行ってしまうムギに向けて、
「ありがとう」
それだけを伝えると、ムギの二本の尻尾がピンと立った後にへにゃりとして、
「私の方こそ――――――」
???
立ち止まって何かもにょもにょ言ってたような気がするけど、私には全然聞き取れなませんでした。
もう一回言ってくれる様子も無かったので、そのままスルーすることにします。
ムギなら大事な事はもう一回言ってくれるはずですし。
「それで、今から行こうとしてる場所はどういう場所なんです?」
イッモイッモとムギに並んで問いかけると、ムギは得意げにハナを高くして説明してくれました。
「そこは『精霊の森』って名前でね?この辺りだと微精霊ばかりだけど、そこに行けば稀に中位の精霊にも遭遇するんだって」
「注意の精霊………?」
何でしょう?道を間違えたりすると教えてくれるんでしょうか?
それともマナーが悪いと叱られるとか?何にせよ大人な精霊さんなのでしょう。
「(叱られないように)気を付けましょうね!」
「うん。(簡単にやられないように)気を付けよう!」
今、私たちの心は一つ!!
魔物だもの 外伝 ~虫の章~ 暑がりのナマケモノ @rigatua
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