第十一章「折り合い」
ワナビへと再び戻ってきて小説を書く日々は、暫く平穏なものであった。
就活、モラトリアムの終わり……という現実に対し吹っ切れたというか、もうとことんやるしかねぇなという心持ちになっていたからだ。
夢なんていうのはそもそも宝くじを買うようなもんだ。
当てにいこうとして当てられるもんでもない。
もちろん、夢を叶えるための努力や行動というのは必要になってくるが、そんなもの本気で夢を叶えたいなら誰もがやってることだ。
だから最後に縋るのは結局運になる。
GA落選作の改稿や、新作の執筆。
周りのワナビフレンズ達とワイワイしながら活動し、僕のワナビライフは緩やかに過ぎていった。
ワナビになってからの3年目、4年目は、ハッキリ言ってあまり記憶に残らないものであった。
3年目の実績としては、前述のGAでの一次通過と、ガガガの一次通過のみ。ガガガは一次時点で1割以下に絞られるので実質二次選考なんて言われることもあるが、結局は二次落ちだ。
その後、大学4年になり本格的に就活が始まるも、僕は相変わらず小説を書き続けていた。電撃に出して当然のように落ち、OVLに3作ぶん投げて全落ちし、集英社にも投げて落ち。
特筆することがないくらい、ただ書いて落ちてを繰り返してるだけだった。
その間大学に行ったり自車校で免許取ったりはしたが、就活からは逃げ続けていた。
そして漸く僕が「就活、するかぁ?」と思い立ったのは大学4年の12月に入ってからだった。12月1日。ガガガの一次選考があり、僕はそこで落ちた。在学中に小説家になることが不可能になった僕は、“就職する”以外の選択肢を失ったのだ。
今までは夢を理由に現実から逃げ続けていたが、ついに追いつかれる時が来たということだ。
人はお金がなければ生きていけない。
お金を得るには働かなければならない。
当然の帰結だ。
小説家になるため物語を書いてきた僕は、社畜になるためエントリーシートを書くようになった。
学生生活のほぼ全てを小説に費やしてきた僕に、まともなガクチカなどない。
そもそもまだ受け付けている会社があるのか……? というレベルだったが、就活は12月中に終わった。
別に望んだ仕事ではないが、適当な会社に営業職で潜り込んだ。
卒論もせっせと終わらせ、後は春休みをのんびりと過ごすだけ。
大学生活も、気付けばあっという間だ。4年間はなんとも短い。
結局夢は叶えられなかったけど、僕にとってこの大学生活は、人生で一番楽しい時間だった。
「社会人になっても小説を書き続けるゾイ!」
当時の僕は、そうささやかな決意を固めた。
“社会人になる”ということがどういうことなのかも知らずに……。
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