第六章「停滞の二年目」


2014年11月。

一次選考から一ヶ月後。OVL文庫の二次選考が発表され、僕はそこで落ちた。

正直、あまり悔しさや悲しさみたいな気持ちは湧いてこなかった。

今の自分の実力ならこんなもんだろ、という客観的な想いがあったから……というのもあるが、当時の僕としては、一次通過の余韻がまだ冷めていなかった。


そうか、一次通過ってのはこんなに気持ちいいもんなのか。

こんなに晴れやかな気持ちで日々を過ごせるのか、と。

二次の発表を待っている間、誇張なしに視界が鮮やかになった気がした。


だから二次で落ちても、まぁ一次は通れたんだしとそんなにダメージはなかった。

要は浮かれていた。自分は一次を通る実力ができたんだなと。あとはステップアップして二次三次と進んでいくだけだなと。


皆さん御存知の通り、現実はそんなに甘くない。

2014年6月時点で、ワナビ2年目に突入した僕だが、結果を先に言ってしまえばこの二年目はOVLの一作以外一次すら通ってない。


改稿も含め、ちょくちょく出してはいたが、結果は全て一次落ち。


レーベルや時期、下読みによっても左右されるし、選考には少なからず運の要素が関わってくる。だというのに、当時の僕は認識が甘かった。


ただ自分が面白いと思うものを書いていればその内受賞出来ると、そこらの中学生より現実が見えていなかった。


どうして一次すら通らないんだ? やっぱり自分が書きたいモノよりも、ウケそうなモノを書くべきなのか? 色々と悩みながらも、僕は相変わらず小説を書いていた。


しかし、2015年1月。

僕は小説を書けなくなった。

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