第270話
雑魚エルフの解読によると、魔石の中心に圧縮した魔力を注ぎ、それを爆発させるように一気に解放。そして爆発しないように魔石の膨張に合わせて拡張するんだそうだ。
そんな説明をぐわーっと。とかぷくーっと。とかって言葉でどうやって分かれってんだよ。不可能すぎだし、なんで理解できるのかも意味わかんなすぎ。
「しっかし……そんな風に膨らましたにしては魔石のままなのは不思議なんだが?」
魔石を膨らませれば内容量が大きくなるのは理解できるけど、小粒なスライム魔石をゴーレム魔石にまででっかく出来るのは質量的に理屈に合わない。鑑定魔法でも普通に魔石って出てるから不備はないっぽいんだよなー。
「その辺はワタクシも知りませんわ」
「なんじゃと? 貴様がこの方法を編み出したのではないのか?」
「その通りですけれど、別に問題がなければよくありませんの?」
「じゃあなんだってこんな技術生み出したの?」
「ただの暇つぶしですわ」
始祖龍によると、こうして龍界――いや、世界の頂点に立つ存在(笑)として君臨し続けていると無性に暇になる瞬間ってのが無数にあったらしく、この技術もその何回目か分からない暇な時間に手慰みとして身につけたらしい。
「そのお陰で、俺のぐーたらライフの役に立ってくれるんだから、誇りに思いなよ」
「何故ワタクシが貴方みたいな虫けら同然の人種ごときの役に立てることを誇りに思わなければいけませんの? 逆に感謝されて当然なのはこちらではございません?」
「まぁ、だとしても俺はお前に大量の借りがあるから絶対に言わないけどね」
これでとりあえず貸しを1使ったって事でいいだろ。惜しい気もするけど、魔石をでっかくする技術はぐーたらライフに大きな恩恵を与えてくれる非常に有益な物。であれば十分だろうとのぐーたら神の判断だ。
さて、とりあえずやり方が分かったんで早速試してみようじゃないか。
えーっと……中心部に圧縮した魔力を入れて――
「魔力量はどのくらいとかあるのか?」
「限界が来れば自然とポンっ! となりますわ」
……今回のは何となく理解できた。多分だけど、最後には強制的に開放するんだろうと認識してどんどん魔力を注いでると、予想通りこっちの意思に反して勝手に魔力が解放された。
「お?」
ボケーっとしてたのもあって、1回目はあっさりと爆散。いつも結界を張ってるんで怪我の心配は全くないけどビックリはしたな。
「なんじゃ。小僧でも失敗する事があるんじゃな」
「まぁ、初めての事だしねー」
幸いな事に、変わりはそこそこ亜空間に入ってるからな。適当に魔石を取り出して――ってこれは元からデカい奴なんで止めとこう。
「ちょっとお待ちなさいな。今の魔石随分と大きかったように見えたのですがいったい何の魔石ですの?」
「え? 知らん」
適当に魔物を討伐して適当に亜空間に放り込んでるからな。いちいち事細かに覚えてる訳ないだろうに。
「感じた魔力の量にあの大きさ……同胞の魔石ではありませんの? ちょっと見せてくださいませんこと?」
「別にいいけど……どれだったかな?」
1回しまっちゃうとどれだか全く区別がつかん。鑑定魔法を使えばわかるかも知んないけど、そこまでする理由もない。
どうせ始祖龍も分かってないだろうから、なんでもいいから適当に出しとけばいいだろ。
「ほい。これでいいか?」
「……先程のと比べて小さいですが、これもワタクシの同胞の物ですわね」
「そうだとしたらどうするの? 復讐でもする?」
なんて言ってみたけど、もし受けるった言われたらどうしよう……。ハッキリ言って、そんな面倒臭い事やりたくないから、そんな流れになったらフェルトに押し付けよう。
もし断るような事になれば、雑魚エルフを住ませてやってる家賃代わりとでも言えば渋々納得するでしょ。
「……面倒臭そうだから止めておきますわ」
「その方が賢明だよ――お。成功した」
話しながら適当に何個かぶっ壊しながら練習してようやく、コツがつかめた1つ目だけど、始祖龍が作ったモンより1——いや、2回りくらいくらい小さいな。
「もう成功させたんですの⁉ 早すぎませんこと!」
「お前より小さいのがムカつく」
「せっかく褒めて差し上げたのに文句を言われるのかが理解できませんわ」
「ふむ……確かにコツがいるが、覚えてしまえばどうという事はないが、正直何の役にも立たんのぉ」
「フェルトは分かってないねぇ。これは魔道具を動かすのに必要不可欠な魔石を大きく出来るんだよ? これほどぐーたらライフに有益な技術はそう多くないね!」
魔石がデカくなるだけで魔道具の稼働時間が増え、それに伴って魔力の充填する回数も減る。なので数十数百と保管しておけば数年規模で魔石関係での労働から解放されるという事。これを革新的と言わず何というのか俺にはさっぱり分からんね。
「魔道具のぉ……正直、ワシはあまり好きではないな」
「そうなの? かなり便利だけど何が嫌なのさ」
「逆に、小僧がなぜそこまで褒めちぎるのか理解に苦しむわい。ワシも長年生きて魔道具なるものにある程度触れてきているが、魔法で事足りる物ばかりではないか」
「始祖様のおっしゃるとおりだ。我々エルフからすれば、あのような児戯にも等しいガラクタに大金を投じる事のなんと愚かか……」
なるほど確かに。人間からすれば便利な物でも、魔法が使えて当たり前のエルフからすればおもちゃにも等しく見えて当たり前か。
「まぁ、エルフや始祖龍には不要でも、俺のぐーたらライフには必要不可欠なんでね」
こんな会話をしながらも、クズ魔石を淡々とサイズアップしては亜空間に放り込む。1つ作ってはーぐーたらのためー。2つ作ってはーぐーたらのためー。1歩も動く事無くそれに貢献できるってのは、ある意味最高の信仰になるんじゃないか?
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