第242話
「さて……畑仕事でもするかね」
いつもなら村の広場に行って氷柱を作ってるところだけど、今日からは魔力を補充するだけで済んでしまうという非常に簡単なお仕事になりました。
まぁ、それでも毎日魔力を補充しないとなんないんだけど、いくら大量の魔力があってその操作に慣れてるって言ってもメンドイもんはメンドイ! だから作業が1つ減っただけでもぐーたら神からよくやった。とお褒めの言葉がもらえるのだよ。
後は魔力の補充を数日——いや、数か月はしなくて平気なレベルの魔石が作れたら最高なんだけど、大容量にすればするほど魔石がデカくなるって全く無視できないデメリットがあるんだよなー。
これが何とか出来れば、大容量コンパクトな魔石になって、夢のぐーたらライフがかなり大きく前進する事間違いないから何かいい方法がないもんかね。
「おいーっす」
「おぉ! リック様でねぇですか。あの冷房? でしただか。あらぁどえらいシロモンでねぇですか! おかげで朝までぐっすりでさぁ」
「それは良かった」
うんうん。好評で何よりだ。しかし、ぐっすり寝るくらいなら子作りをしてほしいんだけどね。そっちの方が未来のぐーたらライフにとって有益になるが……さすがに5歳のガキに昨日嫁とヤりましてん。とか言えないか。聞かされても困るし。
「んだ。リック様さ来たら聞いといてくれっておっかぁに頼まれたんですだが、あれが1つ1つの家さ付けてもらえるって話を聞いたらしいだが、本当ですだか?」
「……」
ちぃ……っ。どうやら夢の中に現れたぐーたら神は本物だったらしい。どうせならそのご尊顔をもっとしっかり覚えておくんだったな。偽モンだと決めつけてロクに耳も目も使わんかったのが裏目に出たな。
しかし……やはりあの商人見習いはちゃんとバラしやがったな。おかげで結構な数作らにゃならなくなっちまった。マジで面倒くさいから知らぬ存ぜぬでも突き通してみるか?
でもなー。それであの見習いが嘘つき呼ばわりでもされてこの村からいなくなられるのも困るんだよなー。せっかく大金出して買ったんだし。ここは仕方なく白状しますか。
「まぁ、ちょっと時間はかかるけど本当だよ」
「おぉ! 本当でしただか。そいつぁ本当にありがてぇですだよ」
「なに。あれじゃあ涼しさが足りないって言いたいの?」
結構な大きさの魔道具だから、いくら灼熱の熱期と言っても相当に温度を下げてくれてる自信作。それに不満を持たれるのはちょっと心外だな。
「いえいえそっだら事ねぇですだが、おらの家は広場に近いんで大丈夫ですだが、広場から遠い奴らは多少暑い言うてたですだよ」
まぁ、それは仕方ない。1番効率よく村全体を冷やすためには、やっぱ中心部に置く必要があって、そこから離れれば離れるほどに冷気が灼熱に負けちゃうからね。
「じゃあ、付けるとなったらそっちの村人の家からにした方がよさそうだな」
それであれば不満を言うやつも少ないだろうし、言って来たとしても「じゃあお前さんの所と家を変えるか?」なんて提案すれば黙るだろ。
「ですだなぁ。おらもその方がええと思いますだよ」
「どこからいいかな?」
村の外側――と言っても1軒だけじゃないからな。一遍に設置しちゃえば何の問題もないんだろうけど、今は2・3枚あるだけ。一遍に設置するには足りないわな。
「悩みどころですだな」
「まったくだ。あちらを立てればこちらが立たず……悩ましい限りだ」
「だったら一遍につけちまうまで待たせたらええですだよ」
「……よし。そうしよう」
まさかあっちからこっちが欲しい言葉を出してくれるとは思わなかったな。
とはいえ言質を取った以上はそれに従おう。いやー残念だなー。せっかく頑張って冷房を作ろうと思ってたんだけど、ゆっくりでいいだなんて言われたらそれに甘えちゃおうかね。
「なんか嬉しそうじゃねぇですだが?」
「そんな事ないよ? それじゃあ俺は次の畑に行くから」
「ありがとうごぜぇましただ」
さて、これで期限はあってないようなものになった訳で、心置きなくマイペースで冷房が作れるのは本当にありがたい。
そんなウキウキ気分で村中の畑を飛び回って、最後に広場にある魔道具の所に寄ってみると、いつも通り――よりはやっぱ数が多いお姉さん方が集まって井戸端会議っていうのかね? とりあえずなんか会話をしてるところに降り立つ。
「よっすよっす。なんか今日人多くない?」
「あたりまえですよぉ。ここに居れば涼しく居られるんですから」
「リック様のおかげで昨晩は快適な睡眠を送れまして、おかげで寝過ごしそうになってしまいましたよ」
「あーなるほどね。とはいえ炎天下にいるんだから、ちゃんと塩分と水分の補給は忘れないでね」
さて、それじゃあさっさと魔力を補充して昼までぐーたら――はちょいと今日1日は難しいか。昼飯も夕飯も作らにゃいかんからな。忙しすぎて目が回るかもしれないくらいだよ。
「さて……と」
「ちょっと待て!」
これから土板に乗って魔力の補充をしようかなーといったところで声をかけられたんで仕方なくそっちに目を向けると、当たり前のようにフルフェイスの兜に全身金属鎧のハーフエルフがいた。
「よくもまぁこんな炎天下でそんな格好してられるね。死ぬよ?」
「黙れ。貴様がぬいぐるみをさっさと制作すればこんな場所から立ち去れるのだからさっさと作ればいいだろう」
「まぁ、それに関してはまだ無理だねー。何せ俺って忙しいからさ。そんな事に構ってらんないの。じゃ、そういう事でー」
おおう……自分で忙しいとか言うだけで吐き気がするぜ。
これがぐーたらによる忙しさであればなんともないんだけどね。
さて、そろそろお昼ご飯を作る準備もしなくちゃなんないし、お暇させてもらいますわー。
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